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ねぶた

 そして――

 いよいよ青森ってときに、“ソレ”が出現したのだった。

挿絵(By みてみん)(引用:wikipedia)


『ヤーレ、ヤーレ、ヤーレヤ、ラッセ、ラッセラッセラー、ヤーヤドーヤーレ、ヤーレヤ……!』


 強烈だ! 寄りにも寄って征夷大将軍・坂上田村麻呂、その人(?)だったのだから。

 青森ねぶたの、第一等の大武者だ。そいつが今、色も鮮やかに、まるで入道雲のように巨大に立ちのぼり、軽快な笛太鼓の音色(はやし)を背景に、勇壮に動き、ジャンボよりか遙かにでかい大剣を振り落としてくる――

「すごく、大きい……」ほおを赤らめている。

「さすがは560km。“ゴール・ガーディアン”も気合い入ってるぜ――」

「どうすんだよこんなの」

 相手にとって不足なし。こっちも武者震いだ。オレの反射神経は人の3倍はいい。体育の授業は、特A以外とったことはない――

「任せろ! 振り回すぞ!」返事を待たず操縦桿を右に倒す。とたん――身体にのしかかる重力だ。腰に張り付けてある透明オリハ本体が瞬時に、薄く強靭に体表面に展開する。体勢をサポートするも、きついのには変わりない。モエが気丈に声を張り上げた。 

「――気をつけて(アテンション)! ジャンボは亜音速! 40秒で(ゾーン)アウトだ!」

「上等だよ。時計(タイム)頼むわ!」

「左ッ!」

「ラジャ!」左へ。「うはっ……!」「おェろっ……!」

「これ絶対やっつけないとゲームクリア無理っぽい――?!」

「――空、占拠してるからなあ! 着陸できない。“逃げ”は今回ナシだ」

「ボクのオリハを膨張突起させて飛行機の剣にす――」途中で遮った。「ダメだ」

「ここでソレやってみろ? 機の操縦系がズタズタにされちまう!」

 瞬時に理解するモエ、開き直った。

「しょせん、竹ひごと紙だろ? 突っ込んでぶち抜こーよ?」

 笑った。そいつは、罠だ。なんたって――

「針金もあるんだぜ。(飛行機なんか)それこそ一巻の終わりだ」

「ぐう!」

 ニヤッとした。

「けど、いい案だ! ピンチのそばにチャンス。さすがオレのアタッカー、惚れ直すぜ」

「なんだか遺言に聞こえるよ」

「いままで、よくぞこんなオレに付いてきてくれたものよのう……」

「ヤメろバカ――アハハ!」

「しっかりつかまってろ!」

「離さないよ――!」

 オレは操縦桿をひねり倒した――

 機体はキリモミを起こした。ぶち抜くのではない。左の翼の先端が、ねぶたの背中の一部分、見事、紙と竹の部分だけを切り裂いたのだ。直後に急上昇させた。背面ターンに移行する。巨大な機体がきしみ、身体が圧し付けられる。ぎりぎりの中、目をこらした。

「――見たか?」

「ごめん。でも何?」つらそうな声。オレは励ますように声を張り上げた。

「――照明だよ。ねぶたの内部。てっきり、発電機による電飾だと思ってた」

「違うんだ」

「なんと古式豊かに、蝋燭だったよ。これほど(の規模)となると、逆に凄いかも」

「あらら――」

 ハッキリわかる。生き生きとしたワルガキの声音だった。オレもテンションが上がる。

「ラストだ気張れ――!」

「ホイキタ!」

 オレは機を操り、武者の上空を滑空。

 燃料を噴出投下し、目論見どおり、モンスターを空中で、爆発的に完全燃焼――!

 ジャンボは、悠々、無事に、新青森空港に着陸を果たしたのだった。

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