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第52話 覗きは専売特許です!

「あんたにアニメを侮辱する資格なんてないんだからさ」


あの部室で柏木に言われたことを自室でセラフィは思い出していた。


確かに自分にアニメを侮辱する資格なんてない。

口から出た言葉たちも憶測や、信用性のないネットから仕入れたものだった。


「見てもないのに、侮辱するよはいけませんわよね…?」


自分の言ったことを悔やみ、見てもいないアニメを侮辱するとはいけないの思ったセラフィは、アニメを見ることにした。


ノートパソコンを開き、適当にアニメとセラフィは検索をかける。

すると、無数のアニメに関する情報が画面に映った。


「こ、こんなにありますの?アニメというのは」


適当なサイトに飛び、アニメの一覧を眺めてみると、セラフィの思った以上のアニメ作品のタイトルがそのサイトにはあった。


「これではどれを見てみればいいのか分かりませんわ」


一応、一番面白いアニメで再度検索をかけたのだが、ある掲示板サイトではこのアニメ、違う掲示板サイトではまた別のアニメが一番というふうに書いてある。


アニメでも個人の趣旨思考が異なれば、おのずと自分に合う作品。合わない作品が出てきてしまう。そうなると、どれが一番だとは一概に言えなくなってしまうだろう。


「誰かアニメに詳しい方に教えていただければいいのですけど……」


セラフィの頭には、一人の人物が浮かび上がった。

自分が思っている以上に慕わられていて、生きてきた中で唯一自分に興味を示さなかった人物。


「ありえませんわ……」


その人物が浮かび上がった事に関してなのか、その人物に教えてもらおうと思った事に関してなのかは分からないが、セラフィは声を漏らした。



体育。

それは、イケてる奴が楽しめて、イケてない奴が楽しめないという地獄の授業だと俺は思う。


春は体力テストがあって、イケてる奴イケてない奴と分かれることはなく、そのままの調子で夏休みを迎える。

しかし、夏休みが明けた今、現実はこれでもかと言うほど、俺に降り掛かってくる。


「バスケ楽しそうだなー」


体育館の隅っこで俺はそう呟いた。


俺の目に映るのは、楽しそうにバスケットボールをしている数人の男子たちだ。

シュートが決まるたびに喜び合い、ミスをすれば笑いながら何やってるんだよとツッコム。

青春がそこにはあった。


「だったら混ざればいいだろ?」


隣で智和が言う。


そうは言うけどな?あの中に入っていくのはきついものがあるぜ?


「身長もあるし、運動神経もよさそうなお前ならすぐ入れてもらえるだろ」


「俺にあのイケイケな連中と対話できるスキルは持ち合わせてねぇよ」


「スキル人見知りだもんな陽向は」


「るせー。つか、なんでお前こそここにいるだよ智和」


俺みたいなイケてない奴と居るより、人に合わせることにおいてはピカイチと言っていいほどの智和(イケてる奴)がここにいるのは不思議な話だ。

が浜さんよろしく、やっは〇ー!と言いながらバスケやりそうなもんなのに。


「バスケ嫌いなのか?」


もしかしたら、バスケを嫌いなのかもしれない。

中学時代に、天才5人集団+1の奇跡みたいな世代にボッコボコにやられたのがトラウマとして残っているのかも。


「いんや、バスケは嫌いじゃねーぞ。スポーツ全般は大好きだ。あと、可愛い女の子も大好きだ」


「どうでもいいわ。……だったらなんでやってこねぇんだよ」


「あいつらとバスケしてるより、陽向と駄弁ってる方が楽しそうだなと思ったからだよ」


「コッチなのか?」


え?なにそれ怖い!

普段何気なく会話してた親友智和がまさかのコッチの人だったなんて!


「ちげぇよ!」


「え?じゃあなに?さり気なくアピールしてたの?ごめんなさい。俺は二次元美少女にしか興味がねぇんだ」


「告白でもねぇよ!?」


なんだ。違うのか。

そうなのかと思ってドキッとしちゃったじゃねーかよ。

なんでドキッとしてんだよ!


「おいどうした!?壁に頭なんかぶつけて!」


「俺はコッチじゃない……俺はコッチじゃない……俺は二次元美少女が大好きだ……俺は二次元美少女が大好きだ……」


「おい?陽向?」


「ふぅ。大丈夫だ。俺は二次元美少女が大好きだと言うのが再認識できた」


「おう……そうか」


「それは、それで大丈夫じゃないですよ陽向さん」


「るせーよ。これがいつも通りなんだよ霧咲って……え?」


振り向くとそこには、ひょっこりと通気口から顔を覗かせる霧咲がそこにいた。


「え?なんでいるの?」


確かに今日は、霧咲のいるクラスと俺らのクラスで合同の体育のはずだが、男子女子で分かれていて、第二体育館にいるはずの霧咲がここにはいないはずだ。


「何言ってるんですか〜覗きに決まってるじゃないですか〜」


まるで、当たり前と言う風に、馬鹿なんですか?と言ってるように霧咲は言った。

あっれー?おっかしいなー?

