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二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?  作者: ハタケシロ
第二章 そして集まる三次元美少女(部員)たち
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第16話 悲しむ前に声を出せ

あれから1週間近く、柏木は憩いの場にいや、学校にすら来なくなった。


噂では、他校のやつらと喧嘩に明け暮れているだの、男と何かしているだのと様々な噂が流れているが、俺は全部違うと思っていた。


「今日も居ませんね」


昼休み、定番になりつつある憩いの場に昼飯を食いに来てもやはり柏木の姿はなかった。


辺りを見渡して柏木を探した桃の表情はどこか、寂しげだ。


「まぁ、なんかあるんだろ」


口ではそう言う俺だが、実際は気まずさで来ないのか、嫌になって来ないんじゃないかと思っていた。


俺だけじゃなく、桃や霧咲もそう思っていると思う。


カチャカチャと箸で弁当の中身をつつく音が響く。いつもなら何かしら喋る霧咲もここのところあまり喋らない。


「そう言えば陽向くん」


「なんだ?」


静かな雰囲気の中で桃が聞いてくる。


「あの時、なんで私たちを助けたんですか?」


「あの時?」


「はい。あの木城とか言う人の」


「あぁ〜」


木城が強引に桃たちを引き寄せようとした時のことか。


「陽向くんなら3次元の女の子は助けないと思ってました」


「何を言う。失礼な。俺、お前とか霧咲とか助けたことあんじゃん」


「自分で偶然だからって言ってたじゃないですか」


「うっ……」


確かに言ったな。つか、あれは本当に偶然なんだから仕方ないよな。


「見た目に反してチキンな陽向くんがまさか助けるとは……しかも3次元の私たちを」


確かに、普段の俺なら助けない。見て見ぬふりとかするだろうし、3次元の女の子のためにわざわざ動く気にもならないだろう。けど、あの場所には最初から俺は居た。見て見ぬふりはさすがに出来ない。それに、


「どうして助けてくれたんですか?」


アイスブルーのように、真っ青な瞳を俺に向けて聞いてくる桃。俺はごくごく普通の理由を述べて答える。


「そんなん決まってんだろ?お前たちが大切な」


「「大切な?」」


桃と霧咲がハモッテ聞く。どこか期待している目をしている二人を見て俺は続きの言葉を言う。


「部員だからに決まってんだろ」


「そ……うですよね」


「で……すよね」


俺の言葉を聞いて二人はなぜか、さっきまでの期待している目とは違い、不満気な目に変えた。


「陽向くんには期待しちゃダメだとは分かってるんですけど、なんかこう」


「悔しいです」


何が悔しいんだ。何が。


「でもまぁ、とても嬉しかったですよ」


「はい。それにほんとにカッコよかったですし」


ニコニコしながらあの時も言われたお礼をまた言われた。俺はあの時の行為はべつに、当たり前というかやらなくてもよかったんじゃないかと思っていたから何とも言えない気持ちになった。


「お、おう」


だから、少し照れたのは仕方ないことだろう。


「くすっ……陽向くん照れてるんですか?」


「照れてる陽向さん可愛いです!」


「るせー」


柏木が居なくて、どこか重苦しい雰囲気だったが、久しぶりに爽やかなというか、明るい雰囲気になったと思う。


でも、やっぱり柏木が居ないとしっくりこないというのを俺は、いや、俺たちは、思っていた。


柏木がどう思ってるかは知らない。ほんとに友達ともなんとも思ってないのかもしれない。でも、俺たちは柏木のことを……。



「んー。あ、あ、えー。1年E組瀬尾陽向〜。陽向〜。至急職員室に来い……てください。最低でもこの放送が終わってから5分、私の体内時計で経つ前に来ること。もし、来なかったら〜光の早さで蹴」


ブツン


と、途中で先生の放送が終わった。いや、切れた?



