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某国の秘密兵器3(戦闘回)

 ――このままやってると死ぬな……HVPは後一発。仕方ない、ロラン……ごめんよ……とっておきを使わせてもらうから……。


 意を決したムギは、装甲の隙間から有機的な何かを見ると、規模の大きい熱エネルギーと運動エネルギーの双方で敵を突破できると見出し、準備に取り掛かる。


『クシャーナの出力30%ダウン! 各部損傷! 被害拡大!』


『あっちも手負いだ、ぶちかませ!』


 立ち上がったヒトデは地面に体を押し付けてブレーキをかけるようにしながら、後部のブースターを噴射し一気に加速してトドメを刺そうとする。


 ムギはなにやらガストラフェテスを弄ると、その時を待った。


 ヒトデは一気に地面を離れて高速で体当たりを試みると、ムギはガストラフェテスを投げつける。

 するとガストラフェテスは突如として潰れて形状が変化。


 それは1発限りの必殺技であった。

 ロランが用意した緊急時の最終兵器。


 ガストラフェテスの持つ物質を弾頭にする機構を本体である己に適用し、球体を作る。


 内部にはHVPを内包し、莫大な容量の魔力をコンデンサーに収めたまま、エネルギーを暴走させ……そして大爆発を発生させた。


 それはロランが「粒子加速爆弾」と名づけた、粒子加速とその粒子の衝突時のエネルギーを用い、さらにそのエネルギーを開放することで強大な運動エネルギーを開放する爆弾だった。


 いわば、核融合爆弾のようなものである。


 ガストラフェテスの持つ物質を分子レベルで分解して再生成する能力を用いて、さらにガストラフェテスの持つ物質の加速させる魔力の放出機構を利用し、


 自身の本体部分を分子レベルで崩壊させながら加速させ、その際に生じたエネルギーを開放するという危険極まりないもの。


 本体から開放されたエネルギーでもって本体の一部を破片として周囲にばら撒きながら、凄まじい熱も放射する。


 この必殺武器にフェイルセーフの類はなく、自爆同然の攻撃であるが、ムギは「自分の魔力障壁なら防げる」と考え、

 

