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某国の秘密兵器2(戦闘回)

 気道(KIDO)。

 魔物や魔獣に苦戦し続け、勝利を収めることが出来なかったムギが旅先で出会った「武芸者」と名乗る各地を放浪して時には大道芸を披露し、時には村の用心棒を買って出たりする辺境では珍しい存在から教えてもらったもの。


 体内の魔力を制御し、他のエネルギーに変換することなく「魔力だけをもって」戦闘力とする異形の戦闘方法の通称であった。


 ムギが旅先で出会った「武芸者」と名乗る女性は転生移民であり、ムギのいる日本に近しい文化を持つフリーロームの全く別の惑星出身の者であったが、


 彼女は漢字などに通じる独自の文字を文化にもつ世界の出身者であり、気道は文字こそ違うものの読みは「きどう」で2文字であるなど漢字文化に妙な共通点があった。


 そしてムギの世界にある儒教の思想に通じる思想をもっていてとても馬が合った。

 他にも大量の者がその世界から転生してきているらしく、気道は彼女のような存在によってメディアンに広まっているものらしいのだが、


 それ自体は非常に昔からメディアンに伝わっており今日の魔力制御方法の基礎となってメディアンに定着しており、その者は「それを目的に転生移民としてこの世界に送り込んだのではないか」と考えていた。


 ムギは彼女に対して「せめて旅をするにあたって己を守る力が欲しい」と気道を教えてもらい、己の戦闘スタイルを魔導具と気道を併用したものとして確立させる。


 魔力制御だけで戦うこのスタイルはシンプルながら非常に強力。


 事実、大質量攻撃を完全に防いでいた。

 ムギに対して大半の物理攻撃を防ぐことなど造作もなく、弱点は大量の魔力を消耗するので長時間の間防御し続けられないという事だけ。


 この時、独立稼動していたPATOLISはムギから得られた情報から彼の生存率は47.55%と見積もっていた。

 普段の彼のみのデータを出す場合からするとやや高めとも言える数値である。


 ヒトデのような化け物はムギに体当たりをしながら背部にある謎のブースターのようなものの出力をあげてムギを吹き飛ばそうとするが、ムギの魔力障壁の圧力の方がそれに上回っていた。


『0距離で耐えて見せろよ!』


 ムギはそう叫ぶと、HVPを装填した状態での最大威力でヒトデを攻撃。

 装甲に覆われたヒトデでも、HVPならばダメージは通ると思われた。


 しかし射撃を試みたその瞬間。

 ヒトデ自体も巨大な黒く渦巻く魔力障壁を展開。


 弾丸は強大な運動エネルギーに押しつぶされて破裂、爆発した。


 ムギはその衝撃が魔力障壁の内側だったために吹き飛ばされ、数百mは後方にあった巨大な岩山とも言える岩の岸壁にたたきつけられる。


 それは平野にポツンと存在した岩もとい岩山のようなものだった。


 たたきつけられる直前に後方に魔力障壁を発生させてダメージを回避したものの、一気に500近くの魔力を消費した。


 HPVの弾丸残り1発、1本目のカートリッジ残り400、2本目のカートリッジ残り1000。

 わずか10分程度でこれである。


 いかにムギの継戦闘能力が低いかを表していた。


 PATOLISは生存率を28.44%と低下させ、緊急離脱を主張するもムギはその情報が目に入ってきていない。


 ヒトデは大したダメージをもなく再び突進。

 ムギはそれを身体能力を向上させた状態で何とか回避。

 この回避だけでも魔力を消耗していく。


 機動性の高いヒトデではあったが、急に反転するような運動性はないらしく旋回に時間がかかっていた。

 真横から見ると正面から感じる印象とは裏腹に薄っぺらくはない。


 後部にはトゲのようなものが多数付いていてブースターのような翼のようなものを形成している。


 真後ろをみるとそれが完全に「兵器」とわかる意匠であった。


 ヒトデは再び上空に上昇すると後部から謎のトゲを射出。

 射出した部分には新たなトゲが生えて再装填されていた。


 瞬く間にそれは加速するとムギの周辺に展開した。


 謎の推力によって浮遊するトゲはあきらかにムギに向けて尖った部分を向けている。


 ――おい冗談だろッ! まさか……ガンダム世界のファンネルみたいなもんか!?……。


 まるでSFの世界とも言わんばかりの武器がこちらに向けて何かを仕掛けてくる事に一瞬のうちにそれを「遠距離射撃武器」と見抜いたムギは微細に動いてトゲの一部を射出してくる攻撃を何とか回避した。


 そのトゲの射出は弾丸のような高初速のものであり、命中すると弾頭が爆発する榴弾または徹甲焼夷弾と思われ、ムギは直撃は回避しても少なからず爆発の衝撃を受けた。



『対空防御兵装と聞いていたが、対人兵器として足止めするには有効だな……データ取っとけ』


 その方法による攻撃を命じた指揮官は遠くよりムギの戦う姿を見ながらもその兵器のデータを取るよう部下に命じる。


 本来ならば自身達も参戦してムギの戦闘力を削ぎたい所であるが、何分「敵を見分ける能力が低い」との事から参戦が出来なくなっていた。


 暴走事故も何度も起こしている未完成の実験試作兵器は完成度が低い影響で戦術でそれをカバーした結果、1:1の状況でしか使うことが出来なくなったのは失態であった一方で、高い戦闘力を発揮して遠くより監視する者達を感嘆させる。


