始まり
誤字がありましたらお許し下さい
2話 始まり
二〇十七年、八月、学校に通っていたら今頃は夏休みである。
そんななか黙々と暗い部屋の中で一人の青年がネットゲームをしている。
そこに『ピンポン』というインターホンの音が鳴り響いた。
「きたか…」
そう俺が呟いた瞬間、下から
「はーい!今いきまーす!」
妹の朱莉の声が聞こえた。
「朱莉?まだ学校にいってなかったのか……」
そう言うと青年はネットゲームを消すと立ち上がり部屋を後にした。
ーーー
扉を開けると目の前には、真夏の日差しを受けて額から一筋の汗を流しながらも爽やかな笑顔を浮かべる、緑色の帽子と服をきた青年が小さな茶色の包み紙を持って、立っていた。
「龍輝さん宛の物でーす。親族の人ですか?」
「はい、妹です」
「そうですか〜、ではここに記入をお願いしまーす」
「…と。これでいいですか?」
「はい!ありがとうございまーす!それでは」
「はい、お仕事頑張って下さい」
「ありがとうございまーす」
そう言うと配達員の青年は朱莉に荷物を渡すとでていった。
「ふう、お兄ちゃんの事だからゲームかな?なんだろう?」
キョロキョロと周りを見渡す朱莉は誰もいない事を確認するとニヤッと悪い笑みを浮かべると、茶色の包み紙に手をかけたその時、階段から凄い勢いで青年が駆け下りてきた。
「ちょっと待てー‼︎ 」
「キャッ! お兄ちゃん⁉︎ どうしたの急に?」
「今だよ、それより…」
ジーー
青年は包みを破こうとしている手をじっと眺める。
「お前は今何をしようとしてるんだ?朱莉?」
「いっいや!何もしてないよ!」
そう言うと朱莉はすぐに引きつった笑みを浮かべるとすぐに手に持っている小包を青年に差し出した。
「はいこれ、お兄ちゃん宛で届いたやつ」
「おう、ありがと、じゃー部活頑張れよー」
「お兄ちゃんこそ、ゲーム頑張って!」
「おう、ありがとさん」
青年はそのまま今降りてきた階段を上がり、自室に戻っていった。
ーーーー
妹から茶色の小包を受け取った俺の名前は宮本龍輝高校2年生。歳は十七歳。引きこもりである。
理由は簡単。好きだった相手が陰で俺の悪口を言っていたからだ。
それ以来、俺は人が信じれなくなり、徐々にクラスメイトとも溝が生まれ、今まで友達だった相手とは顔が合わせれなくなり、親とも顔を合わせるのが気まずくなり最終的に今の引きこもりと言う結果に収まってしまった。
ただ唯一、引きこもりになった俺とも普段通り話してくれる妹の朱莉とゲーム内で知り合ったある人物の二人だけが心を開いている相手なのだ。
二〇十六年、新たな革命がゲーム業界を震撼させた。
それは新たに導入された五感感知型ゲーム、VRゲームだった。このゲームは瞬く間に世界に広まり、たった1年ですでに世界はVRゲームなしにはいられない! と言っても過言ではないくらいの影響を受けていた。
当然、俺もそのVRゲームの虜である。
そんなVRゲームでも頭一つ抜けているのがこの、今俺が手に持っているソフト。
ゲームの種類で言うならVRMMOである。
一応説明して置くがMMOとは冒険中に他のプレイヤーと遭遇するオンラインゲームの事で、代表的なゲームはナグナロクオンラインなのである。
販売当日で売り切れになる程売れまくったVRゲームと昔から馴染みのあるMMOのゲームの相性はまさに神がかっていた。
だが、今この手にしているVRMMOは今まで俺がしてきたどのVRMMOのゲームとも次元が違った。
え? なんで知っているのか? それは俺がこのゲームのβテスターだったからだ。
超超高倍率と呼ばれた狭き門を見事通過することに成功した俺は、βテスターとしてこのゲームをした期間はたった一週間だけだった。
けど、その一週間だけでも俺はこのゲームの凄さを身に染みるほど肌で感じた。
そのゲームの名は
『ユグドラシル・オンライン』
俺は月にニ回買い出しに行く。まぁ買い出しと言っても気になるゲームとお菓子を買いに行くだけだけどな…
そんな感じで買い出しにいった店の正面にあるテレビ、そこで流れていたユグドラシル・オンラインのCMがこのゲームとの出会いだった。
そして、一週間のβテスター期間を終えて、ついに一ヶ月がたった。
まだかまだかと待つ事、一ヶ月! ついに、ついに全国販売が始まったのだ。
そして俺は今!再びこのゲームを手に入れたのだ!
「お兄ちゃん行ってくるよー」
「おーう」
心の中では喜びを感じまくりながらもニ階から妹にいつも通りの返事を返すと俺は妹が家を出ていくのを待った。
数秒後、バタン! と言う音が聞こえてくると俺はカセットが入っている小包をゆっくりとベッドの上に置くとすぐに部屋を出た。
階段を物凄い勢いで降りると俺はまずトイレに直行した。
VRゲームの本体、ベリアンには現実世界の体の容態を計測する機能が付いている。
そのため、腹痛などによりそれがひどくなると強制シャットダウンもあり得るため、そう言ったことは事前に防ぐのが当たり前なのだ。
トイレを後にした俺は次に風呂に直行した。
軽くシャワーをあびて出る。サッパリした俺が次に向かったのはリビングと思わせながらのリビングとつながっている台所、つまりダイニングキッチンである。
台所の棚からカップ麺とポットを準備するとそれを持ってポットから湯が溢れないように慎重かつ素早く階段を登り、自分の部屋に戻った。
机にカップ麺を準備、そこに湯を注ぎ、待つこと三分。俺はすぐに蓋をあけると一瞬でカップ麺を食べ終えると服を脱ぎ、カセットと一緒に入っている黒色の服を着る。
そして頭に金属製のリング、VRゲームの本体、ベリアンをつけるとそのままベットの上に置いてあるカセットの前で正座をして約四時間待った。
長い長い、本当に長い四時間だった。これ程までに時間が長いと感じたのは初めての経験だった。
そう心で呟くと同時にピピピピッ! と午後四時を知らせる音が鳴った。
ついにユグドラシル・オンラインの一斉ゲーム開始時間を迎えたのだ。
俺はアラームを止めるとカセットをベリアンにつけ、ベットの上に仰向けで横になった。
「またあの世界に……俺は…」
俺は目を閉じ一言
「ゲームスタート」
その言葉と共に俺の意識は落ちた。
今回は読んで頂きありがとうございます!
まだ2話ではありますが沢山の人が読んで下さり誠に感動しております!
次回は日曜日か来週に出しますので是非読んで頂けたら幸いです!