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はじまり
これは百年後の世界の物語。
ムー大陸もアトランティス大陸も、その存在は前々世紀の昔の時代に、とっくに否定されている。
青く輝く美しい水球。何億年もの昔、地球はそう呼ばるるに相応しい姿をしていた。
その海面上に存在する陸地はただの一つ。亜大陸と称しても許されるだろう大きさの、つまりは大島であった。
ある日、宇宙から、全くもって大陸と称すべき巨大な透明結晶体が落ちてきて、大島の西隣、水球表面に突き刺さった。同時に、数え切れないほどの、それこそ無数の、大陸と同質の細かい破片が、キラキラとさざめきながら大島ふくむ辺り一面に降り撒かれたのである。
後の世に、その破片は、「オリハルコン」と呼ばれることになる。
後の世に、大島は、「アトランティス」と呼ばれることになる。そして――
水球に突き刺さったオリハルコンの大陸は、後の世に、「ムー」と呼ばれることになるのであった。
ムーは、一夜で水球に沈んだ。
その後大陸移動が起こり、永い時をかけて、水球は地球となったのである。