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カル爺とガイル

今回リュートとマヤの登場は少なめです

7話 カル爺とガイル


「それにしてもよくあの瞬間に思い出しましたね……バアルの能力を」


「まあな、たまたまだ、まさか、あのタイミングでバアルの幻影能力を思い出せたのは本当に運が良かったな」


「そうですよねー。たまたまですよねー。何てったって顔面から地面に突っ込んだ人ですもんね〜」


「それは関係ないだろ! 忘れろ! もう忘れろ!」


「嫌ですよ〜!」


何て事を言いながら俺とマヤは草原を駆け抜け第二の街に向かって走って行った。







ガイル・ザブエルは作業服に着替えていた。

あまりいい素材ではないがイノシシの皮よりはマシなくらいのあまり伸び縮みはしないが防水性には優れたシャツとズボン、それに皮のブーツを履くと家の扉を開け外に出た。


外に出るといつものように眩しい太陽の光が全身を包み込む。


「うーーん! 今日もいい天気だ!」


そう叫ぶと彼は仕事場に向かって笑みを浮かべながら歩いて行った。


数分後、ガイルの目の前に見知った一人の老人と仕事場の姿が見えて来た。

さらに笑みを深いものにしたガイルはすぐに近くにある小屋に入ると道具を持ち、その老人の元まで走って行った。


「おーーい! カル爺ー!」


その声に気づいた一人の老人、名をカルガルドという老人はガイルに向けて手を振った。

カル爺は昔、開拓使だったらしいけど今から二十年くらい前に引退してこの村に来たらしい。

カルガルドの目の前にすぐに来たガイルは道具を肩に乗せるとニッと笑い


「おはよう! カル爺!」


と挨拶をした。


「ああ、おはようガイル、今日も元気そうで何よりだ」


と答えた。これが二人のいつもの挨拶でありすでに日課ななっていた。


「今日はどこらへんを耕すんだい? カル爺?」


「今日は少し森の近くまで行ってみようと思っている。一様ナイフか銅剣くらいは持って行くようにな」


「分かった。なら銅剣を取ってくるちょっと待ってて!」


そう言うとガイルはすぐにさっきの小屋に戻り銅剣とナイフを一本ずつ持つとカル爺の元に帰って来た。


「はい! これカル爺の!」


「ああ、ありがとう。それじゃー行くぞ」


「うん!」


カル爺は銅剣を腰のベルトの間に差し込むとくわを肩に担ぎ森に向かって歩き出した。その後ろを同じように十二、三歳くらいの男の子、つまりガイルが肩に斧を持ってついて行った。




「よし、ここでいい。今日はこの辺りをやろう。ガイルは目の前の木を切り倒してくれ。わしはここら辺の土を耕す」


「うん! 分かったよ! カル爺!」


そう言うとガイルは一番近くにある木まで行くと斧を構え、無言で木に斧を振った。


カーン! カーン!


という木を打つ音と


ガシュ! ガシュ!


という土を掘る音だけが数時間響き続けた。




太陽もすでに傾き出し、夕焼けへと変わりつつある時にカル爺は額からの汗を手の甲でふくとガイルに声をかけた。


「そろそろ終わるぞ! ガイル!」


「うん!」


そう返事をしたガイルはすぐに今倒そうとしていた木を片付けると小走りでカル爺の元まで行った。


「僕やっぱり木こりの才能があるのかな?」


「そうだな…この八時間でこれだけの木を切り倒せるのは村ではガイル、お前しかいないだろうな!」


「本当に? やったー!」


「ははは、ほら、これが今日の分じゃ、大切に使えよ?」


「分かってるよ!」


カル爺は笑みを浮かべながら腰から銀貨1枚と銅貨3枚を渡した。

ガイルはそれを受け取ると訝しげな顔を浮かべるとカル爺に顔を向けた。するとカル爺は


「今日だけ特別にな」


その言葉の意味を知ったガイルは一層笑顔を浮かべると


「うん!」


と返事をするとカル爺と共に歩き出した。


カル爺とガイルはそのまま森を抜けるといつものようにカル爺が前、ガイルが後ろをついて行く形で歩いていた。

ガイルは少し歩くとポケットにある銀貨と銅貨を指でなぞった。


これだけあれば母さんも喜んでくれるよね!


そんな事を考えていると突然目の前を歩いていたカル爺が止まった。

いきなり止まったので気づかずにガイルはそのまま額をカル爺の背中にぶつけてしまった。


「いて! 何で止まったの? カル爺?」


そう言うっても反応のないカル爺を不思議に思ったガイルはカル爺の後ろから顔だけを出す。するとカル爺から十メートルほど離れた所に直径一メートル程の巨大な穴が空いていた。それが何なのか気になったガイルはカル爺に問おうとし声を出すが


「カル爺! あの穴は」


そこまで言った瞬間、穴から一匹の巨大な黒いアリが出て来た。それの全長は二メートル弱。キザギザとした鎌のような口、前脚にも同じような鎌状のものがついたそれはカル爺とガイルに気づくと


キィィィィィィィィィィ‼︎


と言う甲高い声を出しながら威嚇して来た。

我に返ったカル爺はすぐに腰にさしてあった銅剣を手に持つとアリの魔物に向けて構えた。

アリの魔物は再び奇妙な声を発すると一歩一歩近づいて来た。


「ガイル! すぐに村の若いのを連れて来てくれ!」


「え! カル爺は? カル爺はどうするの!」


「わしはここでこいつを食い止めてみせる!」


「無理だよそんなの!」


「これでも昔は開拓士として様々なところを旅したんだぞ?魔物の一匹や二匹大したことはない!」


「でも…‼︎」


「いいから! わしが合図をしたら村に向かって走れ! いいな? わしはお前を信じておるぞ」


そう言って笑顔を一瞬浮かべるとカル爺はアリの魔物めがけて走って行った。


「はああああああああああああ‼︎」


カル爺は銅剣を勢いよく振りかぶる。

その動きを見たアリの魔物は器用に後ろ足で体を支えると上半身をあげ前足を横に振るった。

それをギリギリで交わしたカル爺はアリの魔物の懐に飛び込むとそのまま伸びきった右前脚を付け根から切り飛ばした。


「フン!」


キィィィィィィィィィィ‼︎


再び叫び声を上げるとアリの魔物は数歩交代した。その瞬間を逃さず追撃をしながらカル爺はガイルに合図を出した。


「行け! ガイルー‼︎」


「うわぁぁぁぁぁぁ‼︎」


ガイルはそのまま叫び声を上げながらまっすぐに村に向かって走って行った。


アリの魔物は走って逃げていくガイルに目標を変えると追いかけようとするがその目の前にカル爺が素早く移動する。


「おおっと、お前の相手はこのわしじゃ、追いかけるならわしを倒してからにしろ!」


そう言うとカル爺は再び銅剣を構えなおした。


今回も読んで頂きありがとうございます!

正直どこで区切ればいいか悩み投稿に遅れてしまいました!次は月曜日か火曜日に出すので是非読んで頂けたら幸いです!

そしてブクマ……お願いします!

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