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第25話 そうだ…バスローブを着よう

「…………」


よし、部屋に戻ろう……。


覗き穴からそっと目を離し、くるりとターンを決めて、レッツゴーマイルーム。


俺は何も見てないし、あれが柏木だとも思わないし、バスローブなんてものは知らない。


一歩、そして二歩目を踏み出したところで、


ピンポーン


と、インターホンが鳴る。


無視しろ俺。

今すぐマイルームに帰還するんだ。

罪悪感なんて感じるな。


……あれはきっと、新手の訪問販売だ。


心を強く持ち直し、マイルームへと帰還するための道をゆっくりと進む。


まさか、我が家で心を強くしないといけない時が来るとは思わなかった。


図書館で、『メールだにょん』という着信が来て、場がなんとも言えない雰囲気になった時以来の心の強さを今試されてる気がするぜ。


つか、あん時は図書館の受け付けの人とかに、注意とかされるのかと思ったけど、なんか、今笑ったり注意したら殺される!っていう雰囲気になってたんだよな。近くに不良とかが真剣な顔で本でも読んでたのか?


まぁ、その話はいいとして、とりあえずマイルームに帰還しよう。玄関の前には誰も居なかった。ピンポンダッシュをされたと桃たちには言おう。


「すいません、訪問販売なんですけど 」


それ言う!?


っとぶねー。

もうちょいで声に出すところだった。

思わず歩みを止めちまったぜ。


だが、今ので完全にあのバスロ……いや、白い服の人は柏木だと分かった。気だるそうに言う感じ、間違いない。愛想の悪い訪問販売なんてないと思うし。


「……居ない?いや、でも居るはずなんだけどな」


柏木の独り言が漏れる。

どうでもいいけど、このアパート音漏れ大丈夫か?


「まさか、居留守……?なら、ピッキングして、中の宝物(アニメグッズ)でも、2、3個拝借するか」


あはは。

嘘だよな?ピッキングなんてやらないし、出来ないですよね柏木さん?


「えーと、たしか、ここらへんに……あった、ピッキング用針金」


そう言うと、柏木はガチャガチャとドアノブの穴に向けて針金を通してドアを開けようとする。


「って、待てェェええ!!」


ガチャんと鍵が開いたのと同時に、俺がドアを開く。


柏木さん。貴女、ピッキングなんて出来るんですね。おかげで鍵を開ける手間が省けて、ドアを開けるのだけに集中出来ましたよ。


「なんだ、やっぱり居るじゃんか瀬尾。居留守されたのかと思ったぞ」


「いや、実際しようと思ってた」


「ん?なんで?」


「お前がそんな格好してるからだ」


俺が顎でそれと示し、柏木が自身の着ている服装を確認する。


「……?これのどこが変なんだ?」


まるで分からないとでもいった表情の柏木がそこにいた。頭には疑問符が浮かんでいてもおかしくないだろう。


「バスローブがおかしいってことに気づけぇぇえええ!!」


「はは、何をい言う?瀬尾。バスローブってのは湯上りに着ていても可笑しくない物なんだぞ?ていうか湯上りに着るものだ」


「湯上りにな!湯上りに!今はどう考えたって湯上りじゃねぇだろう!?」


「うん?まぁ確かにそうだな。でもな瀬尾。湯上りってさ汗かくじゃん?」


「まぁそうだな」


「その汗を拭き取る意味もあってバスローブを着るだろ?」


「そうなのか?バスローブなんて着たことねぇから分かんねぇぞ」


「まぁ、そういうもんなんだよ。……多分」


「たぶん?今多分って言ったな!?」


「言ってない。……だろ?」


「お、おう。言ってないからその、胸ぐらをつかむな」


「おー……すまんつい」


ついでやられちゃかなわねぇな。

柏木はやっぱり不良ということか。怖い怖い。


「で、話を戻すけど、ここに来るまでに私は汗をかいたんだ」


「うん。なんとなく予想がついたぞ。だからもう何も言うな。どこかのバカ○スでもそんなことがあった気がするぞ」


「友達とはいえ、会うのは異性の友達だ。私も女の子だし、身だしなみには気を遣うべきだろ?汗だくの状態で会うのは恥ずかしい」


「何も言うなって、言ったよな!?」


「そこで、たまたま、た・ま・た・ま、カバンに入っていたバスローブに着替えたんだ。すると、私の身体に付いていた汗はみるみるうちにバスローブに吸い取られて、汗だくという恥ずかしい姿じゃなく、こうして綺麗な私のまんまで瀬尾に会えたというわけだ」


「ツッコミどころがありすぎてなんも言えねぇ!!」


しかも、理由がほぼバ○テスじゃねーかよぉ!!

