コンビニでの不安と予感
「次の火曜日か、水曜日はお仕事ですか?」
「まだ、勤務表出てなくて、わからないの」
「わかったら、教えてくださいね。また、一緒にでかけてください」
「うん……」
コンビニで別れて、立ち去る彼女は今にも泣き出しそうな目をしたまま、行ってしまった。
次に会う約束が出来なかった。彼女は、また会ってくれるだろうか。もう、会ってくれない気がしてしまう。
会った時から、哀しそうだった。
白い肌はさらに白く、ぼんやりとした目は伏せられていた。真っ黒なタートルネックのセーターに、黒いパンツ、チャコールグレーのカーディガン、お通夜に、十分通用する。
話しかけても、どこか上の空。
繋いだ手は、記憶よりさらに冷たい。
寄りかかって眠る彼女の閉じられた瞳から頬を伝う涙。彼女の言う通り、よだれなら、よかったのに。
マグノリアでケークサレを口にしたときと、トマトとチーズのパスタを頬張ったときだけ、彼女の瞳は笑っていた。
マグノリアでの演奏は、切ない恋の歌だった。逢いたい、でも逢えない、そんな歌詞に彼女は聴き込んで、彼女の胸も痛むのか、セーターをぎゅっと掴んでいた。その手を緩めると、涙がこぼれるかのようだった。
コンビニの煌々とした灯りを背にして、動けないでいると、店内から、店員さんが出てきた。
「おいっ、玉砕かよ!」
「やめてくださいよ、そういう冗談」
「おう、そうか。今のあんたの背中見たら、玉砕以外考えられねぇし」
「なんかね、好きな人でもいるんですかね」
「30過ぎたら、忘れられない人くらいいてもおかしくはない」
「て……店長さんっ」
「店長、仕事しろよっ」
「あれだけ、魅力的な人なんだから、恋のひとつやふたつ……、今からだよっ!君!諦めるのはまだ早いっ」
「店長……。ウザイっすよ」
「店長さん……、平原さん、まだ20代です」