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①空の果てにて

本作「星よきいてくれ~聖夜にベルが鳴るころに~」は、2018年クリスマスイベント企画にて実現した、以下3作品によるクロスオーバー作品です。



※注意※

本作品は、本編『星よ きいてくれ』の重大なネタバレを含みます。

本編未読、または、最新話を未読の読者様は、ご注意してください。


また、(なぜか)『ダンガンロンパ』シリーズのネタバレも作中に含みます。

(※最新作『V3』のネタバレはありません)






✡登場作品✡



『星よ きいてくれ(作:陸一 じゅん)』

 登場キャラクター:

 ・ジジ……子供の姿をした『魔人(魔法で作られた人工生命体)』。皮肉屋。

 ・アルヴィン・アトラス……壮絶な冒険を終えたばかりのエルフの皇子。

 ・ミケ……アルヴィンの唯一無二の従者。『語り部』と呼ばれる役職の『魔人』。

 ・サリヴァン……ジジの相棒の魔法使い。今回は名前だけ。

 

 ・デュオニュソス……三邪神同盟リーダー。今回の戦犯のひとり。飲兵衛裸族。

 ・ロキ……三邪神同盟の核弾頭。今回の戦犯のひとり。炎上好きなパリピ。

 ・ニャルラトホテプ……三邪神同盟の事後処理係。今回の戦h(略)。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886015668




『Eudaemonics ─四千年の泡沫で君ヲ想フ─(作:社 登玄)』


 登場キャラクター

秋月燈(あきづきともり)……高校一年生。記憶喪失で一般人のはずが……。

式神(しきがみ)……燈の従者。《真名》不明。黒狐、緋色の鎧武者。

龍神(りゅうじん)……冥界の王、最強。燈を愛慕(あいぼ)している。※本人に対して素っ気ない。

浅間龍我(あさまりゅうが)……警視庁失踪特務対策室室長。《物怪》の専門対応部署。みなから「武神」と呼ばれている。

・|Artifact knightsアーティファクト・ナイツ試作九号機、通称ノイン……全身義体化している青年。


・《山の神》……別名:山王、白い猿の姿をしている。

摩利支天まりしてん……猪の姿をしている。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887236172



『デモニック・ジョン -LA魔人犯罪捜査録-(作:HerBert)』

 登場キャラクター:

 ・ジョン……FBI超常犯罪捜査課の捜査官。バアルの魔人。

 ・アネット……ジョンの「隣人」で精神体。絶世の美女。

 ・マルコム……秘密組織エクスシアの所長。知識の蒐集家。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918541


 それぞれの作品を読んでいると、より楽しめる内容となっております。



 また、本クロスオーバーはそれぞれの作品の作家が各々でストーリーを執筆しています。

 同時並行で楽しめる様になっておりますので、各作品も本作と合わせてお楽しみ下さい。


 ・社 登玄 さんのクリスマス作品

 URL


 ・ヘルベルトさんのクリスマス作品

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886570454




 根深い疲労感に、沈んでいたはずだった。

 長い長い戦いの時間が終わり、誰もが疲れきっていた。


 だって神々の試練は、最初の一つが、ようやく終わったところなのだから。


『選ばれしもの』として、人類救済の使徒になっても、身体はただの人間だ。

 あと十一も残っている試練を思えば、この夜だけでも、すべてを忘れて眠らなければ。


 船室の丸窓から、空が見える。

 下に、濃紺の地に砂粒のような星屑たち。

 上に、明けの水色をした澄み切った空。

 その間にのびる、チョークで引いたような白い線。

雲海うんかい】だ。

海層かいそう】と【海層】のあいだをへだてる境界に、今、ボクらはいるのである。


 この世界は丸くない。

 むかしむかし、神々の大きな戦で、二十もの【海層】に別たれた。

 そんなこの世界を、近代の学者たちは【多重海層世界たじゅうかいそうせかい】と名付けた。

 この世界では、今、人類を滅ぼすかどうかを決める【最後の審判】が行われている。

 二十二人の【選ばれしもの】が、神々が与える12の試練を乗り越え、天上にある【神の庭】を目指すのだ。


 最下層で行われた第一の試練を終え、一行は、下から三番目、第18海層にある【魔法使いの国】を目指していた。


 船内は、灯りが落とされて沈黙し、駆動音だけが響いている。

 起きているのは、ボクと……操縦席にいる一人だけだろう。


 若き航海士に操られ、飛鯨船は――――海層の境を越えられる唯一の乗り物は――――雲海をさらに抜け、真空の世界へと、足を踏み入れていた。



 ジリリリリリリリリリリン!!!!!


