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「いっておくけど、おまえやらなくていいから」
ふたりでつくえをよせて第一声がこれである。
王子様は小声でそう言うと、前から配られてきた大きなプリントにシャーペンで文字を書きはじめる。
字、すごい上手だ。
ぼんやりとそれをみていると、教室を巡回している木村せんせいに教科書でバシッとたたかれた。
「コラッ。なにひとりにまかせてるんだ!」
「え、でもやらなくていいっていわれました」
「ちょっと!え、いや……あのですね…………」
と、うまいこと王子様は木村せんせいに取り繕う。木村せんせいは二三言何か上機嫌でいって、ほかの班へと回った。
その一連の動作をぽかんとみていると、王子様がすこし顔をわたしによせた。
「おまえ、マジでふざけんな。このバカ」
なんかよくわからないけど、さっきのダメらしい。