第106話 薬じゃないから!
俺がハマっている歌い手さんがオフ会をする当日。
俺は安定の
「っべー寝過ごした」
寝坊していた。
なんでこうなんだろうな。
嫁たちのためってなったら早めに起きれるのに、3次元の女の子のためってなると、なんか起きれないんだよな。
まぁでも、中学生っていう可能性を秘めているせいもあるのか、開始の3時間前には起きれたな。
うん。えらいぞ俺。
嫁たちのためだったら最低でも5時間前には起きれるのだが、まぁ仕方ないだろう。
今回のオフ会なのだが、事前の申し込み制となっていて、先着50名に対してかなりの数が集まったのか、200名に格上げされ俺はその200名に滑り込むことが出来た。
会場は、ライブやアニメのイベントなどを数多く行っている場所で、よくこんなところが抑えれたなぁ。なんて思うほどいい所を歌い手さんは抑えていた。
まぁ、人気があるから小さい会場じゃ足りないだろうしな。
途中で募集人数を変えるくらいの相当の人気者だ。
そんな人気者でなおかつ、聞き惚れてしまうほどの歌声を今日聞けるかもしれないと思うとオラワクワクすっぞ!
☆
「まさか200人も集まるなんてね〜」
「笑い事じゃないよシルフィ!どうしよう!」
「まぁまぁ。大きめの会場抑えといて正解だったでしょ?」
「まぁそれはそうなんだけど」
「まさか薬さんの人気がこれほどとは思いませんでしたよ。50人すら集まらないと思ったらその倍以上集まるとは」
「ね!。もっと応募の数はあったけどさすがにウチらだけじゃ捌けないからキャンセルにしたくらいだもんね。ほんとに凄いよ!ルルは!」
「そ、そうかな〜で、でも緊張してお腹痛い」
「ゲボ出すのは辞めてくださいよ薬さん。あなたはゲボを出すほうではなく、治す方なのですから」
「それってもう完全に薬じゃん!」
「?そうですが?」
「私は薬じゃないから!」
「はは。希桜もからかうのいい加減にしてね。忙しいのは分かるけどさ」
「む。別に忙しくてその八つ当たりで薬さんを虐めてる訳ではないのですか。まぁ少しばかりは八つ当たりははいってますが」
「入ってるんだ!?私咲洲さんに八つ当たりされてるんだ!」
「まぁそれなりに忙しいもんね〜」
「私はこの忙しさの中、笑顔なあなたが怖いですよお汁さん」
「そう?だって楽しいじゃん!準備って!」
「シルフィ確かに去年の中学の文化祭も進んで準備してたもんね。生徒会長が引くくらい」
「だって楽しいじゃん!それに今回のは文化祭じゃなくてルルのためだから余計に楽しくて!」
「まぁ、先程からテキパキ動いてくれているのはお汁さんの呼んだ黒服さん達なのですが」
「そうだね。その黒服さんたちに間髪入れずに指示を出してるシルフィはなんかすごいって言うか怖いよね。休憩を与える暇もないっていうか」
「ですね。」
「そう言えば咲洲さんはさっきからパソコンでなにをやっいるの?ある程度準備はおわたって言ってたよね?」
「薬さんのオフ会に関する準備は昨日のうちに終わらせて、先程会場に着いてから最後の確認をサクッと終わらせたのですが、重大なことを忘れていまして」
「重大なこと?」
「ひにゃたしゃまの動向確認を忘れていまして」
「どうして?陽向先輩の様子を?」
「私用でほぼ毎日動向確認をしているのですが、昨日は薬さんの準備のせいで中々確認することが出来なかったので」
「な、なんかごめんね?私のせいで」
「いえ.......まぁ楽しいですし」
「え?」
「な、なんでもありません。それより私は今私史上かなり忙しいのでちょっと失礼します」
「うん。いろいろありがとう咲洲さん。本番がんばるよ」
「荒稼いでください薬さん」
「それはどうかな」
☆
「む。ひにゃたしゃまの反応がこの会場の近くに。もしや最近ひにゃたしゃまがハマっておられるという歌い手さんは」
☆
「さっき聞けなかったけど、咲洲さん毎日動向確認してるって.......まさかね?」
☆
オフ会まで30分前というところで、俺は会場に着いた。
最近出来たばかりのライブハウス型の会場で、200人なら余裕で入りそうなキャパを持った会場だ。
入場までは外で待機なのだが、よく晴れていて外で待つにもなんの苦はない。
アニメのイベントとかならかなり前にきてグッズ購入やら記念写真(ソロ撮影)などをやって時間を使うのだが、今日はオフ会でグッズの販売もないため、それなりの時間だ。
会場の周りには黒服の方達がいて.......って黒服?!
