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第33話 偶然、偶々じゃなく

「すげー」


俺は目の前に広がっている絶景に、ただただ見とれていた。絶景と二次元美少女たちは俺の心をときめかせる。浄化させてくれる。俺はそんなことを思っていた。


蒼く輝いている海。白い砂浜。雲一つない真っ青な青空に輝く太陽。これに金髪のお嬢様でもビキニ姿で砂浜に召喚できたら最高だな。


「どうですか?陽向くん」


しかし、残念なことに俺の近くにいて、召喚できそうな金髪のお嬢様は3次元しかいない。ちっ。


「……ちっ」


「なんで舌打ちをするんですか!?」


「あ〜悪いつい。綺麗だなと思ってさ」


「あ〜なるほどわかりましたよ。私は。どうせ、蒼く輝いている海に、白い砂浜、雲一つない真っ青な青空に輝く太陽。それに2次元の2次元!の、金髪お嬢様でも召喚できたら最高なのにな。とか思って、近くにいるのは3次元の私なので残念だ。とでも思ったのでしょ?」


「怖い!桃が怖い!」


「まぁでも任せてください!陽向くんの御要望通り、ちゃんとビキニ姿をお披露目しますからっ!」


「おー。そうか」


「素で返されると恥ずかしいですね」


ふん。3次元のビキニ姿をみたところで、は?って感じだ。ただただ、肉の塊に、面積の少ない布を付けてるだけじゃねーか。いつもと変わんねぇよ。ただ露出してるのが多いか少ないかの違いだけだ。


「それを普通の男の人は喜ぶと思うんですけどね」


「俺だって喜ぶぞ?プールに海に温泉回といった肌色回は」


「私が言っているのは3次元の話ですよ」


隣で桃がはぁと溜息をしたのが分かる。おいおい、こんな絶景があるのに溜息ってなんてやつだ。


「せっかく来…拉致されたし、海で遊ぶか」


「そうですね。元々そういう予定でしたし、霧咲さんたちが帰ってきたら海に移動しましょう」


「あいつらがいつ帰ってくるのかが謎だけどな」


変に行動力がある奴らだから、いつ帰ってくるのかがさっぱり分からねぇし見当もつかねぇ。まあそのうち帰ってくるとは思うけど。腹へった〜とか言って。


愛情♪友情♪まとめて発動♪


不意に曲が流れた。

どこかで聞いたことがある曲だ。

確か俺の携帯の着信音もこんな……いや、俺の携帯の着信音だこれ。ここまで何ら不思議なことは起きてない。うん。起きてない。ただ、俺の携帯が鳴っただけなんだから。ただ、だ。ただ、不思議なことがあった……


桃から俺の携帯の着信音(ロリ声声優キャラソン)が聞こえた。いや、もしかしたら最近桃もアニメにハマってきたから俺と同じ着信音にしただけかもしれない。


「はい?もしもし?」


そして桃は、赤くて、ケースで保護していて、ストラップをぶら下げている携帯をポケットから取り出し、電話に出た。


「って、ちょっと待てぇぇ!!!」


「なんですか?陽向くん。陽向くんは人が電話をしている時は静かにするという暗黙のルールを知らないのですか?」


「なんかなつかしいな!おい!つかそうじゃねーよ!それ、俺の携帯じゃねーか!」


「え?」


「なんでそこでキョトンとするんだ!?どっからどう見ても俺の携帯じゃねーか!」


ケース(二次元美少女のオレの嫁がプリントされてるやつ)と、ストラップ(オレの嫁)が付いていて、赤い色のその携帯まんま俺のじゃねーか!


「見間違えないで下さい!これは私のですよ?」


「嘘つけ!俺は知ってるんだぞ!?桃の携帯にはチョッ〇ーのストラップが付いていて、オレの嫁が付いてないということは!」


「…………気の所為ですよ」


「すげー目が泳いでんじゃねーか!いいから返せ!持ってきてくれたことには感謝するが、使用を許可した覚えはない!」


俺は抵抗する桃から無理矢理……なんかいやな言い方だな。桃から携帯を取り返し、持ち主として電話に出る。


「もしもし?」


『瀬尾!出るのが遅いぞ!』


電話に出ると、かけてきていたのは柏木だった。

なんか、やけに焦ってるな。息切れもしてるし、走りながらかけてるのか?


