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第32話 強制合宿スタート!

「…………くん……」


「……た…………くん」


遠くから、俺を呼んでる声がする。


落ち着きのある、いい声だ。

このまま聞いていても心地いいだろう。


「陽向くん……!」


その、癒し効果もあるんじゃないかと思う心地のいい声が、だんだんと、大きくなる。


「陽向くん!」


そして、とてつもなく大きなものに変わった。


「んぇ?」


目を開けると、顔があった。

白く、モチモチとしてそうなほどの肌や、アイスブルーの瞳が。


一瞬、ほんの一瞬だけ、二次元美少女(あいつら)じゃないかと思うど、綺麗だった。けど、これは、この女の子は……






ーー3次元だ。


「ちょっと陽向くん!?どうして目を開けたあと、私の顔を見るなり目を閉じるんですか!?それも、すごく残念だ。みたいな顔して!」


「夢の世界になら、二次元美少女(あいつら)に会える、触れ合える、楽しめる。だから、行かせてくれ」


「行かせないですからね!?起きてくださいよ!もう、お昼近いですよ!」


「あ?昼?そんなわけないだろ?まだ深夜……」


ここで俺は気づく。

あれ?昼だと?

たしか、さっきまで深夜2時くらいだったはず……

なのにもう昼近いだと?

思いだそうにも、思い出せない。何か、俺の頭が思い出すなとでも警告しているみたいだ。


いろいろと、おかしいぞ。

俺は自分の家に居たはずだ。なのに、目の前には俺の顔を除くように俺を見ている桃がいる。


俺の家に桃がいる?なぜ?why?


それと、なんなんだ。今俺が置かれている状況は。


「説明してくれないか桃?この状況を」


「え?状況ですか?」


「あぁ状況だ。まずは、そうだな……いろいろ聞きたいことはあるんだが、なぜ俺は桃に膝枕をされている?」


「陽向くんにとって、目が覚めて、まず初めに聞きたいことが、膝枕なんですね」


「当たり前だ!何が辛くて、悲しくて、絶望して3次元の女の子なんかに膝枕をされなきゃいけねーんだ!」


「どれだけされたくないんですか!?」


「俺の後頭部はマイ枕と壁とか色んなものと、二次元美少女たちの膝にしか、触れないようになってるんだ。それなのに……なのに!」


「いいじゃないですか。2回目なんですし」


「へ?2回目?」


「はい。前にしましたよ?膝枕。私の部屋で」


桃の部屋で膝枕をした?

記憶にないんだけど。


「ハハハ。またまた、ご冗談を」


この俺が、俺の後頭部が、3次元の女の子の膝なんかに今回も合わせて2回も身を任せるわけないじゃないか!


「覚えてないんですか?」


「え?」


急に真剣な表情になる桃。

その真剣さに声が出なかった。


「あんなに、私(の膝)を激しく求めたのに!」


「嘘だッ!!!」


ついつい、ひぐらしの竜宮さんちのレナさんみたいな口調になってしまった。


俺が桃を求めた…………だと!?


ないないないないないないないないないないないないないない。ありえないって。俺が桃を求めるなんて。


しかも、桃の部屋には一回しか行ったことがないんだぞ?それもスープもらって寝て帰っただけっていう一回しか。そんな美少女ゲームみたいな展開はないって。


「嘘って言うんですか!?あんなに陽向くんは気持ちよさそうに(寝ていた)していたのに!?嫌がる私を無理矢理……」


「満更でもなかったって顔してんぞ。今」


その時のことを思い出しているのか、桃は頬を朱に染め、少し体を仰け反らせながら、人差し指を床の上でくるくると回している。


どう見ても、無理矢理されて嫌だった。という顔はしてない。


「え?いや、してませんよ!満更でもなかったっていう顔なんて!超嬉しくはありましたけどね!膝枕は!」


……おい。なんか本音みたいなのが聞こえたぞ?


「ていうか、それだと膝枕、は!前にもされたんだな俺」


「はい。しましたよ膝枕。まぁ今の会話の内容もあながち、全部が全部嘘ってわけでもないんですけどね」


(強引に膝枕を強要されたのは事実ですしね。まぁ嬉しかったんですけど)


「え?」


「冗談ですよ」


なんだ冗談か。もし、ほんとに桃の言う通り、桃を俺が無理矢理襲っていたりしたらどうしようかと思ったぜ。3次元の女の子を無理矢理襲ったなんていうレッテルが貼られるくらいなら、くっ殺せ!と女騎士みたいに懇願するところだった。


「で、次にこの状況につて聞きたいんだが、どうしてお前は俺の部屋にいる?」


膝枕をされているという事実の次に重要なこと。

それは、桃が俺の部屋にいるということだ。

これは、聞かなければならないことだろう。


ことによっては、不法侵入で制服を着たお兄さん&お姉さんに協力依頼をしなければならない。


「違いますよ陽向くん。私が陽向くんのお部屋にいるのではなく、陽向くんが、私の部屋、私の別荘にいるんですよ!」


…………。


頭が、脳がついて行かなかった。

俺が桃の別荘にいる?


