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第28話 鍋

ぐつぐつぐつ…。


野菜やら、肉やらがいい感じに焼ける?煮込む?音が部屋いっぱいに広がる。

それにともなってか、いい匂いも部屋いっぱいに広がってきた。

そして、俺の腹もいい感じになってきた。


「あー腹減った!食いてー!!」


鍋をやると、この待ち時間がもどかしい。

早く食べたいって言う欲求が増すばかりだ。


「もうちょっと待っててくださいね陽向くん。もう少しで煮込み終わりますから」


そういって桃は蓋を取り、中身を確認し、蓋を戻した。

まだ食えないのか…。


「陽向さん。お椀いいですか?」


「おう。悪いな霧咲。ごはんよそってもらって」


「いえいえ気にしないでください。食欲旺盛な男子高校生のご飯をよそうのは女子高生の役目ですから」


「そうなのか?ていうか、ごはんもいつの間にか用意してたんだな」


「はい。前に陽向さんは焼肉とか鍋をやるときはかならず白米は食べるというのを覚えていたので、あらかじめ用意しておきました」


「よく覚えてたな」


「私が陽向さん関連のことを忘れるはずないじゃないですか!」


「お、おう。それはすごいな」


なぜだか分からないが背筋に寒気が。


「瀬尾なんか飲む?」


「あっそうだな…コーラとかあるか?」


「私が口づけたコーラと、篠原の柔らかいで評判の唇が触れたコーラと、霧咲の可愛い唇ともしかしたら舌も触れたかもしれないコーラ。どれがいい?」


「どれもいらねぇ!!」


柏木のが一番まともなやつに聞こえた気もするけど、要は全部口つけたやつじゃねーかよ!


「むぅ。それはどういう意味ですか?陽向くん」


「そうですよ!陽向さん!」


「いや、だって、お前らがもうすでに飲んであるやつだろ?さすがにもらうわけにはいかないしさ。それにお前らだっていやだろ?俺と共有するのは」


「「全然かまいません!!」」


「うっ。そうか」


すごい迫力だな二人とも。


「でもいいよ。俺は別にコーラじゃなくてもい」


「なんなんですか!陽向くん!」


「そうですよ陽向さん!」


「「私のコーラが飲めないって言うんですか!?」」


「え~」


なにこの、俺の酒が飲めないのか!っていうのと同じ文句。

どうすればいいんだよ。


「よし瀬尾。間を取って私のを飲め。なに気にすんなって。ちょっと私の唾液も混じってるかもしれないけど毒じゃないからさ」


「いや、うん。マジ要らない」


「ハハ。冗談だって。…うん。冗談…」


勝手に落ち込んだ柏木とやかましく騒いでいる桃と霧咲をどうにかなだめながら、俺は鍋が早く煮込み終わるのを待った。


ただ鍋が出来上がるのを待ってただけでこの疲労感。ぱねぇよ。



「さっ出来ましたよ陽向くん。取り皿いいですか?」


「悪いな」


「気にしないでください。私が好きでやってることなんですから」


ニコニコしながら俺の分のおかずを取り皿に盛り付けてくれる桃。

なにがそんなに楽しんだか。

いやまぁ、楽しいのは分かる。これを二次元美少女たちとやれたらもっと最高だけど。


「失礼ですね陽向くんは。女の子3人と鍋を囲めてるんですよ?」


「三次元のな」


「む。なら三次元の女の子との鍋でも十分楽しめるということを霧咲さんが教えてあげますよ!」


「霧咲かよ」


うんまぁ。霧咲あたりなら強引なやり口で俺を楽しませようとさせるんだろうな。

でもな。最高ではないにしろ、十分楽しんでるからな俺は。


「任されては仕方ありませんね。一肌脱がせていただきます」


そういって、羽織っていたよくわからん羽織ものを脱ぐ霧咲。

まぁ暑いからな。6月に鍋ってのもなかなかだし。


桃に盛ってもらったおかずの肉をかじりつつ、霧咲が暴挙に出ないように牽制する。


「霧咲~どうでもいいけど、いま手にかけてあるT-シャツを脱いだ瞬間家から追い出すからな」


「放置、野外、ペットプレイ…ですか?」


「違うからな!?」


どう解釈したらそういう結論になるんだよ!

それと最後、ペットプレイってなんだ!

黄色のツインテールか!発想が!


桃さん?俺の趣味じゃないですからね?

だからごみを見るような目…って違う!チョ○パーのストラップを見てる!