聞いたことねぇよ。
オフ会でガードマンとして屈強そうな黒服さん達が周りを固めてるなんて。
もしかしたらこれを開催した歌い手さんはものすごい金持ちなのかもしれない。
待機列と思われる列に並んでみると、もうそれなりに人は並んでいた。
すごいな。俺の想像以上だ。めちゃくちゃ人気じゃねーかよ。
「やぁ。君も天使様のファンかい?」
「愛してる」
「おっと、想像以上の答えが来たね」
俺が待機列に並ぶと隣に並んだやつに声を掛けられた。
黒の革ジャンに革のズボン。バンドでもやっているのか長い髪は纏められて、その上から帽子を被っている。
俺もタッパはある方なのだが、背丈は俺と同じくらいでかなり大きい方だ。
けどガッチリした体格はなく、どちらかと言えば線は細い。
マスクをしているせいか、どうみても不審者だ。
「おっと僕は不審者ではないからね?」
「その格好はどうみても不審者にしか見えないですけど」
「はは。厳しいことを言うね。オフ会までもう少しだし、ちょっと僕と話そうよ」
「まぁいいですけど」
すごく胡散臭い人だが、暇だしはなしてみるか。
もしかしたら歌い手さんの何か有益な情報が聞けるかもしれないし。
「そう言えばさっき君は愛してるって言っていたね。そんなに天使様のこと好きなの?」
「あなたほどではないと思いますよ?様なんて俺はつけないすから」
「じゃあなんで愛してるって?」
言えない。
歌い手さんがもしかしたら中学生だからかもしれなくて、俺は中学生が好きだからなんて言えない。
「まぁ、表現がそれしかないですから」
うん。嘘はいってないぞ。
「分かるなーその気持ち。僕もね天使様のことは好きだし愛してるんだ。あの歌声を聞いた時は、もうほんとに天使が舞い降りたと思ったよこの地上に」
「分かります!あの歌声はほんとに天使ですよね。俺も初めて聞いた時は、こうなんか表せないくらいの感情が響きました」
「分かる!分かるよその気持ち!表せないんだよね!基本的に!天使様の歌声は!」
凄いなこの人。
ほんとに歌い手さんのこと好きなんだな。
俺も割と好きだけど、この人のはもうそんなの遥かに超えている。
つか、なんだろうこの気持ち。
これはあれだ。同じ好きなものを語り合えているっていうあの感情だ。
宇宙〇弟でムッくんが感じたあの感情だ!
最近は柏木ともアニメの話あまりしてなかったから久方忘れていたぜこの感情!
そうだ!俺はこの感情を味わいたくて友人部を作ったんだ!
霧咲に振り回されるために作ったんじゃない!
☆
「はくちょん!陽向様が噂してますね」
☆
「いやーオフ会前に熱く語り合えたよ。ありがとう」
「俺も楽しかったです。オフ会でも盛り上がりましょう」
「だね。えーと君の名前は?」
「俺は陽向って言います」
「陽向だね。僕は瑞希。よろしくね」
「瑞希さんですね。よろしくお願いします」
「僕は今日、天使様に愛を伝えるつもりだからちょっと見ててよ」
「愛?なにするんですか?」
「ふふ。秘密さ。あーあと、この瞳はカラコンだからね」
「え」
「いや、気になってたでしょ?この瞳」
「まぁ、はい」
良かった。とあるシリーズのしょくほうさんみたくキラキラしてたからどうなってるのかと思ってた。
更新頻度多くできるようにと言ったそばから体たらくですみません。




