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二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?  作者: ハタケシロ
二年生偏 第二章 新入部員と友人部の日常
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第107話 天使の力

一年以上空いてすいません!

ついに入場となり、俺は会場へと入ることに。

入場もなんというか、さっき居た黒服の方たちがご丁寧に案内しながら通してくれる。


これってほんとに素人の歌い手さんのオフ会だよな?

間違って金持ちとか有名な人のライブに来たわけじゃないよな?

臓器とか提供しない限り会場から返さないとかないよな?

なんて、多少の不安というか、かなりの不安を抱えながら中へと入ってく。


だって怖いじゃないか。

屈強そうな黒服さんたちがニコニコ笑顔でこちらどうぞ。なんてさ!



中へと入ると、そこはライブとしても多く使われている場所だからか、素人の俺から見ても凄いなと思う音楽機器がたくさん並べてあって、音響設備はバッチリって感じだ。


前方にはステージがあり、その前には椅子がずらりと並べてある。

それぞれの椅子には番号が割り振られていて、俺はさっき抽選箱で引いた番号の席へと座る。

一番くじでは何度涙を飲んだか分からない俺だが、なんと今日の席は、最前列のしかもど真ん中とステージを見るにはベストすぎるポジションを陣取ることができた。


「やぁ。また会ったね」


「あ、瑞希さん」


「まさか隣になるなんてね。お互い楽しもうね」


「はい。凄い偶然ですよね」


「陽向くんって学生だよね?高校生?」


「そうですよ。高校2年です」


「そうなんだ。それじゃぁ僕と一緒だよ。だから敬語は辞めてほしいな」


「あ、そうなです……そうなんだ。雰囲気からして大人びてるから大人だと思ったよ」


「よく言われるんだよね。とくに私服を着ると学生じゃないと思われる」


「それになんというか話しやすいというか、その点も大人に見えたよ俺は」


「はは。ありがとう」


実際に瑞希さん。いや、瑞希は話しやすい。

人見知りの俺がこんなにも初対面の人と話せるなんてまず無いからな。


包容力というか、なんというかなんでも話せる気分になってくる。

そのうちに、この壺買わない?なんて言われても、はいの二つ返事で買ってしまいそうな程に。


「陽向くんはどこで天使様のことをしったんだい?」


「そうだな…俺はテキトーに動画とかを漁っていたら発見した…いや、遭遇した?いや、出会ってしまった?」


「ハハ、面白いね陽向くんは」


俺の答えに対して、目元に湧き出た涙を人差し指で拭いながら笑う瑞希。

そんなに俺の回答が面白かったか?

面白くはないとは思うが、俺のボキャブラリーの少なさには落胆だぜ。

天使との出会いに対して、それ以上の表現の仕方を知らないんだから。


「つか、瑞希も俺のこと君付けじゃなくて、タメで呼んでいいぞ」


「あぁ。ごめん君付けは僕が呼びやすいからそうしてるんだ。男の子に対しては基本そうしていてね。どうしても嫌だって言うのなら君付けはしないけれど」


「嫌じゃないから別に君付けでもいいけど、やっぱなんか大人な感じがするな瑞希は」


「そうかな?」


「なんつーか言葉1つ、呼び方1つとっても余裕があるっていうか、どんとしてるって言うか」


「まぁ僕もそれなりに色々あるからね」


少し、ほんの少しだけ瑞希の表情が曇った。

今日初めて会った相手に少し詰め寄りすぎてもかも知れない。


「なんか、ごめん」


「陽向くんは別に何も悪いことは言ってないでしょ?」


「まぁそうだけどさ」


「じゃあ別にいいじゃん」


「瑞希がいいならいいけど」


少し気まずい空気になった。

こんな時に桃や霧咲、あいつらならいい事を言えるんだろうけど、悲しいからオタクの俺には無理難題だぜ。


「瑞希は天使の事はどこで知ったんだ?」


「聞きたい?!」


「お、おう」


さっきまでも曇った顔から一転し、瑞希の顔はパァと輝き出した。

すごいな天使。

まだ何も始まってもないのに、名前を出しただけで、1人の人間を笑顔にさせたぞ。


「僕も出会いは、動画を何となく見ていた時だったなぁ」


パァと輝いた顔から、その日のことを思い出すように、瑞希は語り始めた。


「ちょっと行き詰まった時があってね?少し落ち込んでいた時期が会ったんだよ。何もかも上手くいかなくて、どうしようかな?色々と辞めちゃおうかな?って思ってた時にたまたま見ていた動画サイトのオススメに天使様が出てきてね?声だけ、歌だけなのに、こうなんだろうね?心が救われた気持ちになったんだ。人によっては、ただの歌じゃないか。そこら辺の声、そこら辺の歌と一緒じゃないか。なんて言う人もいるとは思うんだけれど、僕は確かに救われたんだ。後に天使の歌声と呼ばれるその歌声は僕の心を優しく包み込んでくれているような感覚で、ほんとにゾクゾクしたし、ワクワクしたし、嬉しかったんだ。僕は辛くなんてない。そんな気分にさせてくれたんだ。本当に僕の目の前に天使が降臨したのかと思ったくらいだったよあの時は!まぁ、歌を聴いただけだから目の前に降臨したっていう表現はおかしいんだけどね。けど」


「ストップ!ストップ!ストップ!少し落ち着こうぜ瑞希。よし、まずは水を飲もう」


「へ?あ、あぁ!ごめんね!」


饒舌な語り口調を止めるのは心苦しかったが、このままじゃどう見ても呼吸をせずに語っている瑞希が倒れるので、俺は強制的に瑞希を止めた。


すごいな天使。

名前を出しただけで、1人の人間を倒すところだったぞ。


「ふぅ。ごめんありがとう」


「いいよ気にすんな」


水を飲んだ瑞希は、落ち着きを取り戻した。

あのまま喋り続けていたら確実に倒れていただろう。

見るからに呼吸せずに喋ってる様だったしな。


「僕はいつもこうなんだ。天使様のこととなると止まらなくてね」


「確かに、止まらないみたいだな」


「まぁ、とにかく出会いは陽向くんと同じ感じかな?たまたま偶然なんだけど、僕は運命だと思ってる。だってあのタイミングで」


「ストップストップ。落ち着け瑞希。また止まらなくなってるぞ」


「あぁごめん陽向くん。この気持ちを僕は伝えたくて今ここに居るんだよ」


「伝えるってどう伝えるんだ?」


「うーん。握手会とかあればその時に伝えたいんだけど、無理だったら…」


「無理だったら?」


「ステージに上がろうかな?」


「いやダメだろ」


「だよね」


でもなんだろうか。

瑞希ならやりそうな気もする。

天使に対する気持ちは、たぶんこの会場で1番だろうからな。

思いが溢れて一線を超えちゃうなんてこともあるかもしれない。

ちょっと瑞希のことは注意しないとな。


『みなさーん。今日はお集まり頂きありがとうございます!オフ会まであと少しなので、待っててください!』


オフ会開始まで、残りも僅かというところで、なんと天使本人からアナウンスが流れた。

会場にいる俺を含めたファンたちは、はーい!と言ってそのアナウンスに答える。


今のアナウンスは、瑞希にとって相当嬉しいんだろうなと思いながら瑞希の方を見てみると、


「……」


目を開き、涙を流しながら気絶していた。


おいおいほんとにすごいな天使。

声を聞かせただけで、1人の人間を戦闘不能に追いやったぞ。

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