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黒の集団2(戦闘回)

 黒の集団はその後も追跡を続け、ムギ達も戦う場所を捜し求めて逃げ続けた結果、街の一部を覆う壁より1kmほど離れた場所にまでムギ達はたどり着いた。


 ムギはこういう組織なら多少なりとも己の戦闘力を把握しているはずなので、


 ――ほう? 随分己の防御力に自信があるようじゃないか。久々にこいつを人に向けて使うことになるとはな……その無鉄砲さが仇になると教えてやる……。


 などと考えながらも戦闘機会を伺う。

 自身の持つ武器の中には絶対の信頼をおけるストッピングパワーを誇るものがあり、それを使おうと試みていた。


 ただその武器はあまりにも強力すぎるため、ムギは地図や地形情報を見ながらどの方向に攻撃を繰り出せば「二次被害」が発生しないかを割り出す。


 そこでPATOLISのシステムを応用して最近作ってみた射撃管制システムを用いてみたところ、一定の方角には山すらない平野が広がっており、生体反応もないことがわかった。


 その武器は「あまりにも威力が高過ぎた」ので二次被害を考慮しなければならないものであったが、射撃管制システムは「低く構えたところからやや上に向けて狙えば問題なし」という結果を示し、


 ムギは背中に背負っていた謎の武器を取り出す。

 その武器はハーフパイプ状のバレルを持つ投射機とも言える何かだった。


 SF映画に出てくるような近未来的なイカした武器でもなく、ファンタジー世界にも似つかわしくない無骨な見た目。


 金属で出来たランチャーユニットのバレルの上には、引き伸ばしたパーティハットのような形状の砲弾が装填されている。


 左手に両手片手兼用の剣を持った状態のムギは右手にランチャーユニットを保持したまま、こちら側に襲いかかってくる4名に対応した。


 ムギに襲い掛かった全身黒づくめの者達は、ツーマセンルを組みながらまず2人のグループが真直ぐ突撃してきた。


 後の2名はムギの次の行動次第で対応しようと左右から先ほどから何度も繰り返している挟撃を図る。


 しかし相手より素早さで上回っていたムギは先陣を切った敵の攻撃を回避すると、問題ないとされた方角へ向けてランチャーを構えられるよう一瞬のうちに移動し、そして引き金を引いた。


 次の瞬間、鋭くまばゆい青い閃光がほとばしり、光の後に轟音が唸る。

 それはまるで極限にまで真直ぐに雷が迸ったようであり、


 普通の人間なら眩しさに目を晦ますほどの光量であった。


 雷が走り抜けた後にそこに現れたのは、ボトボトと地面に血を垂らしながら片腕を光の渦に飲み込まれた黒づくめの者の姿である。


 それがあまりにも一瞬の出来事であったのですぐさま腕を失ったことに気づかなかったが、

 片腕を失ったことで身体バランスが崩れたことにより、ムギへ追撃を行おうとして足がもつれてしまう。


 そして後から襲ってきた強烈な痛みによって失った腕の部分をもう片方の腕で押さえ込み、地面に膝をついた。


 ムギに襲い掛かって先陣を切ったもう1名は腕を失った者へと駆け寄り、ムギの動き次第で行動を決めようとしていた2名はその場で硬直する。


 ――そうか……こいつらも人か。人型の生物兵器とかではないのか……。


 あまりにも人間心理の働いた行動を見たムギは多少の罪悪感を覚えるものの、


 先に攻撃してきたのはあちら側であること、修羅と言われる辺境地域に情けは無用との事から、ムギは当然のごとくダメージを負った者の方へと駆けていく。


 2発目の砲弾をウエストバッグから取り出して装填。

 一人ずつ確実に戦力を削っていくことにしたのだった。


 ――撃てるのは最大威力だと後5発。だが砲弾が後2発分しかない……仮に弾があってもさっき魔力を消費したから4発程度と考えた方がいいか……でも2本あるうち1本の魔導カートリッジの容量はまだ3分の2ある。1本はフルだ。とりあえず後2発出し惜しみせず撃っておくッ!……。



