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ザ・ウーの輝き(戦闘回)

 ブライアン達と合流したムギは現時点では最大の黒幕の1つと思われるコンラッド・ゾルゲンの邸宅へと向かう。


『これが家? こういうのは城か要塞っていうんじゃないのか』


『大きい……』


 ディエス・トゥルーマンと商談を行っていた場所から約90分ほどで到着したその場所は、背の低いエクセルが車内から思わず見上げてしまうほどの大きさと広さを誇る巨大な壁に囲まれたゾルゲンの邸宅であった。


 一行の目の前に現れたのはもはや「家」とはいえぬ何か。

 ブライアンは豪邸と言っていたが、どう見ても城か要塞といったような何かである。


 ゾルゲンの要塞の近くには公安の別働隊の一部である私服警官が4名待機しており、一行はブライアンとは別の国家安全保障調査室の職員1名と共に門を通して邸宅に入っていった。


『すでにアポは取っております。あくまで表向きは情報提供という形で訪ねたことになってますが……何があるかわかりませんのでお気をつけ下さい』


 ――気をつけるって何を?……。


 ムギはブライアン達が明らかに大した武装を所有していないので心配になる。

 要塞内部に入るとゾルゲンの女中と思われる者に案内され、一行は来賓用の館の中へと入った。


『それでは、当主様がいらっしゃるまでしばしお待ちくださいませ。』


 応接間が全面ガラス張りというとても景観に優れた来賓用の館に案内された一行はしばし待機する事となったが、ムギはすでに不安で一杯だった。


 なぜか第六感が危険を示すのである。

 カヤも殺気か何かを察知しているようで一見すると落ち着いているがいつでも攻撃が繰り出せるような姿勢を保っていた。


 エルはニッコニッコしてて、とても楽しそうな様子なので間違いなく何かを感知している。

 ムギの言葉で表現するなら「オラわくわくすっぞ!」状態であった。


 いてもたってもいられなくなったムギが周囲の状況を確認しようと応接間のソファーから立ち上がった瞬間、それは起こった。


 周囲に光が満ち、そして大量の武装集団に囲まれる。

 座標移動であった。


『言わんこっちゃない!』


 ムギはザ・ウーを抜刀しようとしたが武器を突きつけられて身動きできなくなる。


『これはこれは……随分なおもてなしをなさるようだ……コンラッド卿は』


 冷静に出されたコーヒーを飲みながら問いかけるブライアンに対し、武装集団は顔をマスクなどで覆っていたが、明らかにニヤケた表情をしているような雰囲気でもって語りかけてくる。


『何を言っている? 我々もコンラッド卿を確保しに来たんだよ。おたくらにその邪魔はさせん』


 ――そうきたか……自作自演なのか俺達の行動を見た真の黒幕が動き出したか……どちらにせよこの状況はよろしくない……。


 ムギは目だけで周囲の様子を探る。

 館内に18名、外にそれ以上。

 完全な奇襲攻撃であった。


 よく見ると巨大な壁からなにやら青い光が照射され、要塞全体を囲い込んでいる。

 魔力障壁だとすると中に入ってこれないようにしているのだろうと思われた。


 しかしムギはすぐさま彼らの能力が低いことを見抜く。

 スタンダール軍と比較すると武器の構えがまるでバラバラで、室内の18人の視線はドゥームの特殊部隊と比較すると目線が定まっていない。


 そもそも攻撃してこないのが何よりも素人臭い。


『動きが素人じゃねえか……』


 ムギは隙を突いて一瞬で間合いを詰めると、相手の胸部めがけて手をピタッと合わせる。


『ハッ! 無駄な事をッ――――――――』


 その言葉を最後にムギが手を当てた者はガラスを突き破って40m以上吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


