表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/120

第38話 奴隷orペット

霧咲「私のターンですよっ!」

「なんで何も言わないんですかっ!?」


「いや、だってお前、3次元(笑)の女の子のパンツを穿いてるかどうかを想像するなんて……はんっ」


「鼻で笑わないでくださいよ!はふ~。分かりました。分かりましたよ陽向さん」


一つ溜息を吐いたあと、霧咲は意を決したように、覚悟を決めたような顔つきになった。

その表情は普段の霧咲の行動からすれば考えられないほど真剣そのものだった。


「陽向さん……」


そして、真剣な顔つきからは想像出来なかったほどの甘い吐息で俺の名前を呼ぶ。


少し、真剣な顔付きから柔らかい表情になり、霧咲はその濡れている瞳で俺を見る。いや、ここは見つめると言った方が適切かもしれない。


「どちらの手でも構いません。手を貸していただいてもいいですか?」


「…あ、あぁ」


なぜ手を貸さないといけないのか分からないが、霧咲の表情を見ていたら反応的に手を差し出してしまった。


霧咲は、差し出した俺の右手を自身の両手でそっと掴むと、自分の方へと誘う。そして……


「って!何をやってんだよ!霧咲!!」


「あぁん♡あ、暴れないでください陽向さん!これじゃあ確かめられないですよ!」


あろうことか、自分の浴衣の中。つまり、パンツを触らせようとしてきた。この際、パンツを穿いてるのかさだかじゃないから、実際は何を触らせようとしたのかは考えないようにしよう。

良かった!!俺の右手は無事だった!


いや、まだ無事じゃない!


普段は気弱で力がないのに変なタイミング、ここぞ言うときに限って力がアップする二次元美少女みたいに、霧咲もまた、どこにそんな力があるのか分からない異様な力で俺の右手を離さない。


「離せっ!離すんだ!霧咲ぃ!」


「いえ!ダメです!私がパンツを穿いてるかどうか陽向さんが確認するまでは絶対にこの手を離しません!」


「そんな窮地の時に親友がしゃべるセリフみたいなことをカッコよく言ってもだな!言ってる内容は残念すぎるぞ!?」


「なにが残念なんですか!女の子のパンツ……いえ!もしかしたらそれ以上の宝物に触れられるかもしれないんですよ!?」


「なおさら触りたくねぇ!何が悲しくて3次元の女の子の宝物を触らなくちゃいけねーんだ!」


「そんなことを言っちゃう、思っちゃってる陽向さんは重症です!ここはとりあえず触っておきましょう!そして、3次元に帰還して私とアヘ顔ダブルピースの撮影会をしましょう!」


「なんてことを言ってんだよお前は!公の場で!」


「さぁ!触りましょう!弄びましょう!挿入しちゃいましょう!」


「いい加減その口を閉じろォオオ!!!」


さっきから周りのヒソヒソ声とかがやばいんだよっ!

廊下を一人で歩いているラノベ主人公が女子たちから遠巻きにヒソヒソと何か囁かれてる気分だ!いや、そんなにいい状態じゃないかもな今の状態は、老若男女にヒソヒソされてるからな!やったぜ!ラノベ主人公を超えたぜ俺は!こんなんで超えたくねーよ!


ていうか、やばい!まじやばい!

霧咲の両手が俺の右手を離さねぇ!

これはまじでやばいやつだ!

このままじゃ、ほんとうに霧咲のパンツを触ることになる!いや、パンツだけならまだいい。問題は穿いてるのかどうかだ!


こんな状態を続けていたら埒があかねぇし、時間が……ん?時間?


ここで俺は閃いた。いや、かっこよく言うと記憶を呼び起こした。どうやら俺はラノベ主人公並にはすごいのかもしれない。


「お、おい?霧咲?」


「なんですか?陽向さん。決心がついたんですか?」


「いや、決心はつかねぇが……いいのか?」


「何がですか?」


両手の力は変わらないまま、霧咲は聞いてくる。どうやらこいつは忘れているらしい。よし、俺がさっき思い出した事を言ってやろう。別に前世のことを思い出したわけじゃねーからな。全然関係ない話だが、あのクールで第一話で主人公にキスした女の子いいよな!俺もあんな二次元美少女に間違いでキスされたいぜ!


