2
由奈ちゃんがともだちじゃなくなったから、わたしにはともだちがいなくなってしまった。
わたしはひとりで自分のつくえでお弁当を広げて食べはじめる。由奈ちゃんはおなじ教室でほかの子たちといっしょにお弁当を食べてる。あーあ。
王子様はお昼になると同時に教室からでていっちゃったし、なんだかご飯たべるのつまんないなあ。
由奈ちゃんがいない今や、わたしに話しかけるのは王子様だけになってしまった。
っていっても全然たいしたことはなしてないけど。王子様はみんなにやさしいからわたしに話しかけてるなんて、知ってる。どうせみんなみたいに内心はバカにしてるんじゃないかな。
まあ、どうでもいいや。そういうのって、なれてるし。
そう思ってたら、やっぱりねっていうことが起きた。
それはその日の放課後のことだった。
王子様はそりゃあモテる。プレゼントだって誕生日じゃないのにいっぱいもらってる。きょうも教室で照れてほおが真っ赤になった女の子からクッキーのプレゼントをもらってた。
王子様はにっこりとしたきれいな笑顔で「ありがとう。うれしいよ」と言った。
でもそれは嘘だったみたい。たまたま忘れ物を取りに行くために放課後に教室にもどったら、そのプレゼントをぐしゃっと握りつぶした王子様をみてしまった。
「あっ」
なんて、ついつい声をあげてしまうと王子様はすごい早さでこっちをむいた。こういう間の悪いところがダメなのかな?
王子様は怖い顔でつかつかとこっちに来て、「今の、みた?」と聞いてきた。頷くと王子様はハァーっとふかいため息をひとつついた。
「ま、おまえにみられたのは不幸中の幸いだな」
「なんでわたしならいいの?」
「バカだから。それにボッチだし。そんなおまえがこれを吹聴しても誰も信じねぇよ」
「たしかにわたし、バカだしともだちいないし、いう人いないや」
そう返すと王子様はへんな顔をして、「おまえってやっぱ、マジでバカだわ」といった。