来る前に、読んだか、アニメを見てきたな柏木のやつ!


「心配するな。バカ○スだと電車の中でだが、私は来る途中の道で着替えたからな。周りには誰もいなかったし心配ない。バカテ○のお姉ちゃんほど変態じゃないから」


「お前はただの露出魔で、どっちにしろ変態だからなっ!?」


なんで、勝ち誇った顔で言われたのかは分からねぇけど、どっちにしろ柏木は変態だ!!


霧咲のウイルス汚染もここまで来たか……。


「まぁとにかく上がってくれ、その格好のままで玄関先に居られたんじゃかなわん」


「いや、待つんだ瀬尾」


「どうしてだ?」


いつになく、真剣な顔になる柏木。


「まだ、訪問販売をしてない」


「あっ、うちそういうのいいんで」


ガちゃんりんこ


ドアを閉めて何もなかったことに。


さーて、勉強!勉強!

それとアニメ鑑賞!アニメ鑑賞!っと。


「おい!瀬尾!」


ドアを閉めた俺に不服なのか、異議を申し立てる柏木。


「私はまだ新品だぞ!?」


「さっさっと中に入れえええ!!!」


人生初。1日に3回も女の子の口から新品という言葉を聞いた。


3次元の女の子から聞いても……はぁ。



「む。なんだ、私が最後か」


柏木を部屋に上がらせて、ようやく全員が揃ったところで、とりあえずひと休憩。寝不足に怒涛の3連チャンはきついぜ。


あと、ね?柏木さん?

なぜあなたもナチュラルに俺のベットに腰かけるんですか?


生活全般を任せている部屋は八畳ほどの広さがあるのだが、一部に人口が密集しすぎてませんか?皆さん?


あと、ちなみに、この状況をこっそりと智和に「ベットを3次元のやつらに占領された」という一言と、堂々と撮った写メを送ったら「死ね」という返信を頂きました。


「えーとじゃあ、どうする?」


この後の予定を全然決めてないので、聞いておく。

まぁ、勉強かアニメ鑑賞のどっちかだろうけど。


「そうですね。とりあえずは勉強のほうでいいんじゃないですか?」


「だね。まずは勉強してから、アニメ鑑賞でもいいと思います」


「じゃあ、私と瀬尾はアニメ鑑賞で」


「だな」


「え!?いつから役割分担みたいになってたんですか!?」


「嘘だって。じゃとりあえず皆で勉強するか」


「そういいながら、どうしてレコーダーの電源を入れたんですか?」


「手癖が悪くて」


「そこはいつものクセででいいですよ!」


わーわーギャーギャー言いながら(特に俺)も教科書をテーブルに広げ、勉強体勢に入る俺たち。


テーブルが小さいせいか、わりと密集している。

……暑苦しい。


「そこは喜んで下さいよ」


「なんでだよ。なにがいやで、こんな暑いのに密集せにゃならんのだ。それと霧咲。暑いからといって服を脱ぐなよ。今、冷房つけっから」


「合法的に見られるんですよ?」


「ますば恥じらいを持て霧咲よ」


「普通の男の子なら喜ぶと思うんですけど」


「ふっ俺をそこらの男子共と一緒にするなよ?俺は選ばれし人間だからな。たとえお前らが美少女でも3次元(笑)の女の子(笑)と触れ合ったくらいじゃ動じない」


「なんでしょう……ものすごくイラットしました」


「陽向さんを早く調教しないと……」


「選ばれし人間とか……厨二じゃん」


三者三様、それぞれの言葉を返す。


ここでひとつ言おう厨二病にならない男の子なんて多分いない。

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