俺が間違ってるのかなー?


「いやいやおかしいだろ!女の子が男子の方を除くなんて」


「何もおかしくないですよ!覗きは専売特許です!!それに、この世界には、裸の3次元の女の子よりも服を着ている二次元の女の子の方がいいって言うおかしな人よりはおかしくありません!」


うん。その、おかしな人って言うのは、誰のことを言ってるのかなー?

それと、覗きは男子の専売特許だと思うぞ。


「き、霧咲さん!?」


隣で智和が奇妙な声を上げた。

まぁ、当然驚くよな。


「やべー近くで見るとより一層可愛い!」


そっちか。


「陽向さん。この方は?」


「あぁ。そういやなんやかんやで初対面か。こいつは俺の友達の」


「え!?友達!?」


おい。


「あ、すみません。続けていですよ」


「続けられるか!俺だって友達の1人や智和くらいいんだよっ!」


「おい陽向。それは俺一人しか友達が居ないって言ってることと同じだぞ?」


しょうがねーだろ!

智和くらいしか気軽に話せる友達がいないんだよ!


「で、こいつは俺の友達の関智和。俺と違って人見知りとかしないから気軽に」


「ども!陽向の友達の智和って言います!」


早いな!


この後、智和は趣味に好きな物に、タイプにとマシンガントークで自己紹介をしていった。

俺には決してできない芸当だった。


「面白い方ですね!私は霧咲夢希って言います!好きな食べ物は陽向さんです!」


「好きな食べ物ってなんだよ。俺は人だぞ?」


「だからこそですよ!」


「こえーよ!」


怖い!やっぱり霧咲怖い!


「ははっ。霧咲さんって結構グイグイ行く人なんだな」


笑ってないで霧咲をどうにかしてくれ!智和!



「で、なんで霧咲はその、覗きに来たんだ?」


「スポーツをしている陽向さんを見に来ようと思ったんですけど、やってないんですね?」


「まぁ、ちょっとな」


イケイケ連中に話しかけられないからバスケをやってないなんて言えるはずがねぇ!


「霧咲はいいのか?女子の方でもなにかスポーツやってるだろ?」


「こっちもバスケットをやってますけど、私は身体を動かすよりはスポーツしている陽向さんを見ている方が好きなのでこっちに来ました。陽向さんはなにもやってなかったですけど」


「なんか、悪いな」


しょんぼりとされるとなぜだか悪い気持ちになってしまう。

覗かれてる立場なのに。


「でも良かったです!こうして陽向さんのお友達にもお話できたので!それに、体操着姿の陽向さんを見られたので!」


「着てるのはクラTだけどな」


6月のスポーツ大会の時に作ったクラTを今の俺は着ていた。

元から来ているシャツだと汗をかいた時に困るし、学校指定のやつはダサいしでクラTの着用が認められてるからクラTを着たって感じだ。

まぁ、結局汗をかいてないんだけどね!


「霧咲はちゃんと学校指定のシャツ着てるんだな」


「はい!これだと汗をかいた時に、透けブラがしやすいので。陽向さんに覗かれても安心です」


「透けブラで安心できるってなんなんだよ」


霧咲の思考回路はよくわかんねーなー。

智和はなぜか妙に頷いてるし。


「でも結局汗をかいてないんですけどね」


「いちいち俺と似てるな」


理由はどうであれ、妙に霧咲と似ていた。


「珍しいな髪留めなんて」


よく霧咲を観察すると、前髪を髪留めで留めていた。


「これは、運動する時前髪が邪魔になるかな?と思って付けたんですよ。これも結局意味なかったですけど」


「でも髪留め使ってる霧咲さんも可愛いよ!!」


「本当ですか?ありがとうござます!!」


さすが智和。すかさず褒めるところとか見習わなきゃな。

でも待て。3次元の女の子を褒める機会なんてないな……。

見習わなくていーや。


「さてと、陽向さん」


「ん?」


「第二体育館。女子がバスケットをしているところを覗きに行きましょう!」


「んん??」


「バスケットをしている篠原さんを見れますよ!」


「陽向……」


肩に手を置き、目が燃えてる智和が言う。


「運動している篠原さんとセラフィさんを見に行こう……!」

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