「時間いいのか?」


「……じかん?」


こてんと小首を傾げ、俺を見る霧咲。瞬間、ハットした顔になり、


「思い……出した…!」


と、どこかの主人公みたいなことを言い放った。


そして、俺の右手を強く掴んでいた両手を霧咲は離した。良かった。ようやく開放されたぜ。


「あ、危ないところでした……!もう少しで、夏祭りで作る陽向さんとの思い出を台無しに……いやでも、これはこれで……ううん!陽向さんとお祭りを回りたい!ありがとうございます!陽向さん!思い出しましたよ大事なことを!」


「おう。それは良かったな」


俺にとっては、ちっとも良くないなってことを今思い出した。


「こうしちゃいられません!陽向さん!さぁ行きましょう!私たちには時間がないんですっ!」


「分かった。分かったから引っ張るなって」


霧咲に腕を引かれて、出店で溢れている神道に向かう。今度は女の子らしい腕力で引かれながら。



「霧咲は何がしたいんだ?」


出店を右に左にと眺めながら、俺たちは歩いていた。


鬱陶しく俺の腕に抱きついている霧咲は満面の笑みだ。え?どうして腕に霧咲が抱きついてるかって?それぐらいは許容しないとあとが怖いじゃないか。


「私はこのままでいいですよ。今が一番幸せです」


「さいですか……」


なんて言うか、ぶれねぇなぁ霧咲も。

でも、せっかくのお祭りだ。なにかした方が良いだろう。決して腕に抱きつかれているのが恥ずかしいとかじゃないからな。


「食べ物でもいいぞ。何が食いたい?」


さっき着ている浴衣をいろいろ確認したら、俺の財布が入ってるのを確認した。中身もちょうど覚えていた所持金の額と一致したし、遠慮なしに金を使うことが出来る。

霧咲を含めたあいつらの分のゲーム代や食べ物代を出すのはなんてことない。


「食べ物ですか?そうですねぇ……。あっ、ポッキーが食べたいです!」


「ポッキー?」


「はい!ポッキーです!」


珍しいな。ポッキーを祭りの会場で食べたいと思うなんて。まぁうまいからなポッキー。


「いいけど、あっかなーポッキー。パット見た限りなさそうなんだが」


クレープ屋にたこ焼き屋にわたあめ屋にと定番の屋台は並んでいるが、やっぱりというかポッキーを売ってる屋台が見当たらない。


「つか、なんでポッキーなんだ?」


ポッキーを売ってる屋台を探すあいだ、間を繋ぐように俺はなんてことなしに聞いた。


「ポッキーゲームがしたくて!あ、知ってますか?ポッキーゲーム!ポッキーゲームと言うのはですね?男女がお互いポッキーの端と端を」


「うん!ポッキー売ってる屋台なさそうだな!残念だが諦めてくれ霧咲!」


うん!辺りをザックリと見渡したがポッキーを売ってる屋台なんてないな!いやー残念だ!ほんとうに残念だ。


「そうですか……残念です…」


おい。ほんとうに残念そうな顔をしないでくれよ霧咲。なんか変な空気になるじゃないかよ。


「他に何かないか?食べ物でも、やりたい物でもいいんだけど」


空気を変えるべく俺は話題を提供する。

なんで俺が気を使わなくちゃいけねーんだよ!


「他に……逆に陽向さんはやりたい事とかないんですか?」


「え、俺?」


予想だにしてない返答に一瞬言葉が詰まった。


やりたい事。やりたい事かぁ。

まぁ、祭りと言ったら二次元美少女と射的に、二次元美少女と型抜きに、二次元美少女とくじ引きに、二次元美少女と……etc


「あっ……」


俺がやりたい事を考えていると、不意に霧咲が小さな声を漏らし、立ち止まった。

視線の先を追ってみると、金魚すくいの屋台がそこにあった。


「金魚すくいやりたいのか?」


「あ、いえ…………はい」


俯きながら、首を縦にこくんと頷かせた。

恥ずかしいのか、顔を見せようとしない。


「どうした?」


「いえ、子供っぽいと笑われると思いまして」


「恥ずかしくねーだろ。金魚すくいなんてものは何歳になってもやるものなんだよ」


どんな趣味を持っていたとしても、どんなことをやりたいと思っていたとしても、俺はそれを恥ずかしいとは一部を除いて思わない。人それぞれ違うわけだし、俺は自分の趣味を恥ずかしいと思ったこともないしな。