 残りの魔力の半分であるガストラフェテスのコンデンサーの許容最大値である300程度の魔力を注ぎ込み、残りの半分でもって防御に使いながらヒトデと共にムギは自爆した。



 天にまで昇る光の渦とキノコ雲はすぐさま敵の小隊も確認した。


『前方に巨大な閃光があります! 原因はわかりません!』


『一体なんだ!』


『クシャーナとの交信不能! クシャーナのモニタリングが出来ません!』


『間違いなくあそこにはアークの移民がいたはずだ……対魔獣用兵器と一緒に自爆したのか?!』


 小隊はその凄まじい光景に混乱するが、エネルギーの余波は小隊のいる場所にまで届き小隊の者達は爆風によって吹き飛ばされる。


 風速60m以上の暴風が1km近く離れた場所にも届くほどだった。

 爆風によって飛ばされた埃などによって視界は非常に悪くなるものの、3分ほどすると状況も収まる。


『隊長……クシャーナとの交信が……』


『いくぞ、奴を片付ける』


 突然の小隊長の発言に戸惑う部下であったが、飛び出した隊長にすぐさま追随した。


『クシャーナは吹き飛ばされた。アークの移民は生きている! 急ぐぞ!』


 飛び出す直前に見えたのは、ゆっくりと立ち上がるアークの移民、ムギの姿であった。

 ムギはこの爆発で生きていたが、一方でクシャーナと呼ばれる秘密兵器は完全に沈黙していた。


 ムギの目の前にはもはや形状を留めていないヒトデの姿があったのだが、沈黙した状態によりそれが「死んだ」ことを確認すると膝をつく。


『ウッ……カハッ…さすがにあの規模の爆発は衣服と併用して防御しても防ぎきれなかった…か……』


 毛皮のマントを盾に体勢を低くして必死で耐えたムギは、マントも衣服もズタボロの状態となり、体の様々な部分に裂傷やヤケドがが生じていた。


 魔力は残り120。

 戦闘力はほぼ皆無と言える。

 虎の子の武装の1つであるガストラフェテスを失ってしまっていた。


 しばらくすると南側のやや遠くに見える森と見られる場所から人の殺気を感じる。

 ムギは片手、両手剣併用の「ザ・ウー(The Woo)」と名づけられた武器を抜刀して構えるも、満身創痍の状態だった。


 PATOLISの生存率も1%という最低数値を出している。


 敵の集団と見られる人影は4人。

 彼らは森から素早い動きで飛び出すとそのままの勢いでムギへと襲い掛かる。


 その時であった。

 轟音と共に閃光がほとばしる。


 ムギの真横をかすめたソレは後一歩で敵に命中する所であったが、黒づくめの集団は何とか攻撃を回避した。


 しかし間をおかずに2発目。

 これも極めて正確な攻撃であった。


『くそっ、援護する連中がいたのか! あのエルフか!? 分が悪い、撤退するぞッ!』


 ムギはそこで初めて黒づくめの集団がしゃべる声を聞き、黒ずくめの集団は隊長と見られる男を中心に撤退していく。


 満身創痍でかろうじて立ち上がっているのが限界であったムギが攻撃が飛んできた方向を振り向くと遠くに2つの人影があった。


 その2つの人影しばらくすると1人がもう1人を抱えるようにして高速で近寄ってくる。


 ――今アレを撃ったのはエクセルか……なんでまた……。


 近づく人影に見慣れた姿を見たムギはその攻撃がエクセルによるものだと確信し、そのまま意識を失った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~


『はっ!』


 ムギが再び意識を取り戻すと、近くにはエル、エクセル、カヤの3名がいた。

 カヤは相変わらず不満そうな表情を見せるが、エルはとても嬉しそうな笑みを浮かべ、エクセルは安堵の表情を見せる。


『復元の力……ありがとうエル……もう10年ぐらいは会えないんじゃないかと思ってた』


 神様のいう「しばらく」を年単位で見積もっていたムギは数時間ぶりの再開に冗談を交えて喜ぶが、エルは膝枕の状態でムギを支えつつ、自身が周囲に「ローズルの加護の力」と主張していた速攻魔法でもってムギの傷を癒していた。


 エクセルからすれば「奇跡の力」ともいうべき恐ろしい回復魔法である。


 ムギはさっと立ち上がるとエクセルの方向を向いた。


『どうして援護してくれたのかは知らないが、ありがとうなエクセル……お前がいなかったら正直ヤバかったぜ……ところでどうしてここが?……いや、どうしてここに?』


 ムギはエクセルの頭を撫でながらお礼を述べ、その上でどうしてこちらの場所がわかったのか、どうしてここに来たのかと伺った。


 するとエクセルはいきさつを説明した。


 ムギが街の外に吹き飛ばされた際、街の住民はそれを目撃していてムギを知る者が「アークの移民がテロに巻き込まれた!」と騒ぎになった。


 エクセルはこれを聞き、ムギを助けようと駆けつけようとするがカヤに静止させられる。


 ムギを助ければ自分も狙われる事になる上、彼が死んだとしても代わりはいるだろうとエクセルを説得するカヤであったが、


 エクセルは「あの人は私の話を信じてくれた人だから」と言って駆けつけると宣言。

 カヤはエクセルを守れと命じられていた上、責任感の強さによってしぶしぶムギを探すことに。


 吹き飛ばされた方角を街の人間などから聞いて、大急ぎで向かった。


 エクセルは呪文の詠唱に非常に時間がかかるので予め「パーティクル・レイ」と呼ばれる非常に高位な加粒子砲のような呪文の詠唱を行い、


 魔力保有量360程度ある自身の魔力の影響で2発分チャージする事に成功するとカヤに頼んでムギを探してもらっていたが、大規模な爆発が発生した際にその場所にムギがいると考え、そこに「パーティクル・レイ」を撃ち込んだのであった。


 その攻撃はある程度の誘導が可能であったが、ムギの気配を感じたのでギリギリでムギを回避するよう調整しつつも敵がいると思われる場所に向けて2発放った攻撃を黒ずくめの集団は「エルによるもの」と誤認して撤退したのである。


 ムギは「どうしてエクセルが俺を助けようとしたのかわからない」としつつも、彼女に助けられた事に素直に感謝していた。


 カヤは「これで完全に事件に巻き込まれたなと」と心の中で落ち込み、


 エクセルは「普段街中で冒険者の女の人に声をかけるといろいろ不潔なことをやっている人だけど、この人は私をまともに扱ってくれているし……何よりもまっすぐな人だから……」と、


 幼い少女なりに考えた末に「ムギが自身の目標達成のための適任者である」と本能的に読み取って援護にはせ参じていたわけだが、


 彼女はローズルという絶大な存在が近くにいるのを本能的に察知していたようであり、

 その選択は間違ってなかったと言えた。


 実はこの時、エルは近くで様子を見ていて援護しにいこうとしていたのだが、エクセルが攻撃を繰り出したので攻撃を中止していた。


 エルはパーティ内の絆が少しずつ深まっていくことを感じつつも、「これが人としての生の楽しみ方の1つか」と新鮮な気分にさせてくれた事を素直に喜んでいたのだった。

多分物理学は不得意だから爆弾の説明はガバってるとは思う……

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