 ジリリリリリリリリリリリリリリリリン!!!


 けたたましい音が響く。

 いつしか目を閉じていた《《ボク》》も、いつも通りの俊敏さで、まどろみから飛び起きた。

 耳の奥には、まだベルの音が残響として残っている。

 ボクは、目蓋越しにもわかる、周囲の明るさに驚いた。

 手で額にヒサシを作り、慣らすように瞼を開く。


 真っ白な――――上も下も、影も無い―――――ただの真っ白な空間が、ボクらを取り囲み、無音を保っていた。


 そう、ボク『ら』だ。


 右手に、ぼうっと青い炎が、ちょうど心臓の位置に浮かんでいる。

 羽織っているのは、少し煤けた着古しの若者向けのロングコート。

 ボクは、そのコートには内ポケットが充実していて、いろんな小物が収納できることを知っている。ボクの相棒の魔法使いが、『彼』に貸したコートだ。

『彼』は、裾から出ている裸足の足でウロウロと動き回り、ボクに向かって何かを訴えかけるように手を振っていた。


「落ち着きなよ、皇子サマ」

(でも、だって)というように、こぶしが握ったり開いたりする。


『彼』の名前は、アルヴィン・アトラス。

 歴史ある小国の皇子さまで、ごらんの通り、身体からだを失って、魂が剥き出しの状態で『生きている』。

 一度死んで、文字通り冥界から這い上がってきた【選ばれしもの】の一人。

 ボクが【愚者】の暗示を持つものなら、アルヴィンは【星】の暗示を持つものだ。


 ―――——って、なんでボク、誰かに語り掛けるように『考え』てるんだ?



「それは貴様らのことを【ユーザー】が理解するためだ」

 声が言った。


 革靴の足音が近づいてくる。

 白い天幕(としか言いようがない)をめくり、黒衣の男があらわれた。


「――――【ユーザー】は、貴様らのことをまるで知らない。

 ゆえに、ジジ。貴様には、この【夢】の語り部の一人となってもらう。アルヴィン・アトラス。貴様には同情票が集まっている。今回はクリスマス休暇だ。一夜の奇跡を受け取るがいい。なに、キリスト教徒でないということは問題視されない場所だ。無礼講で楽しんできたまえ」


 カツリ。

 かかとを揃えて立ち止まると、男はボクらを睥睨へいげいする。

 闇のように黒いジャケット。黒いネクタイ。黒いマフラー。黒いスラックス。黒い皮手袋。シャツまで濃いグレーだ。


「【ユーザー】は、貴様の言葉によって紡がれた物語を閲覧することとなる。

 これより貴様らのことは、第四の壁の向こうで、あまたの【ユーザー】の目が見守ることになるだろう」


 褐色の肌、黒い瞳、丁寧に撫でつけられた髪。彫りの深い顔立ちは、鼻も顎もつんと尖り、眼球の白さがよく目立った。


「【ユーザー】とは何か? そう聞きたげだな。魔人ジジ。その質問は不要だ。【ユーザー】は【ユーザー】でしかなく、第四の壁の向こう側にいるもの。貴様らの世界は【ユーザー】によって守られている。

 今回は、このような問答は必要ない。解くべき謎はあっても、大いなる思惑は存在しても、このイベントは気まぐれから生まれたイベントであって、大いなる存在による罠などではないからだ。

 すべての答えはただ一つ……。()()()()()()()()()()()()だ」


 気障ったらしい仕草で、男は形のいい眉尻を上げた。


「回答は以上とする。

 貴様らの役目は、笑うこと。存分に楽しめ。そして笑え。

 シリアスをコミカルに。今だけは運命なんてものは捨て置けばいい。

【あちら】はクリスマス。聖なる奇跡の夜。忘却を享受し、【隣人】を愛せよ」


 はじめて、男が表情を変えた。

 ニンマリと。整いすぎた白い歯列が、三日月のように剥き出しになる。



「―――――存分に《奇跡》とやらを楽しむがいい」



 そして。


 ―――—そして、ボクらは。

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