羞恥心にさよなら
そして入学式。
初めて袖を通す制服の堅苦しさに眉間に皺を寄せ……ている訳ではなく。
「なんだよ、これ」
体育館に入ってから、ざっと3体の呪霊を見つけていた。天井に張り付いている1つ目の蝙蝠、壇上でドラミングしているゴリラ。そして極め付けは、来賓席に座っている着物姿の呪霊。
人型は……確か恨みや呪いの質が濃くて、重く、強い。
まさか初日から、こんな事になるのか?
美海を探し……って立ちながら寝てる!!
器用だなそうゆう所だけ!!
ポケットに一応武器である札は持ってるけど。
投げられる範囲に居るのは、人型だ。詠唱無しの攻撃で効くのかな……。
「起立、礼!!」
みんなが頭を下げた瞬間を狙って、札を人型に向けて投擲する。
よし、当たるっ!!これで、1体目!!
目線を外した僕の背筋が震える。
視線を戻す前に、背面に防御を展開する僕の後ろには刀を振り被った奴が居て。
「『光器・帳』!!」
瞬時に詠唱防御に切り替えて正解だった。
身体は傷付かなかったが、衝撃で辺りの生徒が倒れてしまう。
その、影響か僕を避けるようにして円が出来てしまった。
……え。この、流れ。
ていうか、周りの目線……!!僕を、怪しい人物と断定して見てませんか!?
だが、奴にはそんな事は関係ない。
刀を構えて走り出してくる。くそ!!もっと考えて行動すれば良かったよ!!
「……あの人、少し光ってない?」
「てか何だろう。あそこに、うっすらと人が見えるような」
そんな声が聞こえた。
まずいぞ。耐性がある人以外が呪霊を見たら、精神が侵されておかしくなってしまう!!
仕方ない、ってかやらないと!!
何で見えるのかは、わからないけど!!
「『光器・天界個独』」
体育館全体に呪霊から守る結界を張った。これで、みんなは、大丈夫……あれ。僕は?
この呪禁は呪霊と一般人を引き剥がすもので。
1人は残らなければいけないのだ。その空間に。
それはまぁ僕として。
でも、視線は消えない。そりゃあそうだ。今見えているのは札を構える僕だけ。
「臥竜さん……こんな状況で戦うなんて、聞いてないですよ……」
呟きは誰の耳にも届かない。
だが、次の瞬間。僕はそんな羞恥心は捨てる。
残りの2体が忍び寄っていたのだ。
双葉の、後ろに。