 一方のムギ、敵の偏差攻撃を上手く回避しつつも攻撃を繰り出すがまるでダメージを与えられない。


 するとヒトデはムギの方向へ体を正面に向けると何やらエネルギーをチャージするかのような様子を見せる。


 PATOLISはムギの生存率を17.11%と算出。


 ムギは毛皮のフードの上にゴーグルを身に着けていたが、


 ゴーグルを外してその状況を直視した。

 気配からして膨大な魔力を溜め込んで何かを仕掛けてこようとしており、

 体の中心で何かをエネルギーを変換して作り出そうとしていた。


 ムギはすかさずその部分めがけて徹甲弾を射出。

 FCSで軌道予測を行い、見事に命中させた。


 これまでの戦いで魔力を消耗していたがさらに消耗し、1本目の残りカートリッジ残量は150を切った。


 何らかの変換中のエネルギーと干渉した徹甲弾は命中すると大爆発を起こし、ヒトデは吹き飛ばされる。


 ムギは恐らくエルがよく使う爆発する魔法の類で攻撃を仕掛けようとして失敗したのだと判断した。


『チャージが間に合わん! 奴の射撃センスはどうなっているんだ!? どうしてそんな簡単に命中できるっ!』


『小隊長、今の攻撃で魔力が逆流した影響で《クシャーナ》のパワーが15%ダウンしました! 魔力変換機構パーサ破損、ノヴァクラスター使用不能!』


『パワーダウンだとお!? 使い方を誤ったというのか!?』


 状況を見守っていた小隊は状況的に有利であるにも関わらず、決め手に欠けて焦りを見せ始めていた。


『仕方ない。ここからはバーゲンセールだ。ありったけの武器を叩き込んでやる! やれっ!』


『ハッ!』


 なんらかの操作を行っていると見られる部下に小隊長は命じると、部下はコードを打ち込んで命令を出した。


 ヒトデは一旦低空を飛行する形となると、岩山の近くにて岩が大量に転がっている場所の付近にて一旦停止。


 すると岩から弾丸のようなものを大量に生成し、ムギのガストラフェテスと同じ方法でもって攻撃を試みる。


 ムギが最初に見かけた穴はガストラフェテスと同じく「魔力を放出」して弾丸を押し出すためのモノであった。


 攻撃は2段階に分け、最初は6発、次に7発射出した。


 ――投射系の攻撃はポピュラーとはいえ、同じたぐいの武器をもっているとはな……まるで対魔獣用兵器だとでもいうか!?……。


 こういった投射武器は対人用ではなく対魔獣用などに使われるもの。

 それを持つというのはまるで「魔獣を倒すための兵器」のように感じられたムギは攻撃を回避しようと試みるが――



『誘導した!? くそっ回避が間に合わねっ!』



 弾頭の軌道はムギに向かって補正し、直撃コースで飛んでくる。

 ムギのガストラフェテスには不可能な弾道修正が可能な投射武器をヒトデは保持していた。


 ムギは魔力障壁1段目の攻撃を防ぎ、そこで魔導カートリッジを1本使い切って2本目を使い出す。

 間髪入れずにそこに2段目の攻撃とヒトデ本体が体当たりを仕掛けてきた。


 ムギはその攻撃を受けて大きく吹き飛ばされる。

 地面にたたきつけられたムギは衣服の防御力によってダメージを最小限としたが、少なからず衝撃が体に伝わっていた。


『うっぐはっ……』


 たたきつけられた衝撃で肺から息が漏れたが、すぐ体勢を立て直した。


 ムギに体当たりをした後に一旦上空に飛び上がったヒトデは、何やらトゲのようなモノをばら撒くと、そのトゲは尖った部分を地面に向けて自由落下させてくる。


 落下したと同時にトゲのようなものが爆発。


 ムギが動けずにいる所を、対空防御兵器を交えて攻撃、さらにさきほどムギに投げつけた弾丸を回収していて周囲に展開して飛び上がるとそれを再び投射、そこに自身も体当たりしてトドメを刺そうとする。


 だが、様々な攻撃の土煙が広がるムギのいるであろう場所めがけて体当たりしたその瞬間、巨大な岩がその大きさのまま超高速で飛翔し、ヒトデに激突した。


 その大質量攻撃によってヒトデは吹き飛ばされて墜落し、地面をズザザーとえぐりながらも何度も転がりながら滑っていく。


『ようやっとダメージを与えられた……感謝しとくぞ、無駄に爆弾みたいなもんばら撒いてくれたおかげで俺の後ろにあった岩山が崩れて大岩が転がってきたからな……』


 ムギは爆発の余波で転がってきた大岩を魔力障壁で受け止めると、ガストラフェテスを用いて投射していたのだった。


 人によっては本来、それに押しつぶされて死ぬのような大岩であり、当然敵がそれも狙って攻撃したものであるがムギを逆手に取ったのだ。


 それが可能な汎用性の高さがガストラフェテスの投射機たる優秀さであり、とりあえず装填されたものはなんだろうが飛ばすことが出来るのが強みであり、岩を支えられるほどの圧力があるのがムギの魔力障壁の強さ。


 魔力障壁の形状を整えて支えることで重量を緩和させつつ、大量の魔力で押し出してヒトデに向けて高速射出したのだ。


 それは音速を超えるわけではなかったが、時速換算で600kmにも達していた。

 直径12m以上もありすさまじい重さのそれすらも高速射出できる力がガストラフェテスにはあり、


 見事その岩をヒトデにぶつけたことでダメージを受けた。


 各種センサーでモニタリングしていたPATOLISも生存率を21.11%と20台に生存の可能性を引き上げる。

 そういう情報の読み取りに長けているのがこのシステム最大の強みであった。


 連続攻撃の影響で防御がおろそかになっていたヒトデは装甲がひしゃげるほとのダメージを受けたが、尚も立ち上がる。

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