「ほら。やりに行こうぜ金魚すくい。なんなら勝負しようぜ!」


「は、はい!」


無邪気な子供みたいに霧咲は笑った。

こんな純粋な笑顔を出来るというのに、中身があれなんだよな。


「バBa……お姉さん1回づつ」


金魚すくいの出店の店番をしていると思われるババアもとい、お姉さんに俺と霧咲二人分のお金を渡す。すげー睨まれた気がするが気のせ


「今、ババアって言おうとしたよな?クソ坊主」


「…………い、言うわけないじゃないですか。お姉さん」


……どうやら気のせいじゃ無かったらしい。

鬼の形相で睨みながらお釣りを渡してきたぞこのお姉さん。


「失礼ですよ陽向さん。こんなに若い人をそんな呼び方するなんて。どう見みても20代じゃないですか」


「おっ。分かってるな彼女さん。おまけだもう一枚ポイをやるよ」


「か、彼女だなんて……私は愛人とか浮気相手で十分……ですよ」


俺がお姉さんにビクビクと怯えているあいだに、お姉さんと霧咲とのあいだで何か会話があったのか、霧咲が真っ赤になりながら俯いていた。

そんな霧咲を見てお姉さんはニシシと歳に合わない笑いか……んん。年相応の笑い方で笑っていた。


「あ、陽向さんいくらでした?私のぶ」


そんなことを言いながら、霧咲は巾着袋から財布を取り出そうとする。


「あん?要らねーよ。3次元とはいえ女の子に出させるわけにはいかねーって。つか、こんなんで遠慮なんかすんな」


いつどこで二次元美少女(あいつら)が見てるか分からねーからな。どういう時にでもカッコつけておかないと。


「ずるいです……陽向さんは」


「なにがだよ」


さっきとは違い若干頬を染めながら霧咲は言ってきた。何がずるんだ?


「よしとじゃあ、勝負すっか」


「はい!頑張ります!」


「せっかくだから負けた方には罰ゲームとにするか?」


「良いんですか!?」


良いんですか!?


「え、いや、なに?怖いんだけど」


「あ、すいません。テンションが上がってしまって」


「それはあれだよな?金魚すくいに対してだよな?」


罰ゲームに反応したわけじゃないですよね?霧咲さん?もし本当にそれに反応していたとしたら霧咲の接し方を考えなくちゃいけなくなるんですけど……いや、元から考えるべきだったな接し方。


「じゃあどうする?罰ゲームの内容。ここは定番の負けた方が勝った方の言う事を」


「そうですね、あれがいいです!私が負けたら私は陽向さんの奴隷になります!もし、私が勝ったら陽向さんのペットにしてください!」


「それは何が違うんだ?」


「えーとですね。奴隷というのは陽向さんの命令を文句を言うことなく全てをこなすことで、ペットと言うのは、陽向さんの命令をワンかニャーのどちらかの返事をしたあとに文句を言うことなく全てをこなすことです!」


「結局違いが分からねぇよ!」


ダメだついて行けねぇ!やっぱり霧咲はいろんな意味で凄すぎる!


「ダメ……ですか?」


「そんな可愛いく小首を傾げるのは他の男にやってやれ。泣いて喜ぶぞ」


二次元美少女Loveな俺でさえ可愛いと思ったんだ。他の男どもがこれを見たら卒倒するレベルだぞきっと。


「陽向さん以外には私の色々な仕草や表情は見せたくないですよ」


「お、おう。そうか」


言葉に詰まるようなことを言うなって。恥ずかしくなるだろうが。


「で、罰ゲームはさっきのでいいですか?」


「いいですかって俺に何の得も無いんだけど。むしろ損しかないんだけど」


霧咲の奴隷とかペットとか超いらないんですけど。


「ひどい!ひどいですよ陽向さん!私を奴隷orペットに出来るんですよ!?」


「そうだぞクソ坊主!こんな可愛い彼女をペット奴隷に出来るんだぞ!?私が男なら泣いて喜ぶな!あー私も奴隷(だんな)が欲しいぃ!!」


おい。さいごなんかひでぇこと言ってなかったか?このお姉さん。この人の旦那になる男の人が可愛そうだ。合掌。


「まぁ、この際なんでもいいわ。とりあえず今はその罰ゲーム内容にしておこう」


最悪、結果がどうであれ有耶無耶にしてしまおう。

一家に一匹霧咲なんて要らねーし。


「じゃあ号令は私がやってやろう。はじめ」


「なんで号令は覇気がないんだよ」


お姉さんの覇気のない号令で金魚すくい勝負が始まった。


「そういや、勝敗結果を決めてなかったけどどうする?数の差にするか?とれとも大きさか?」


「分かりやすいように数の差にしましょう!大きさや種類は関係なしで純粋に数の差で!」


「りょーかいだ」


なら、小さいやつを片っ端からすくって数を稼ごう作戦だな。出目金とか大きいのは無視だ無視。


「おい。彼女さん。もう一枚ポイをやろう。3枚重ねて使いな」


「良いんですか?ルール違反じゃ……」


「私は可愛い女の子の味方だから良いんだよ。頑張りなよ」


「は、はい。頑張ります!」


あの、聞こえてるんですけど。3枚重ねとか聞こえてるんですけど!

店のルール的には見逃すのはいいとしても俺からすれば見逃せないんですけど!


男として負けるわけにはいかねーからな。ここで不正を暴いてもいいんだが、それじゃカッコ悪い。良いだろう。多少のハンデくらい受けてやろうじゃないか!


ハハハ見せてやろう!二次元美少女(あいつら)と鍛えた俺の実力とやらを!

霧咲のターン回を1話で終わらせる気でいたんですけどね笑なんか長くなっちゃいました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