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原初の神と地球の神1

『私の研究室に無断で侵入するとは関心せんな……それともここはフリーロームの辺境地域を管理する弱小な神の研究室に原初の神がわざわざ訪れていただけるとは……と言うべきか?』


 そこはムギもたった1度だけ訪れた事があるアークの研究室。

 アークはここから地球の状況を見守り、日夜情報収集を行ってレポートなどにまとめている。


 アークの研究室内は一言で言えば「書斎」

 ありとあらゆる地球に関する文献が収められた室内は「図書館」とも言うべき姿となっているが、


 ここにある書籍はアークが著作したものや他の神々の資料を個人的に収集したものであり、地球の有名な文献などがおいてあるわけではない。


 部屋の中心に机があり、そこでなにやら自動で動く理科の実験装置のようなものを稼動させながらも、


 自身は分身体を作りながら様々な作業をさせる傍ら、招かれざる客とも言うべき者をどうもてなすべきか迷った様子を見せていた。


『この場所は基本的には私が戸を開かぬ限り、神々もおいそれと入れぬよう仕掛けを施していたはずだが……』


『そんなもの我にとっては造作も無いこと。解除するのに30秒もかからなかったわ』


 ムフーと自慢げに左手を腰に当てて自慢げに話す少女は真名を「ローズル」というエルフの少女「エル」である。


 彼女はムギがいる場所から4000km近く離れたリーンフィールドの国立図書館に設けられたアークの研究室に、平然と移動して侵入してきていた。


『わざわざその姿で来なくとも、体を捨て置いてこちらに来ればよかったものを……一体何の用だ。私の地球の管理を邪魔しに――』


『貴様、メディアンにおける法理を破っておるな?』


 エルもといローズルは「下らん戯言はよせ」とばかりになにやらはぐらかそうと時間を稼ぐ様子を見せたアークに近寄りながら自身が気づいてしまった事を強い口調で吐露する。


『……何を言い出すのかと思えば、そんなことか……2度もアズサ(ムギ)に干渉した理由はそれを調べるためか?』


 アークはとにかく動揺しないよう努めながらもため息を吐き出す。


『以前から怪しかったからのう。初めてムギにうた頃から貴様とムギの接続関係に不明瞭な部分が感じられた。わかっているはずではないかアーク。人との魂の接続は単一の神と間のみ許される行為。貴様が気づかぬ間に地球の様子も見てやったが、地球にいる人は全て貴様を通してもう1人の神と接続されておるな? つまり貴様はメディアンで定められた法理を破って――』


『そんなものッ、他の者だってしているが!?』


 そのあまりに突然の感情変化にさすがにエルも口を止めた。


『お前は知らぬだろうよローズル。メディアンはかつて4回破壊と再生が繰り返されたが、5回目に新生された際、よりフィードバックを得られるようにとフリーロームの領域を大きく拡張してまで新たな神の参入を許したことを!』


『知っとるわそんなもの! フレイからの報告ぐらい受けておる! 貴様のように精霊に毛が生えた程度の力しかない神々は確かに、種族神とされる者達から魂を凱旋してもらうのが基本であって、そうすることで新たな神の参入を可能とし、人の住まう地をフリーローム内で増やす事に成功した。だがあくまでそれは譲渡。種族神だけが捕らえる事ができる魂を受け取って自力で管理することになっていたはずであるのだがな!』


『それは表向き決められた形骸化したルールに過ぎん。私のような神はその管理能力を過小評価され、常に監視された状態を強いられている。それでも私はありとあらゆる手を尽くしてやってきた。その私にッ、メディアンについては全く関与せず、メディアンでの神々の会議なども参加せずに全てをフレイという代行者に任せているような者が上から目線で物言いか!?』


 アークはかねてよりオーディンのような強大な力を持つ原初の神に憧れがあった。

 原初の世界を創造し、原初の人を想像し、とにもかくにも「神」という肩書きを絶対のものとできるだけの力とそれにちなむエピソードを多数持つからである。


 だが憧れと共に、その殆どの原初の神は世界を創造した後の管理を放棄する姿勢があり、強大な力を世界の管理のために使わない姿勢には少なからず憎しみを抱いている。


 ことメディアンに興味が薄いのが原初の神々であったが、そこについてはとにかくアークにとって許しがたいものがあった。


 その中でも特にローズルはメディアンに無関心を貫く者であり、神々が今後を協議する会議の場でもフレイを参加させて自身は自身のいる神殿に引きこもって常にくたくたと過ごしている状況であった。


