想い思って恋い焦がれ
彼女、とは天槻双葉という僕の幼なじみだ。
そして片想いの相手でもある。
まぁ身分違いとか何とか御家の人に言われてからは隠し通しているつもりなのだけれど。
天槻家に仕えているのが、日生家。
日生家は代々この天槻家を護るのが使命というか、その為だけの存在だ。
「……なぁ美海」
「なぁに?お兄ちゃん」
一緒に引き取られた妹の天槻美海と、のんびりしているとふと思い出す。
「お前、相変わらずその、天才なの?」
「うーん。うちは別に……ただお兄ちゃんに出来ないことがぁ……出来るだけぇ」
出たな……天才理論。
美海も同じ日生家で引き取られたのだが、才能があり過ぎて天槻家になった。それからも、仲良くはしている。唯一の家族だからな。
「あっ!!マコちゃんサボってるの!?」
「いやっ!?ふふふふ双葉っ!!サボってないよっ……」
「じゃあ、なんで目を合わせないのかなぁ?」
可愛いからだよ!!すっげぇ近いからだよ!!
長い黒髪が綺麗な双葉は、これぞ大和撫子という可憐さを全て詰め込んだような見た目。
しかも、一目惚れしてから10年。
もう拗らせて、まともに目を見ることすら出来なくなって来た。
好きだから。
僕は、この子の為には命を懸けられる。
「大丈夫だよぉ。お兄ちゃんは、出来る子だからぁ」
「知ってる。マコちゃん、努力家だもんね。
何でそんなに頑張るんだろうねー」
お前が好きだからだよ!!
血反吐を吐いて、休日なんか気にせずに修行してるのは全部お前を護る為だよ!!
でもそんなこと言えないっ!!
「お前が好きだから頑張ってるのさ」
なんて口が裂けても言えねぇよ!!キャラじゃないし……恥ずかしいし!!
「マコちゃん?」
「な、何?」
「……うん!!元気そうだねっ!!」
惚れてまうやろっ!!いや、惚れてるけど!!
視線を逸らすと美海と目が合った。
にやにやされた。
当の本人は気付かないんだろうな。
まぁ、それでいい。
僕は死ぬまで言わないつもりだし。
それで、いいんだ。