放課後、部室でエ〇ゲーもとい、美少女ゲームをしていると不意に流れてきた放送。どうやら、呼び出されたらしい俺が。


「ほらっ、陽向くん呼ばれてますよ。裸の女の子を見てないで早く行ってください」


「待って!後もう少しなんだ!待って!」


「何があともう少しなんですか!?いいから早く行ったほうがいいですよ!先生も言ってたじゃないですか、5分以内に来ないと蹴……何かやるって」


「痛い思いをしに行きたくない」


「そんな子犬のような目で見ないでください。なぜかブラウスを脱いでブラ…下着に手をかけている霧咲さんよりも早く抱きつきたくなるじゃないですか!」


さぁ、このセリフにはおかしな点がいくつかあるぞ!どこかな?


「嫌だ!行きたくない!そしてもう間に合わない!」


「まだ間に合うかも知れないですよ!」


「いいか桃教えてやろう!先生の体内時計の5分ってのはなぁ」


「5分というのは?」


「昔、体内時計が壊れて5分だけ測れないらしい」


「と、いうことは…」


「そうだ。5分はかるどころか、測れない。つまり、詰んでんだよ」


THE END


ってやつだ。


早く行こうが行かまいが、5分経ったことにされる。それが先生だ!


「ふぅ……だから行かない。痛い思い……したくない」


「だからって冷静に……その、ゲームをしないで下さい!よく堂々と部室でそういう類のゲームが出来ますね!」


「何言ってんだ?俺の崇拝する星奈様だってやってんだぞ?」


「2次元の話じゃないですか!」


全くいいじゃねーか。ここは俺が作った部の部室で(まぁ桃にたいはん手伝ってというかやってもらったんだが)俺はその部長なんだからさ。それに部の活動にも違反はしてないと思う。だから、エ〇ゲー、美少女ゲームをやったっていいじゃねーか。いや、ね?ちゃんと音量は抑えてますよ?


「いいか……ら、はや、く、行って…!…ください…!」


立ち上がされて、背中を押される。

どうでもいいが、桃のセリフをなんも考えずに聞くとなんかエロいな。


「ほら、そこのブラ…下着を取るのに手間取っている霧咲さんをどうにか切り抜けて早く行ってください!」


桃の言う通り、目の前、進む道にはほぼ半裸と言ってもいい状態の霧咲がいた。


「押すなって!てか霧咲?お前はなんで服を脱いだんだ?」


単純に疑問に思ったので聞く。


「それは陽向さんが2次元の女の子の裸で興奮……目をキラキラさせていたので、陽向さんが2次元の女の子に興奮するなら、それを3次元の私が裸を見せて、私の裸じゃ物足りない、ダメかもしれませんが3次元の女の子に興奮するように調教しなおし」


「さーて!先生に呼ばれてるから俺行ってくる!」


俺は脱兎のごとく部室から逃げたしだ。

霧咲の突拍子な行動には度肝を抜かされる。


どうでもいい情報だが、桃より胸はあった。



「遅いぞ陽向。5分以内にって言ったよな?」


その眼光だけで人を殺せそうな瞳をどうか収めてください先生。


「これでも急いで来たんですけど」


ぐずっていたけど、急いでは来た。嘘入ってないぞ!うん。


「嘘をつけ」


ぽんっと近くにある教科書で頭を叩かれる。

やっぱ、先生には通じないか。


「お前が早く来なかったせいで私が副校長(ハゲ)に怒られたんだぞ?言葉遣いを直せだの生徒を脅すなだの」


「それは先生が悪いんじゃ……」


「……(鋭い眼差し)」


「すいません。俺が悪いです」


ぜってェ俺のせいじゃねーって。


つか、副校長ハゲなのかよ。あれやっぱカツラだったんだな。入学式から気になってたんだよな。


「で、俺になんか用すか?」


放送を使ってまで俺を呼び出したんだ。

なにか用があるのだろう。逆になかったら私用で使った先生の度肝がすごい。


「ある。ここじゃなんだ、場所を移そう」


「……?はい」



先生に従って着いたのは職員室に隣接している会議室だった。職員会議やPTAの役員たちが度々使う場所だ。


会議室に入った瞬間から先生の顔つきが変わり、真剣な表情になった。


「用って言うのは話だ」


「はい。なんの話ですか?」


「柏木のことだ」


柏木の名前を先生の口から聞いたとき体が硬直した。

なぜか、それは柏木が不良として学校中に知れ渡っているからだ。その柏木を先生が話題にあげたから。


「なにか……したんですか?」


先生の口から出たんだ。

なにか柏木がやったのかもしれない。


「なにか、したか……か。はは、気にすんな柏木は何もやってない。それにな陽向。私は柏木がガチな不良じゃないこともお前たちが柏木を勧誘しようとしていることも知っている」