 ムギがランチャーを構えながら突撃すると、腕を抑えていた黒づくめの者はもう片方の影に溶け込むように入り込んで消え、もう片方の者も逃走する。


 そしてその逃走を援護しようともう一組の敵集団がムギに襲い掛かってきたのだった。


 一方のエル。

 8人のうちもう片方の集団に取り囲まれたエルであったが、ムギに対しての攻撃方法とは異なり、エルを取り囲む集団は4人同時に攻撃を繰り出してきていた。


 エルはその様子から最初に自分を攻撃した4人組がこちらを倒そうとしていると理解し、あえてその場に留まったまま身構える。


 そして4人が円を描く形で襲いかかってくると、エルは自らの体を脚を軸に回転させながら連劇を繰り出してコマのように踊る。


 その姿は速すぎて一瞬完全に人の形として視認できなくなるほど高速の動きであり、自身の体内に魔力を流し込んで強化しながら繰り出す攻撃は体内から漏れ出す魔力によって青く美しい光を纏っていた。


 その力すさまじく、ムギがまるで近接武器でダメージが与えられない者達が攻撃を受けた衝撃で2mほど吹き飛ばされるほどであった。


 吹き飛ばされたといっても地面を転げまわるようなことはなく、

 攻撃を受けた反動で後ろに下がらざるを得なかったという状況で両足をついて耐えていたが、


 明らかに並の戦闘力ではない4人から同時に攻撃を受けてもまるで傷つくことのない美しき少女の姿がそこにあるのだった。


 彼女はムギが買い与えた短剣を所有していたが、近接戦闘は基本徒手空拳を好んでいた。


 その威力は折り紙つきで、弾き飛ばされた後の彼らの身に着けた全身の防具は攻撃が命中した部分が見事に凹んでいる。


 4人共それぞれ全身が各所がボコボコに凹んだ状態となっていた。


 黒づくめの集団は歴然とした実力の差を理解したのか身構えたまま静止して動かないが、エルの方はだらん力を抜いてとノーガードの体制となり、次の攻撃を待ち構えていた。


 その自身に満ちた顔は間違いなく敵に恐怖という感情を呼び起こさせていた。


 ムギの方は逃げる1名を援護しようとする2名からの攻撃に苦戦。

 ただしダメージは受けていない。


 素早い身のこなしと連続攻撃によってムギの近接戦闘時の得意技は全て封殺されていた。

 一方で彼らも有効なダメージは与えられていない。


 ムギの衣服がもつ防御力は相手の攻撃力を上回っており、お互いに有効なダメージを与えられずに膠着状態となっていた。


 ムギの身に着ける衣服は親友ロランがデザインし、1つ1つ手作りした魔導具。


 全ての物理攻撃を完全に防御するわけではないものの、その毛皮のような意匠が散見されるマタギともアイヌ民族とも見えるような格好は、メディアンと呼ばれるこの世界では高い防御力を誇っている。


 最新鋭の魔導技術によって生み出されたこの衣服は糸の単位で魔導具としての力を発揮しており、自己修復機能すらあった。


 それはムギの資産を活用して湯水のように金をかけて選りすぐりの材料を集め、コストがかかる高度な加工を駆使した、ランニングコスト自体は低いメンテナンスフリーなものを目指した超高級防具であり、


 別名「アークの移民」とも呼ばれるムギ・リーンフィールドを象徴するアイテムであった。


 ムギは敵の攻撃力がいささか低過ぎることから、恐らく彼らは奇襲を専門とし、相手の攻撃力を削いで集団で少数を殺しきるタイプの者達であると判断する。


 つまり防御力が高すぎるムギとはむしろ相性が最悪で、本来なら攻撃が通らないと判断した時点で引くのが妥当な判断であると言えた。


 よって既に奇襲は完全に失敗しているが撤退しないのは撤退できない理由があると思われた。


――こちらの弱点は継戦能力が低いこと……俺自体はガス欠したらそこらの一般人より弱い……でもそれはこの防具とも言える衣服を貫いてダメージを与えられる攻撃力があって初めて成立することで、防具自体は周囲の大気に混じる魔力を常に吸収して繊維内に蓄えた魔力でもって防御力を発揮するから、せめて周囲に漂う魔力を封じるか、こちらの魔力を衣服より吸い取るか何かしないといけないのに……してこない…こちらが負ける要素はもうないハズだ……。

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