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ゾーンイン
二人が搭乗したネオジャンボ機は7月の青空をぐんぐん上昇していく。一度、羽田上空を旋回。左手に富士山を眺めた後、一路、新青森空港めざして安定飛行に入った。
「東京~青森間、ラインにして約560km。一気に560ポイントなにがしゲットだぜ!」
「まったく呆れるばかりだ。こんなこと思いついても、実行するのはキミくらいなものさ」
「それに飄々と付いてくるオマエも相当なモンなんだけどな」
「まっ、実力の醸し出す余裕ってやつだね」
「頼りになるぜアタッカー」
「おい、1万メートル上空から放り出す気かよベースマン」
「今回はオレと一蓮托生だ。むしろ後悔するなと言いたい」
「すでに遅し」
アハハと二人して笑う。そしてまた手をつないだ。周囲の乗客が気づいて目を丸くする。真っ赤なワンピのオバサンが叫んだ。「あなたたち、まさか――」
言葉が途切れた。
オレたち二人が、この世からかき消えたからだった。