 メディアンにも多数のエルフ族はいるが、あくまでその者らのために意見を述べるのは従来はフレイの仕事だったのである。


 アークからすればメディアンに何1つ貢献すらしていないローズルに「ルール違反」などと言われることはまことに我慢ならないものだった。


 ルール違反をしたくてしているわけではない。

 それを強いられつつも、原初の神々のように世界を創造して人を創造して管理したいがために奮闘してきたのがアークなのだ。


 自身が生まれた頃にはすでに神々がいて、そればかりか「ラグナロクの終焉」も終わった後となっていて、


弱い力故に何1つできないながらも、ラグナロクを生き残った原初の神々から「あの頃は楽しかった」などと語られる姿に憧れを抱いて歩んできたアークにとっては、


 星1つ創造する事すら難しく、他の神々に太陽などを作ってもらってかろうじて太陽系をこさえ、さらに人の魂も他の種族神がアストラルフィールドから拾い上げて作り出す所、自分ではそれが出来ないので、人の種族神から分けてもらう形で何とか地球というものを成立させていた。


 そもそも能力不足故にこれまで参入すら許されておらず、長年「神なのに神たりえない」と己の弱さを責めながら指をくわえていたアークにとって、メディアンを5回目に復活させる際に「他にも新たに世界を構築したい者達はいるか?」と声がかかった際には、


 天命を受けたに等しく、是が非でも己の描く世界を作ってやると意気込んで人脈作りから始めた経緯がある。


 フリーロームは5回目のメディアン再生と同時に拡張される際、新たにビッグバンを起こして空間を作り直したという経緯があるのだが、


 他の神々は早い段階から人々を星の中に生み出して文明を築いた所、アークは力が弱過ぎて人を生み出すのに相当な年月を要してしまうほどだった。


 だからこそアダムとイヴのような存在が生まれた時には天界にも轟くほど喜びの声をあげた一方、

 

 それから何度も試行錯誤して今日にまで至り、メディアンの民や他のフリーロームの民からすると非常に特殊な文明を築いているように見えた。


 地球人に寿命があるのも、地球の民にまるで魔力などが無いのも、全てはアークの能力不足に起因しており世界を制御できないのでリミッターのようなものを施している状態にある。


 例えば寿命は魂を肉体に定着させ続けるのが長年に渡るとある時期から神によっては難しくなる影響があり、


 それがアークだと150年ぐらいという事から150年を限度に設定した。


 表向きは「あえて設定した、あえてね」と言い切るような様子を見せていたが一部の神々は気づいており、こっそりその姿を嘲笑していたりする。


 地球の民が魔力的なものを用いることが出来ないのも、表向きは「そういうのが無い方が魔獣が出てこないのでより安定して文化が育つ」と主張していたが、


 その裏側は魔力は魂と共に保持される強いエネルギーなので、当然これを保持する人間との接続を維持するのは難しく、地球人口が大幅に少なくなってしまうためであった。


 アークにとって地球は最大120億人強までなら同時に住まわせることが出来るよう環境を整えているが、魔力を司る部分に予め加工を施した魂でなければ10億人程度しか管理できず、


 それでは地球だと広い世界をもてますのが間違いなかったのでアークの背後にいる種族神に魂を加工してもらった上で提供してもらっていたのだ。


 自身が「メディアンにおいても負けないだけの力と知恵を持つ種族」と自負する地球市民だが、その地球市民はある神から言わせれば「ガタガタで同情したくなるほど脆弱な」神によって支えられていたのである。


 その背後には種族神がいて、種族神がアークを解して接続するような形で地球人と接続関係にあった。


 ローズルはムギを通してその事を察知し、干渉を試みて揺さぶりをかけて確たる根拠を得てアークを問い詰めているが、


 わなわなと背中を震わせるアークにとってはローズルの物言いは、原初の神でなければ殴りかかっているであろうふざけた言動だったのである。


『……一体誰だ。貴様の後ろにいるのは。ロクでもない気配を感じたぞ。こんなものラグナロクに至る直前に感じたドス黒いなにかと同じではないか。久しく思い出したぞ』


『お前の質問に答える義理はない。そういう契約だ。自分で探せ』


『なるほどな、ロクでもない神で間違いなさそうであるな。我の知らぬ所でそんな事になっていたとはな』


『メディアンは天界や地獄に愛想を尽かした神々が生み出した世界とはいえ、ロクでもない神ならいくらでもいる。いや、神とはロクでもない者だ。次元移動だってそうだ。存在しないとされていた神のかみのことわりを行使して私の管理下にあった人間をつれてきた者は誰だ?』


 手で何かを振り払うようにしてアークは憤っている様子を見せ付ける。

 ローズルはその姿に動揺する事はなかった。

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