「わんもあぷりーず?」


「だからですね?陽向くんが私の別荘にいるんですよ!」


「…………。ぱどぅん?」


「そんなに現実を受け入れられないんですか?」


いや、受け入れるのも何も、なにがどうしてこうなったのかが分かんねーんだよ!


起きたら、桃がいて、俺が桃の別荘に居るってなんでなんだよ!


「え?つか、どうやって俺はここに来たんだ?記憶がまったくないんだけど」


厳密に言うと、昨日の深夜あたりからの記憶が。


「あー。少し、効果が強すぎましたね。眠らせるだけのつもりだったのですが」


「へ?」


「そんなマヌケな顔をしないでください!抱きしめたくなります!」


「やめてくれ!俺は清らかな体のままいたいんだ!」


「大丈夫ですよ!ちゃんとお風呂には入っておきましたので!」


「何一つ大丈夫じゃねぇ!」


怖い!霧咲ウイルス怖い!

桃がだんだんと霧咲みたいになってて怖い!

だれか!だれか!

このバイオハザードを止めてくれっ!


「ていうのは0.2割は冗談です」


「0.2割!?」


やばい!ほぼ百%本気だ!

俺の清らかな体が汚される!


「まぁ、ほんとうに冗談は置いておくとしまして、本当に覚えてないんですか?」


「あぁ、昨日からの記憶がねぇ。どうやって俺はここに来たんだ?」


「あーそれはですね?私が陽向くんを連れてきたのでここに陽向くんはいるんですよ!」


「どうやって?」


「コレの力で☆」


そう言って桃は、指で金を連想させる形を作った。

てへぺろとでも言わんばかりの顔で。


「コレの力って……お嬢様みたいだ……」


「お嬢様ですよ!私は!」


忘れていたが、そうだった。桃はリアルお嬢様だった。


「いやー大変だったんですよ?眠ってしまった陽向くんを私の膝に乗せるのは」


「それ、最後の方じゃね!?」


今この状況がまさにそうだ。

桃の膝の上に、俺が寝ている。

桃が頑張ったというのは最後だけだろ。


「お前の膝の上に乗る前はどうやって俺は場所を移動したんだ?」


懇切丁寧に質問する。俺が聞きたいのはこれだ。


「そはれはですね。黒服たちに頼んだんですよ。陽向くんを眠らせて、車に乗せて、この部屋に連れてくるまでは」


「なるほどな」


黒服たちというと、よくTVとかで見るグラサンをかけた外国人みたいなものだろうか。リアルお嬢様の桃になら黒服さんたちを動かすなんて容易いんだろうな。


「って!陽向くん!?どうしたんですか!?鳥肌がすごいですよ!?汗もだいぶ出てるみたいですし!」


「いや、なんか黒服さんたちのことを思い出そうとしたら勝手に」


なんだろう。脳がこれ以上は思い出すな。思い出そうとするなと警告している。俺の身に何があったというんだ?まぁ、脳がやめろって言ってるんだ。鳥肌も冷や汗もやばいし、思い出すのはやめよう。


「俺と桃以外には誰もいないのか?ここには」


「あっ、いますよ?でも今はジャンケンに勝ったのでこの場には私と陽向くんしかいないですけど」


勝因はパーです!と嬉しそうに語る桃。

ジャンケン?どうしてジャンケンをしたのかは分からないが、どうして俺が、他に誰かいないのか?と聞いたのは柏木と霧咲がいると思ったからだ。


「霧咲さんはジャンケンに負けたあと、「まだ夜の部があります!それまでに新しい下着を買ってきます!」と言って出て行きましたし、柏木さんは「かっしーちょっとお外走ってくる!」と言って出ていきました」


