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第21話 入ってみたらメイド喫茶

「カルボナーラ、パフェ専門店ねぇ……」


めちゃくちゃどストライクな店があったんだけど……。


立てかけてある看板には、カルボナーラ&パフェ専門店と書いてあった。他にもメニューはありますとも書いてある。


店の名前は『ストレイドッグ』。某ラノベの店を彷彿とさせる名前だ。まさか、ぱくりじゃねーよな?


ていうか、歩き出して5分と経ってないぞ?

なんだこの偶然は。


ファミレスを探しにいろいろ歩いて見てたら、まさかこんなにもベストな店があるとは。


「って書いてあるんだが、どうする?ここにするか?」


「いいですよ。どストライクなお店ですし。陽向くんこそここでいいんですか?」


「俺はいいよ。カルボナーラ以外にもなんかあるっぽいし。二人もいいか?」


「私は陽向さんのどストライクになりたいです!」


「パフェ……食いたい」


「よし、ここにすっか」


若干の不気味さはあるが、まずは入ってみよう。

二人の同意と一人のとんちんかんな返答も貰ったし。



カランコロン……ミシッ


と耳に小気味よい音を鳴らしながらドアをあけ中へと入る。ミシッと聞こえた気もするが老朽化かなんかしてるんだから仕方が無いだろう。……大丈夫なのか?


『お帰りなさいませ!お嬢様!ご主人…?様!』


中に入った途端、数名の3次元の女の子がお辞儀をしながら出迎えてくれた。


ご主人?となぜか綺麗に首を傾げて言ったのは店側の元からの仕様だと信じたい。


「お、おふ」


あまりこういう出迎えかたのされ方は慣れていないからか若干照れながら返事をする。


「もう陽向くん、なに照れてるんですか?」


悠然と立っている桃に指摘される。


お前はリアルお嬢様だから、慣れてるだろうけどな、俺みたいな一庶民は慣れてねーんだよ!!


「うわーメイド喫茶みたいなお出迎えですね!」


「これがリアルメイドか……会長〇メイド様を思い出させるな」


くそっ!霧咲も柏木もいたって冷静だった!!

え!?俺だけ!?照れたの!?


つか、ここ見た目はファミレスというか、カフェみたいな感じだったのに、まさか中がメイド喫茶みたいになっているとは。いや、メイド喫茶自体行ったことねーから、外見も内装も分かんないけど。



お好きな席へどうぞとメイドの格好をした3次元の女の子に言われ、店の奥の窓際のボックス席に座る。


「まさか、メイド喫茶とは思いませんでしたね」


「だな。もっと落ち着いた感じの店だと思ったんだけど」


「私はメイド喫茶なんて来たことないのでご指導よろしくおねがいしますね!陽向さん!」


「ん?俺もこれが初めてだけど?」


「瀬尾ほんとに?」


「あぁ。まず、3次元なんかに興味がないし、2次元のメイドとかにならバリバリあるんだが、3次元の女の子に会いにいくためにわざわざ行こうとも思わない。それに」


「「「それに?」」」


「人見知りだから楽しめないし、話せない」


「「「…………」」」


「切実、ですね」


「回転寿司とかタッチパネルじゃないと俺、注文とか出来ないタイプだから」


「回転寿司は多少大声ださないといけないですもんね」


「あれ、やなんだよなー。大きめな声出さないと聞こえないだろえし、伝わらないから。ファミレスならいけるんだけど」


「人見知りの陽向くんにはハードル高い場所ですねここは」


メイド喫茶って最初から分かっていたら入らねーのに。何が悲しくて3次元の女の子と絡まなきゃいけないんだ!


「で、何食べる?ってあらかた決まってるか」


「そうですね。私はこの店長代理の弟夫婦のよく娘が連れてくる友達のケンタくんもオススメ!って書いてあるカルボナーラにしますね」


「ほぼ店にタッチしてねーじゃねーか!あれか?一客としての意見なのか?それは」


「……そうだとは思いますよ。でもなんか娘さんのお父さんはオススメしてないですね。書いてあります」


「娘を持つ親としてはそういうもんだろ」


なんかこの煽り文句で弟夫婦の特にお父さんの複雑な気持ちが分かった気がする。


「柏木はパフェだけでいいのか?」


「んー。いや、その前になんか食うよ。そうだな……この、半年前に彼氏の浮気が真実なのかを確かめるために北海道に行ったきり帰ってこないバイトのゆとりちゃんもよく食べたそうにしてたハンバーグセットでも食おうかな」


「食べたそうにしてたかよっ!」


「瀬尾うるさいぞ?」


「あーすまん」


いや、ツッコミたいじゃん?

ていうかツッコミどころしかなかったじゃん?

食べたそうにしてたって、実際旨いのかは分かんないわけじゃん?

そして、ゆとりちゃんもすげーな。

彼氏の浮気を確かめるために北海道まで行くとは。すごい行動力だ。


「ちなみにその子はまだここをクビにはなってないっぽい」


「え?」


「ほらこれ」


柏木から渡されたメニューリストには料理の種類や数の他に、在籍するメイドの名前と顔写真が載ってあった。そこで確かにゆとりちゃんの名前があり、名前の下には長期休暇中と書いてあった。


寛大な店だな。半年も来ないバイトをクビにしないなんて。


「まじか、ここ」


「ここいいな。ここでバイトしよーかな。サボってもクビにならなそう」


「サボるの前提なんだな」


不良がメイド喫茶で働くってなかなかなシチュエーションじゃねーか。ざいもくざきくんも喜んじゃうよ。


「で、霧咲は俺が食うものを食べるんだけっけ?」


「はい!陽向さんが食べるものを食べます!」


「その言葉、俺とか俺みたいな男が女の子に言ったら引かれそうだな」


え?なにこいつ?キンモッて感じで。


「んと、じゃー何にすっかな」


メニューリストを開き、ざっとメニューを見る。


えーなになに、平日の毎朝七時半すぎに店の前を通る艶髪ツインテールのさゆちゃん(中学生)が……


「オムライスにするっ!!!」


「「「(ビクッ!!!)」」」


「瀬尾うるさい」


「いきなり大きな声を出さないて下さい陽向くん」


「あっ……♡」


「わ、悪い。ていうか霧咲?そこは何か言ってくれないと困るんだけど」


頬を赤くしてるけど、それはあれですよね?

