コンビニでアドバイス
コンビニから始めよう、休憩室で終わらせようの続編です。
読んでいただきますと、更に楽しんでいただけると思います。
コンビニで出会ったあの人と、連絡先を交換することに成功して、食事にいく約束をとりつけた。
早く会いたい、あって話がしたい、あの人を知りたい。
約束の水曜日が待ち遠しい。
どこにいこうかといろいろ考えるけれど、なかなか決まらない。
仕事帰りに寄ったコンビニで立ち読みをする。
書籍コーナーの整理をしつつ店員さんが近くによってくる。
「おう?」
「お疲れ様です」
「……あんた、相変わらず、わかりやすいな。タウン情報誌で探してんの?」
「はい。どこにしようか、悩んでます」
「なに?あの人とは一度きりの思い出ってか?」店員さんは喉をククっと鳴らす。
「そっ、そんなことないです、出来れば……」知り合いから、一歩進みたい気持ちはある。
「フツーに考えたら、無理っしょ」
「どうしてですか?」
「いやー、明らかにあんたより年上で、キレーなお姉さんで、しかも看護師!絶対、あんたより、金持ってるし、遊びなれてるだろ?男に飯おごってもらうことなんて、珍しくもなんともないんじゃね?」
「……」確かに、店員さんの言う通りだ。
「だからっ、あんたが雑誌見て、意気揚々と連れていっても、相手はもっといいとこにしょっちゅう、行ってるってワケ」
「……」言葉に詰まる。店員さんの言うとおりだ。楽しい気持ちが一気に飛んでいった。
「いーじゃん、別に。一晩、楽しんでこれば?」
「店員さんっ!僕は本気ですからっ!」店員さんの肩を掴み、顔を近づけると店員さんはくしゃっと顔を歪め、水色のストライプの肩を揺らす。
「やっぱ、あんたマジ本気で、笑える」ククっと喉を鳴らす。
「やっぱり私もなかなか難しいと思うな」後ろから声がかかる。
「てっ、店長!?」
「ここは、君が楽しむというのが、一番いいんじゃないか?無理に背伸びしたところで、楽しくないわ。うまくいかないわじゃなぁ。君が楽しければ、相手も楽しんでくれるんじゃないかな?」
「店長っ、いいこと言うじゃないっすか?年の功っすね!」店員さんはうれしそうに店長さんの肩をバシバシ叩いている。
店長さんの言う通りだ、格好つけて慣れないことをするより、いつもの僕を知ってもらいたい。それよりもあの人のことをもっと知りたい。
僕が楽しいと思うことを、あの人に知ってほしい。そして、一緒に楽しめるといい。
雑誌を棚に戻すと、店長さんは「買ってくれてもいいんだぞ」と口惜しそうにしていた。