『気道……柔…』


 それはドゥームの特殊部隊には使うことが出来なかった攻撃。

 ムギにその技を教えた者なら平然と行使できたであろう気道による攻撃方法。


 魔力を手から放出し、敵のアーマーや鎧、そして骨や内臓などを内側から破壊しつつ、吹き飛ばす技であった。


 ムギの場合、まだ未熟で魔力を注ぎ込むのに時間がかかるため、動き回るドゥームの特殊部隊には使えなかった近接戦闘方法の1つ。


 かくして攻撃の火蓋は切られ、

 ムギの動きに合わせてエルは素早い動きでもって10人ほどを一気に外にまで吹き飛ばし、

 カヤは鞘に収めたままの剣を手にもってムギと同じ要領で敵にダメージを与えながら吹き飛ばした。


 敵の集団は応戦するとばかりに射撃攻撃を繰り出してくる。


 ムギは魔力障壁を展開。

 ブライアン達はソファーを倒して盾にしながら身を潜めつつ、射撃武器のような魔導具でなにやらビームのようなものを射出していた。


『ブライアン、アンタまともに戦えるのか?』


『いえ、正直戦闘は苦手です……』


 ブライアンは想定外とばかりに緊張した様子で身を隠しながら当たらない攻撃を繰り出していた。

 攻撃に長大な時間を必要とするエクセルも戦力になることが出来ず、その近くで小さく蹲っている。


『恐らくあの壁の所で展開しておるのはただの魔力障壁だけでなく結界であるぞ。ジャミングもされていてこちらに座標移動するのは不可能であるな! 外にいる者は中に待機させておくべきであったのう』


『エル、索敵だ。ジャミングされててもどこに誰がいるかぐらい大体わかるんだろ?』


 ムギはエルに命じて周囲の様子を索敵させる。

 エルが床に手を当てると薄い膜のような光が徐々に広がっていき、地面や空中などに広がって駆け巡っていく。


『邸宅内に老人の様子は無いのう。すでに逃げられた後のようであるな』


『はああああ……どこで情報が漏れたんだ?』


 ムギは予測していた最悪のケースとなったことで大きくため息を吐く。

 政界や財界にパイプを持つゾルゲンに国外逃亡された場合、その発見は容易ではない。


 だからこそ早い段階でその身柄を拘束しておく必要性があった。


『ムギさん落ち着いて。ディエス・トゥルーマンから証拠を見つけられれば国際指名手配が出来ます。警察組織などを敵に回して逃げるのは得策ではない。コンラッド卿はそういう男ではありません。今だって別組織の衝撃に見せかけてかく乱を狙っている。彼の術中にはまってはだめです!』


『そうは言ってもどうするんだこれ……』


『まずは敵を片付ける他ない。なに、ただのゴロ付きだ…この間とは違う。私達3人で1人残らず戦闘不能にするぞ!』


 そう叫んだカヤはシュバッと凄まじい速度で飛び出して行った。


『エクセル、お前も魔力障壁ぐらい張れるな? 私服警官達もまるで役に立たない。お前がこの場を自分ごと守れ、ほれっ!』


 ムギは使い捨ての魔導カートリッジを数個ほどエクセルに向かって投げる。

 エクセルは両手でパシパシとそれをキャッチし、それを見届けたムギもすぐさま突撃した。


 すでにエルは飛び出した後であった。


 ――正面だけで40人ぐらいいるな。全員なんらかの射撃武器を使ってるが運動エネルギー自体は対した事がない……最近流行の命中した際に何らかの効果を発揮する魔導弾丸タイプだろうな……。


