俺は彼女を愛しすぎている。
「乙ゲーの友人Aですが、放棄して自分の人生を謳歌します。」の婚約者視点での出会いです。
格好良い婚約者なんていません・・・。
俺の名前は三島圭吾
国内有名グループの一つ三島の跡取り息子で専務として勉強中だ。
そんな俺は昔から女にモテた。自分で言うのもなんだが顔も良い方だし頭もいい、体も鍛えてるから弛んでないし、地位もある。普通に考えてモテルだろ。
学生時代は適当に遊びながらも彼女を何人か変えてそれなれに楽しく過ごした。しかし、基本は仕事や勉強が第一だから、それを疎かにするつもりは無かった。それをよく思わない女性が多く結局別れを繰り返すはめになるが、彼女達と別れても特に気にすることも無く今に至る。
現在彼女はなし。
2年ほど前、仕事が忙しく当時付き合っていた彼女を2週間程連絡を疎かにしたらキレられた。
忙しいからあんまり構ってやれないって最初から言った筈なのに、こんな風になるなんて思ってなかった!ってキレられたからもういいやと思い別れを切り出した。最初は嫌がられたけど、それでもこれが耐えられないなら無理だといい結局別れた。
それからは彼女というのが煩わしくて彼女を作っていない。
しかし、俺の親父とじいちゃんは俺に早く結婚して欲しいらしく見合いをすごい勧めてくる。
今は仕事で忙しいからといって断っているが、そろそろ痺れを切らして強硬手段に出るかもしれないとヒヤヒヤしている。
さすがに結婚相手ぐらいは自分で決めたいだろ。
そんな俺にある運命的な出会いが訪れる。
仕事で行ったパーティで明らかに目立っている女性。綺麗な髪を丁寧に編み込まれ纏められて出されている項に視線は釘付けだ。メイクは薄めだが元がイイのだろう白い肌も遠くから見てもきめ細かく艶めいていることが分かる。ドレスも薄いピンク色の可愛らしいドレスなのに子供っぽさを感じさせないほどの魅力。下手なモデルよりも顔もスタイルも優っていることが目に見えて分かった。どこかの新人芸能人か?それが彼女の最初の印象だった。
会場の男も女も関係なく視線を集めているのにも関わらず本人はそれに気にすることもなく、背筋を伸ばし毅然とした態度でその場に立っていた。
「目を引くお嬢さんだな。」
彼女に目を奪われていたら親父がそばに来たことに気づけなかった。
「あ、あぁ。」
「お前素に戻ってるぞ。」
家族以外の前では好青年を演じているのに、彼女に見とれてしまい思わず素で返答を返してしまったので、慌てて元に戻す。
「お嬢さんの横にいるのは暁社長だな。」
「暁社長・・あの大手IT企業の?」
「あぁ、ウチでもお世話になっているから挨拶は必要だな。」
「・・・行ってきます。」
「私も行こう。どうもあのお嬢さんが気になるようだしなぁ」
ニヤつく親父を睨みつけても楽しませるだけで、俺はなんとか平常心を取り戻しながらも彼女に近づいていく。
「暁社長。」
「これは、三島グループの・・圭吾さんだったかな?」
「はい。いつもお世話になっています。」
「こちらこそ。社長もお元気そうで。」
「あぁ、これはまた綺麗な女性を連れていますね。」
親父と暁社長が軽めの挨拶を交わし、親父の言葉に暁社長はそばに控えていた女性を呼び寄せる。
「紹介します、私の娘で美紀といいます。」
「初めまして、暁美紀です。」
女性は綺麗な微笑みを添えながらお辞儀をした。
その姿に俺は目を離せなかった。
「初めまして、三島優吾です。そして息子の圭吾です。」
「初めまして。」
見とれていたことで少し反応が遅れてしまったが、そこはなんとか今までの社交性でカバーする。
間近で見ても綺麗な子だな・・。
「圭吾くんは専務として活躍中で若いながらに奇抜なアイデアで会社に貢献しているんだ。」
「そんな大した活躍はしていませんよ。まだまだ若輩者ですから。」
暁社長の言葉にそう返せば彼女は尊敬の目をくれるが、今までの女性のような肉食獣のような獲物を狙う感じではなく、ただの尊敬の目が心地よかった。
「すごいんですね。」
「いえ。」
さっきも思ったけど声可愛い・・。聞いてて心地よいしもっと聞いていたいと思える。
「美紀さんは学生かな?」
「はい。今年高校生になりました。」
「ほぉ、学校はどちらかな?」
「彩鏡学園です。」
「ほぉ、これだけの美貌で優秀なお嬢さんなんて暁社長が羨ましいですな。」
親父の言葉に彼女は照れたようにハニカミ、暁社長は嬉しそうに目を輝かした。
ハニカミ・・可愛い・・・。
「そうなんですよ!!美紀は彩鏡学園に入試トップで受かり、生徒会に推薦されるほどの優秀さ!他にやりたいことがあるかららしく辞退してしまいましたが、語学だって英語の他にドイツがにフランス語、中国語を今勉強中で、マナー、教養と幅広く学ぶほどの優秀さ!!しかも、私の休みの日には料理やお菓子を作っていたわってくれる程の優しい子なんですよ!!」
暁社長の熱弁に俺も親父も呆気にとられる。彼女は真っ赤になって恥ずかしそうにしているところが俺のツボを擽る
「すいません、父が・・。」
「いやいや、ご自慢の娘さんで羨ましい限りですよ。」
彼女の申し訳なさそうな声に親父がにこやかに微笑み、俺も笑顔を向けると彼女はホッとしたように微笑んだ。めっちゃ可愛い。
その後は少し挨拶回りにお互い別れたが俺は気が気じゃなかった。
少しでも彼女に他の男が近づくとイラつき、男が離れるとホッとする。それを繰り返していると親父に軽くド突かれる。
「いい加減にしろ。一目惚れして勝手に嫉妬して・・お前はストーカーか・・。」
呆れたように親父に言われて初めて自分を客観的に見ることができ、自分で呆れてしまう。
「そんなに気になるなら声かけてくればいいだろ。得意だろそういうの。」
「・・・俺は今まで自分で声かけたことねぇよ。」
「モテる自慢か?むしろ今声かける術が分からんとか言うなよ?どんだけヘタレなんだよ。この馬鹿息子」
「・・・・」
「いいのか?あの子は見た目も綺麗で優秀だ。暁社長の溺愛ぶりをみても大切に育てられたお嬢さんだ。他の男に簡単に持っていかれるぞ。」
「・・・・行ってくる。」
親父に背中を押されて動き出すなんてカッコ悪いが、それでもここで行かないと後悔するのは分かりきっていた。一目惚れなんて初めてだし、ここまで女性に執着したのも初めてのことだ。10歳近く年の離れた子にここまで惚れるなんて思いもよらなかったが、他の男に取られるなんて我慢できなかった。
「あの、美紀さん。俺と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか。」
初めて出会ってからろくにお互い知りもしないのに、プロポーズとか後で考えるとアホだと思うが、この時の俺にはその言葉しか出なかった。
流石に目を丸くして驚く彼女と、慌てる暁社長を見ながらも返事を待つ。
「えっと・・・。お友達からでもいいですか?」
彼女の否定の言葉でないことに浮かれて俺は彼女を思いっきり抱きしめ、暁社長に絶叫されたが悔いはない。
ありがとうございました。