「わー悪い。色々あってな」


『いいか瀬尾?冷静に聞いてくれ』


俺がちょっかいをかけてくる桃の相手をしながら、だらだらと聞いていると、柏木は息切れをしながらも冷静に。そして、予想打にしてないことを言った。


『霧咲が誘拐された!』


気づくと俺は、部屋を飛び出し、目的地もわからないまま、走っていた。



柏木から聞いたこと、それは、霧咲が誘拐されたと言うことだ。


フルマラソンに挑戦しようと走っていた柏木が偶然にも霧咲がナンパと思われる行為をされていたところを目撃し、助けに入ろうとしたところで、誘拐されたらしい。


犯人は男二人組だという話だ。俺は走りながら、まだ切れてなかった電話で柏木から聞いた。柏木にどうしてフルマラソンにチャレンジしようと思ったのか聞きたい気持ちもあったが、今はなによりも霧咲だ。


大事な友人部の部員だし、なによりも霧咲がナンパ絡みで酷い目にあっているのはこれで2回目だ。まえは偶々偶然俺が助けられたが、今回は前回よりも度が超えて誘拐されてしまっている。


これがキッカケで3次元から離れてもらいたくはない。霧咲には。桃と柏木にも言えることだが。あいつらには3次元から逃げてもらいたくはない!さらなる恐怖をして、心が閉じる前に必ず助けてやる!偶然、偶々じゃなく、俺が助ける!



「まえは陽向くんは3次元の私たちのことなんかどうでもいいって言っていたのに……やっぱり陽向くんは助けてくれるんじゃないですか。……ずるいですよ陽向くん……」


陽向くんが飛び出して行った部屋で1人私はそう呟いた。


「どんどん好きになるじゃないですか。大好きです陽向くん」


思い人がいない部屋で私は、自分の気持ちを声に出していた。



「で、桃?霧咲の居場所が分かったっていうのは本当か!?」


無我夢中で走っていた俺に、携帯が鳴った。それは、桃からの吉報の連絡だった。


『はい。分かりましたよ。霧咲さんの居場所。もともとこの辺は別荘地なので高級車でない車が走っていると目立つんですよ』


「いろいろ言いたいことがあるが……それで?」


『篠原家の力をつかってヘリコプターからそういう車を探したのですが、使われなくなったホテルに向かっている車を見つけたんですよ!今の陽向くんはわりと近いところを走っていますね。ヘリコプターが誘導するのでついて行ってください!』


「分かった!」


さっきからパタパタパタパタうるせぇと思ってたけど、桃の家のヘリコプターなのか。さすが金持ちは探し方も金持ちらしいぜ。


ヘリコプターについて行けとか、わりと鬼畜なことを言うじゃないすか桃さん!まぁ楽勝だけどな!


『私も今から向かいます!いろいろ調べたのですが、その男二人組という人達は危険な人達見たいなので、警察が到着するまでは無理をしないでくださいね?陽向くん!』


「霧咲が無事ならな」


『やっぱり陽向くんは……』


「なんか言ったか?」


『いいえ何も言ってません!とりあえず無茶だけはしないでください!』


これが桃の最後の言葉だと思い、電話を切ろうと、耳から携帯を話そうとした瞬間、


『無事に霧咲さんを助けたらエッチをしましょうね陽向くん』


という桃の言葉を聞いた。


「…………」


たくっ、自分の身体は大切にしろってんだ。

俺は桃がまた変な事を言ったなと思いながら、ヘリコプターを追いかけた。



霧咲は男たちに、使われなくなったホテルへと連れ込まれていた。


「やべーめちゃくちゃいい女だな」


「まだ顔が幼いから高校生か?」


「んー!んー!」


口をガムテープで塞がれ、手はロープで縛られ、自由が効かなかった。


「なにそれ?ちょう興奮するんだけど」


「お前JK好きだもんな」


自分を見ながら、下品な会話を繰り広げる男たちに、霧咲は心の底から気持ち悪いと思っていた。身体を見てはニヤニヤと笑い、いやらしい目で視姦してくる。こんな目を、思い人である陽向は絶対にしない。それが、本当に興味がないことだとしても、陽向は絶対にしない。


「よしとじゃやるか」


「早速とかどんだけ欲求不満なんだよ」


男たちがハハハと笑いながら、身体を触ってくる。嫌だ、気持ち悪い。霧咲の感情は嫌悪に満ち溢れる。


「んー!んー!」


「ち、うるせーな」


「少し黙らせようぜ」


男たちは何処からとも無くナイフを取り出した。

そして、そのナイフを霧咲に見せつける。


「少し静かにしないと刺すぞ?」


「こういう風にさ」


そして、持っているナイフで、霧咲が来ている服をビリビリと破く。胸元からへそにかけて一直線に。


霧咲は服を破かれて、下着を露出した形になった。


霧咲を襲っていた感情は恥ずかしさよりも、屈辱と陽向のために買った服を破かれたという悔しさ。


異性には陽向にしか見せないとしていた下着姿をどこの誰とも分らない男たちに見せてしまったという屈辱感。涙が溢れた。


「うわ泣いちゃったよ」


「これはこれで興奮するな」


男たちはさらに下品な笑いをする。


霧咲は絶望と屈辱の中で、助けを求め続けた。


(陽向さん……!陽向さん!)


ガシャン!


「ハァ……ハァ……待たせたな霧咲ぃ……迎に来たぞ……」


「んー!」


願いは届いた。

恋愛要素が強くなっていくと思われます。

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