 ムギも突撃し、まずは正面の一番近くに固まっている4人めがけて突撃する。

 ザ・ウーを抜刀し、左手に構えた。


『遠距離武器はどうしたぁ!? アークの移民さんよぉ!』


 ――なんだこいつら……俺の事知ってんのか……。


 ムギがガストラフェテスを失っている事を認知していた敵は遠距離武器がムギに対してまるで役に立たないのを理解するとそれぞれ己の武器を抜刀して接近してきた。


 一人だけけん制のために射撃を続け、残り三人がムギへと三方向から突撃してくる。


 ムギは冷静に息を吸い込むと、左手でザ・ウーを思いっきり地面にやや斜めになる形で突き刺した。


『血迷ったかあ!?』


 その様子を見た3名はかまうもんかと突撃を継続。

 そのままムギとの距離を詰めた。


 ムギはタイミングを見計らうと、両手でザ・ウーを握りこむ。


 そして相手が近づくのに合わせて一気に切り上げ、ザ・ウーは運動エネルギーを一時的に溜め込んだことで振り上げの速度が増加し、相手の右腕を見事に切断した。


 これこそ、ザ・ウーの本来の使い方である。

 ドゥームの特殊部隊によって封じられていた、もう1つのムギの近接攻撃戦法であった。


 黒剣The・wooザ・ウー

 その剣は鞘に収まっている姿では単なる片手専用剣にしか見えないが、

 いざ鞘より剣を引き抜くと全体の4割が柄となっている片手・両手兼用の剣。


 全長はやや長いものの取りまわしを考慮して長さは両手剣よりはかなり控えめとなっている。


 全体は黒く墨や鉛のような鈍い黒色で、魔法の力で一体形成されたものであり、柄なども含めてすべて1つの金属を魔法の力で形成したものとなっている。


 その刃は少しだけ反りがあり全体形状は「~」というように見えなくも無い。


 切っ先の形状は日本刀に類似する形であり、日本刀と同じく刃の外側に少しだけ反る形状。

 柄の後端が刃の内側に反っているのはこういった切り上げの際にすっぽ抜けないようにするためである。


 その武器は「伝説の武器」ではなかったが、「伝承として伝えられる武器」であった。

 カヤが「剣に不慣れな初心者のためにこれでもかと試行錯誤して作ったもの」として認識したそれは、


 とある都市国家の王子が婚姻が決まっていた別の都市国家の姫を拉致された際、自らが軍を率いて取り返しにいくためにその国一番の魔導武器職人にあつらえさせたもの。


 元々国でも一位二位を争う槍使いであった王子は剣術を不得意としていた。

 そこでいざという時には槍のように使うことができるようにと、長巻ほどではないが柄を長くし、刃をやや短くした上で、


 地面やその他諸々の「突き刺せるモノ」に突き刺して威力を増加させる攻撃方法を主体とするため、片刃としながらもその刃は分厚く、足蹴にしてもまるで動じることが無く、足で蹴り上げる使い方すら考えられており片刃の反対側には丸みを帯びた形状に整えられていた。


 見た目に拘るためなのか鞘に収めた状態は普通の剣にしか見えないようにと、王族が持つのに恥じない気品というものを纏わせており、鞘には金の装飾が施されていた。


 突きも基本攻撃として考える事から細身の刃となっており、日本刀に近しい形状となっている。

 なぜこのような武器をあつらえさせたかというと、王子は姫を拉致した者の首を己の手で落とす事に拘っていたためであった。


 最終的に姫君を取り戻した王子であったが、その後その国は王子の次の次の代に戦乱が起きて滅びてしまう。


 以降、この剣は様々な者の手に渡り、それが王子のような「剣術の素養は全く無いが、何かを成し遂げようとする者」ばかりであったため、「素質は無いが成し遂げようとする者にのみ姿を現す剣」として長らくメディアン内で言い伝えられてきたものであった。


 ムギとの出会いは本当に偶然であり、ムギが剣術指南をカヤに頼んだその日、カヤは武具店に訪れて適当な武器として「これが適任だと」買ってきたのである。


 彼女はそのような伝承を知らなかったので、後にとある都市国家にてその話を聞いた際には大いに驚いた。


 カヤからすると「切れ味は至って普通だが、作り手が剣術素人をいかにして生還させるかを考えに考え抜いた構造の不思議な剣」として認識していたが、


 魔導具としてのザ・ウーの機能はグリップヒーターやらなにやら、使い手を補助する大量の機能と、刃こぼれしても自然修復するという当時としては最新鋭技術であったメンテナンスフリー機能を両立させたとても使い勝手の良い剣であり、


 一方で不思議な事に高熱高周波ブレードといったような「剣」というものを逸脱するような機能はあえて搭載されておらず、それがこの剣に何とも言えない高貴さを纏わせていた。


 作り手は剣を渡す相手が死なないよう心の底から願って作ったものとは理解できていたが、そんな背景があったとは知らず、「奴には勿体無い」と思うほどであった。


 だが、これこそがムギを完全に見捨てることが出来ない理由の1つでもあり、

 それだけの魔力を秘めた剣がなぜムギを選んだのかを見定めたいとはいつも考えている。


 そんなザ・ウーはそれまで戦闘力としてまるで役に立たなかった光の剣に代わり、ムギの相棒となった。


 そこらの魔物ならこの武器だけでも十分退治できるようなったムギにとっても、ザ・ウーは愛しいまでの大切な相棒であったのだ。


 ムギはそのザ・ウーを使いこなし、敵を次々に切り刻んでいく。


 刺さることが出来れば本来の力を発揮するので、いざ相手の体に刺さればそこから相手の体を内部から切断することが出来るこの武器は、


 ドゥームの特殊部隊と比較すれば大幅に戦闘力が低い敵にとっては恐怖以外のなにものでもなかったのだった。

何? ザ・ウーの形状が説明ではよくわからない?

Skyrimにそういう黒檀の剣とかいう片手剣あったよね! アレだよアレ! 大体同じだよ!

鞘の金の装飾はmod版で再現されたけどデザイン画では中央が青く、装飾部分は金色だったんだよ!

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