なんだ。やっぱりいるじゃないか。柏木と霧咲。

桃のことだから、呼んでるとは思ったけど。


つかな霧咲?夜の部ってなんだ?あと柏木。けっこう気に入ってんのな。ニックネーム。


「つかなんで、別荘なんかに連れてきたんだよ。俺夏休み予定たくさんあるんだけど」


積み本消化に、二次元美少女たちをみてhshsハァハァしないといけないのに。


やっと、体に力が入ってきた俺は桃の膝の上から離脱し、窓際へと向かう。桃、俺が起き上がろうとした時に、少し抵抗すんのやめろ。


「合宿をしようかと思いまして」


窓際にたった俺に桃は言う。

窓はカーテンが掛かっていて外は見えない。


「合宿?俺抜きでやれば?って言ったじゃねーか」


「陽向くんがいないとダメなんですよ。この部活は。陽向くんが部長なんですから」


「お、おう」


少し照れてしまった。そんな風に言われたのは初めてだったからかもしれない。


「で、連れてこられてきたこの場所はどこなんだ?別荘って言うぐらいだから俺たちが住んでる町ってわけじゃないと思うけど」


カーテンに手を掛けながら、聞く。

カーテンを開けたらスーパーとかいやだなと思いつつ。


「ここはですね……」


桃が場所を言い切る前にカーテンを開ける。


そこには……


「海ですよ!海!」


絶景が広がっていた。



「はぁ……。どうしてあそこでチョキを出さなかったのでしょう?」


霧咲夢希はとぼとぼと歩きながら、負けてしまった自分の右手を見つめていた。恋する乙女のように。

実際には恋をしているので、ようには要らないかもしれない。


「でも、チョキはアへ顔?ダブルピース?のポーズの時に使いたいので、あまり出したくはなかったんですよね」


ネットで仕入れた変な知識のせいで、ジャンケンに負けてしまった事を霧咲夢希は知らない。

勉強熱心のために起きた不幸だろう。


「アへ顔?ダブルピース?は好きな人に写真で見せるといいらしいですからね。効果は抜群だ!と書いてありました。今度やってみましょう!」


変な知識で変な事をやろうとしている暴走機関車霧咲夢希を止める者は、この場には誰もいなかった。


「それにしても、合宿なんて初めてなので楽しみです!行き先くらいしか決めてなかったので、何かをするのかは決めてないですけど、陽向さんがいるだけで満足です!」


独り言としては、やや大き過ぎる声で叫ぶ霧咲夢希。

陽向への熱い思いが伝わる。


「まずは、今日の夜の部です!お昼は篠原さんに譲っちゃいましたけど、夜の部は頑張ります!そのためにもいい下着を買わないと!」


別荘地が並ぶこの界隈なら、よりいい下着を売っていると考えた霧咲夢希は陽向のために、下着を買いに行く。たとえ、陽向本人が、3次元の下着なんかに興味がなくても。


「ふふ。夜が楽しみです!」


今日の夜のことを少し想像しただけで、笑みがこぼれる。楽しいことが待っている。それを考えただけでもニヤケが収まらない。


だが、それも


「ねぇお嬢さん♪」


「俺らと遊ぼ♪」


その時までだった。


「なっ……なんですか?」


身体が強ばる。声がうわずる。

ただのナンパだと頭では分かっていても、身体は声は思うどうりに動いてくれない。


「おっカワイーあたりじゃん!」


「よっしゃ今からパコろーぜ!おいで、おいで!」


二人組の男たちは、近くに停めてある車に霧咲夢希を連れ込もうとする。霧咲は恐怖で身体を動かせず、男たちのされるがままになってしまう。


こんなにも霧咲が恐怖を感じてしまうのは春の一件のせいだろう。あの時の記憶がフラッシュバックし、体を動かせなくなる。


あの時は、偶然とはいえ、陽向が助けてくれた。

でも今は、陽向がいない。


(あの時からは私だって成長したんだ。陽向さんが居なくてもナンパくらい断れる!)


霧咲は勇気を振り絞り、ナンパを断ろうとした。


「あの……!用があるので離してください!」


霧咲は力一杯に勇気の限り言葉を言った。

だが、男たちがそんな一言で諦めるはずもない。


「いいからさ。ね?」


「早く終わるからさ!」


より一層、霧咲を誘い、車に連れ込もうとする。


「いい加減にしてください!!」


この時、霧咲の中で恐怖が勝り、無意識に男たちの内の一人を突き飛ばした。


ドンっと衝撃が走ったのか、男はよろける。


男はよろけから治ると、フーと息を吐き、霧咲に低い声で、脅すように言う。


「……お前何つきとばしてんの?」


「……え?」


「何調子こいてんだこのクソ女ッ!!今の超ォォオムカつくわーッ!!」


自分の車であろう車に、男は苛立ちを見せるように、ガンガンガンと蹴る。


霧咲は恐怖のどん底に落ちた。


「おいっ!めんどくせーからこいつ車に乗せちまおうぜ!」


「りょーかい」


恐怖で身体が動かせない、動かない霧咲は男たちのされるがままに車に乗せられる。


(助けて…………!陽向さん……!)


発進する車の中で、霧咲は助けを求めた。

気づいたら1日でPV1000人を超えるという珍事が起きてました。今までに無かった事なので、驚きと嬉しさとなぜ?という感情が渦巻いてます((((;゜Д゜))))

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