隣の席の王子様は

３

翌日、王子様は何もなかったみたいに「おはよう、清水さん」ときれいな笑みであいさつしてきた。

「おはよう」となんとなく返す。いつも通りだ。

昨日のできごとがあったから何かかわるのかと思ってたけれど、ビックリするくらいふつうだった。

きょうの一時間目は生物。

生物担当の木村せんせいが「きょうからしばらくグループがくしゅうをしまーす。っていってもグループってふたりですけど」とあかるい笑顔でいった。

隣からちいさな舌打ちがきこえた。たぶん、王子様だ。

「夏休みをつかってしらべて、二学期になったら教卓の前で発表してもらうつもりです。みなさん、この教室の生徒全員がその発表をきくんだから手なんてぬくんじゃないぞー！」

木村せんせい、きょうもほんといい笑顔だった。なんだか、きいてると元気でちゃう。

「清水さん、よろしくね」

隣の席の王子様がにっこり笑う。

この笑顔って、たぶん、うその笑顔なんだろうなってやっと気づいた。