「え?」


「そのまんまの意味だ陽向。私をそんじゃそこらの先生(やつら)と一緒にするなよ?」


今思えば、柏木のことで俺を呼び出すのはおかしい。先生は俺と、俺たちと柏木の関係を分かった上で俺を呼び出したんだ。


「それでな陽向。今さっき、柏木は何もやってないと私は言ったが」


「はい」


「柏木は今、入院している」


「え?」


「体中に打撲や殴打の跡があってな、もしかしたら骨もやってるかもしれない。道で倒れているところを私が見つけて入院させた」


「どういうことですか?」


頭がついて行かない。

柏木は何もやってない。なのに柏木が入院?


「私にもわからん。本人が何も教えてくれないんだからな。だからお前がいって聞いてこい」


「え?お、俺がですか?」


「あいつを部活に、友達にしたいんだろ?だったら行け部長」


瞬間、何かが弾けるように俺は会議室を飛び出した。柏木に何があったのかが知りたい。俺が行っても何も言わないかもしれない。けどっ……!入院してる友達を見舞いに行くのは当たり前じゃないか。



「ちゃんと助けてやれよ陽向」



「よぉ」


「なんであんたがここに?」


病院の個室、そこに柏木はいた。

体のあちこちに、湿布や包帯を巻かれていて顔には痣があった。


「先生に聞いた」


「ちっ、あのセンコー余計なこと言うなって言ったのに」


「その傷とか痣どうしたんだ?」


「なんでもねぇーよ」


「なんでもないわけ」


「なんでねぇーって言ってんだろ!!」


柏木の咆吼に似た声が病室内に響きわたる。


「木城とか言う。あの男にやられたのか?俺があいつにやった腹いせに」


「ちげーよ」


「ほんとか?」


「ほんとだ」


沈黙が流れ、場が静かになる。


「もう、私に関わんなって言ったろ?」


ぽつりと柏木が言う。


「言ったな」


「だったら……!!」


「俺たちは友達だろ!?」


「ーーっ」


「友達の心配をして何が悪い!?俺とお前は友達だ!だったら心配したっていいじゃないか!それにな、俺だけじゃねぇあいつらだって心配してんだぞ!?」


メールであいつらに事情は話しておいた。

あいつらのことだ絶対に心配しているに違いない。


「そういうのはいらねぇんだよ!!」


俺の必死の言葉を柏木は遮った。


「いらねぇんだよ。そういうのは……友達は!!友達は裏切るもんだ……だったら私には要らないし作らない!」


「俺たちは裏切らねぇぞ柏木!お前にどんな過去があったのかは知らねぇ。けどな俺たちは」


「うるさい!そう言ったって裏切るんだよ人は!……だから木城だってこうやって」


「やっぱあいつなんだなそれをやったのは」


「……違う」


「違わねぇだろ」


「違う!」


…………。


「もう、帰れよ……。そしてもう……私に関わらないでくれ。もうやなんだよ……」


「……分かった」


振り返り、ドアを目指す。


そして、ドアに手をかけた







「なぁ……助けてくれよ陽向…そして、私を友達にしてくれ……」







手をかけたドアを思いっきり開け、そして


「「「当たり前だぁ(です)!!!」」」


と、3人で言った。


「ふふん。これ、言ってみたかったんですよ」


と、胸で腕を組み自慢げに言う桃。

お前ワン〇ース好きだもんな。


「なんで、……お前ら」


ドアの前にいる桃と霧咲を見て驚いている柏木。


「だから言ったろ?こいつらも心配してるって」


桃が柏木は絶対助けてっていうはずだからドアの前で待機してるというメールを見たときはほんとか?とも思ったがエスパー桃、流石だぜ。


「それとな柏木」


「「「俺たち(私たち)はもう友達じゃないか(ですか)」」」

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