「チョッ○ーみたいな行動をすればいいんでしょうか?」


いろいろ違うからな桃。

それ以上は考えなくていいからな?


「ふ~ふ~」


「ん?柏木って猫舌なのか?」


「あ、あぁそうなんだよ。ついさっきから」


おかずを口に放り込み頬張る柏木。

そして持っていた箸をテーブルに置き、両手をグーにした。

そしてそのまま箸を取ろうとする。が、両手をどちらともグーにしているため箸なんか全然もてない。

それでも何とか取ろうと必死になっている柏木。


「なぁ?何がしたいんだ?」


「うん?箸を持とうとしてるんだけど、なかなか持てなくてさ」


「そりゃお前、両手をグーなんかにしてたら持てるはずねーだろ」


「違うぞ瀬尾」


「なにが違うんだ?」


「これは猫の手だ」


「?」


「私は猫だぞ?」


そういって両手を胸の前にだし猫のまねのポーズをする柏木。


「何がしたくて言いたいんだお前は!!」


あれか?

ペットって言われて、猫になろうととでも思ったのかこいつは?

なんていうか、違うぞ柏木。こういろいろと。



「ふぅ。食った食った。ごちそうさま」


「ふふ。お粗末さまです陽向くん。よく食べましたね」


「そうか?男子高校生ならこれくらい普通じゃねーか?それよりもお前たちはちゃんと食えてたのか?俺の世話ばっかりやってってあんま食ってないように見えたけど」


俺の茶碗からごはんからなくなれば、黙っておかわりをよそってくれる霧咲しかり、同じくおかずがなくなれば黙って盛ってくれる桃しかり、冷蔵庫から飲み物やら食材を持ってきてくれたりする柏木しかり、こいつらは自分が食うよりも周りに気を使っていて食べてなかったと思う。同時に申し訳ないとも思った。


「気にしないでください。ちゃんと食べてましたから」


「そうですよ。それにお世話くらいさせてください」


「飯のことだからな?瀬尾」


「分かってるよ!」


こいつらが食ったって言うんだから大丈夫だろう。

もし食べてなくてもあとでカプ麺を食べさせればいいだろ。女の子に進めるもんじゃねーとも思うけど。


「さてとじゃ、片づけるか」


「あっ陽向さんはいいですよ?私たちでやっておくので先にお風呂にでも入っていてください」


「いやでも悪いし」


「大丈夫ですよ。陽向くんがあがったあとに随時お風呂に入るんで」


「そういう意味じゃねーんだけどな。でもまぁお言葉に甘えて任せようかな。悪いけど先に風呂入るな」


「はい。お風呂は沸いてあるのですぐに入れますから」


「さすが用意がいいな」


こいつらすぐにでも嫁に行けるんじゃねーの?っていうくらい気がきいてるな。

まっ俺の嫁も本気出せば何でもできるしな。いい勝負だろきっと。


なんか忘れてる気もするけど気のせいだろ。



「お風呂いただきました~」


「はいよ霧咲。新品のコーラだ。それでちょっとは涼め」


「陽向さんの使い捨てでもよかったんですけど」


「言い方があれだな」


コーラの使い捨てってなんだよ。


「これで全員あがりましたね。では寝床はどうしましょうか?」


「空いてる部屋があるからそこで頼む。布団もちょうど三つあるし」


「四人で三つはきつくない?」


「そうですね…でも大きいのは陽向さんだけですから大丈夫ですね」


「あの、俺はこの自分のベットで寝るんだけど」


「「「却下です」」」


「はい?」


このあとなんやかんや言われ、結局論破された俺は、こいつらと一緒に寝ることになった。

せめてもの救いだったのが、三つだと思っていた布団の数が実は四つだということが分かり、一人一つずつの布団で寝れるということだろう。四つだと分かった瞬間滅茶苦茶いやな顔をあいつらはしてたけど。


「じゃ電気消すぞ」


「おやすみなさい皆さん」


「おやすみなさい」


「おやす~」


電気を消し、目を閉じる。

しかしというかなんというか、眠気は来ない。

おかしいいな昨日今日で寝てないのに。

まっきっと気持ちが興奮してるからだろ。











































………ていうかこいつらナチュラルに泊まってね?


忘れてたのはこれかー!!

普通に泊めちまったじゃねーかよ!


ここまできたらもう、どうすることもできないし諦めるか。


そう思いながら、急に来た睡魔に身を委ねようとしたとき、隣に人の温もりを感じた。

夏休み編で一区切りつけようと思っています

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