高2の俺は夢がなかった
「正宗くんも将来は警察官になるの?」
小さい頃に、何度も言われてきた言葉だ。
俺の父親はストレートで一流大学の法学部に合格しその後もエリート街道まっしぐら。警察官で警視長としてバリバリ働いている。
周りのみんなは父を尊敬の目で見ていたし、俺もそれが誇らしかった。そして「父さんが警察なんだから、俺も将来は警察になるんだろうな」と漠然と考えていた。
というより、そんな甘い妄想をしていた。
現実はそんなに甘くはなく、俺の頭の出来は中の上をいくかいかないか。赤点を取ったことや追試を受けたこともない、筈なのに世間の皆様はそうは思ってくれなかった。
「正宗くんも将来は警察官になるの?」は、いつの間にか「正宗くんは、将来何になりたいの」に変わっていた。
その評価の変化に、俺は「あー俺見限られたんだな」と察していた。
幼い頃から抱いていた夢のような何かは、高校に入学してすぐに捨てた。
俺の将来に対し、父さんはなにも言わない。
既に、何年も前から分かっていたのかもしれない。息子には才能がないのだと。不出来な子供を産んでしまったと。
だから、ダメなやつとずっと自己嫌悪し続けていた俺は、
「貴方には魔王の才能があるのです!どうか、どうかこの国をお救いください!!」
そう言われたとき、飛び上がりそうになるくらい嬉しかったんだ。
ああ、この場所では認められてるんだって。