びっくりしたからですよね?


「で、なんでオムライスなん、です、……あぁ〜」


「ロリコン」


「ロリコン?」


桃がメニューリストを見て悟り、柏木が罵倒し、霧咲がキョトンとする。


良かった一人、ロリコンのことを分かってないやつがいて。……何がいいんだよ。


「ち、違うぞお前ら。俺は今、猛烈にオムライスが食いたいだけなんだ!!」


「「…………」」


「ほ、ほんとだぞ?」


「「…………」」


「嘘は言ってない。嘘は」


「毎朝……」


「艶髪ツインテール……」


「うっ」


はは、ダメだこれは。逃れられねぇ。


「……しょうがないじゃないか」


「「え……?」」


「だって気になるじゃん!!」


「開き直った」


「開き直りましたね」


うるせー!!気になるんだからしょうがないじゃねーか!!さゆちゃん(中学生)さゆちゃん(中学生)さゆちゃん(中学生)さゆちゃん(中学生)さ…中学生最高!!


「と・に・か・く!俺はオムライスを頼むからな!霧咲もそれでいいか?」


「はいっ!私もオムライスで!!」


「よし!というわけだ桃、注文を頼む」


「そこは陽向くんがやって下さいよ」


「はは、何を言う?ファミレスならいざ知らず、ここはメイド喫茶だぞ?俺がちゃんと注文できるわけないだろ?」


「態度をデカくしてかっこ悪いこと言わないでください!はぁ、分かりました。私が注文しますから安心して下さい」


「さすが桃、頼りになるぜ!」


「こういう時だけ…まっいいんですけど陽向くんですし、あっすいません」


さすが桃、呼び出し機がなく、店員に話しかけなければ注文できない状態でこうも容易く店員に声をかけるとは。俺には絶対できないね☆


「カルボナーラと、ハンバーグセットとオムライスを2つ……」


さすがにあの煽り文句を言いながら頼まないか。

店員も何も言わない以上これでいいんだと思うけ……


「はい!元気良く時に可憐なメイドお手製カルボナーラとあの日食べたハンバーグセットの味を僕たちはまだ忘れないとオムライスお二つですね!かしこまりでーす!!」


注文を取り終えた3次元メイド(年増、実際は20前後だろう)がかろやかに去って行く。


え?なに?

メイド側が注文を取ったら取ったで、言う事あんの?メニューリストに書いてあるメニューの名前と煽り文句全然ちげー。つーかオムライスだけノーマルかよ!


普通にハンバーグセット気になるんですけど!!


「ふっ、あのハンか」


「俺もハンバーグにすれば良かったー」


「心配するな瀬尾。食べたいんなら一口くらい口移しで食べさせないこともない」


「めっちゃいらなくなったわ」


「なんだ?私の唇じゃ不満か?」


「なら私のをどうぞっ!!」


「そういうわけじゃねーから!」


柏木まで霧咲みたいなこと言い出してきたんだけど。霧咲だけで手一杯なのに柏木まで霧咲状態になったら収拾つかなくなるぞ。


「ん?どうした桃?リップなんか一生懸命ぬって乾燥してねーだろ今日」


「柔らかさには自信があるんですよ!」


「3人目……だとっ!?」


もう無理。お手上げだ。収拾つかない。



「こちらカルボナーラでーす。でこっちがよっと、ハンバーグですっと、で、これらがオムライスです」


談笑しながや料理が来るのを待っていると注文を取りに来た3次元メイドとは違う別のちょっとかったるそーな3次元メイドが料理を運んできた。


両手にオムライス、頭にハンバーグ、背中にカルボナーラを載せながら前かがみになって料理を運んできた時はびっくりした。つか、初めて見た。スペック高っ!!無駄に。


「えーと、オムライスにはケチャップで絵か文字を描けるんですけど何がいいですか?」


「なんでも描けるんですか?と聞いてくれ桃」


「それくらい自分で聞いてくださいよ。あの、なんでも描けるんですか?」


「えぇまぁ大半は」


ほほう。なら描いてもらうか。


「じゃあ……小〇梓犬耳ver.おねしゃす!!って伝えてくれ桃」


「いちいち私を介さないで下さい!あの、聞こえてたと思うんですけど…かけますか?」


「はい……えと、へんねこだっけ?」


3次元メイドは一人でブツブツと言いながら、ケチャップを自在に操り、そして完璧なまでの〇豆梓、オレの嫁を描きあけだ。


「す、すげぇ」


「ほんとにすごいですね。キャラクター自体は知らないんですけどすごく可愛いです」


「また……ライバル……」


「ほんとに小豆〇だ」


四人ですげーって言っていると、3次元メイドは霧咲のオムライスにちょちょと筒隠〇子を描きあげそれではと言って去っていった。


その後ろ姿はなんかめちゃくちゃカッコよかった。

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