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第四話 エルフの救世主

今回は前回より2000字くらい長くなってしまいました。

なるべく文字数が安定するよう今後気をつけます。

 そのあと俺は牢獄に入れられた。もちろんいつでも逃げ出せたし、今も逃げようと思えば逃げられる。でも逃げたところで行くところもないし、逆にせっかくのエルフとの交流の機会を無駄にしたくはないので今はおとなしく捕まっている。もちろん命の危険が来たら言葉のとおり目にもとまらぬ速さで逃げる所存だが。


 あ~それにしても暇だ。何もすることない。よし!見張りをしているエルフの兄ちゃんにちょっかいだしてみるか。


「ねえねえエルフの兄ちゃん、しりとりでもして遊ぼう!」


 小さい男の子風に言ったのだが、声変わりしているのにもかかわらずなるべく高い声を出そうとして言ったので気持ち悪い声が出る。


「黙っておけ。」


 ほとんど動揺を見せない。ちっ、若造のくせに。

 じゃあこれならどうだ?


「おい、兄ちゃん。飯はまだかよ。俺は昨日から何も食ってねーから腹減ってんだよ。おい聞いてんのか?カツ丼くらいだせよ。」


「黙っておけ。」


 相変わらず無反応だったが最後のカツ丼にはちょっと反応した。たぶん聞いたこともない食べ物の名前だったからだろうな。

 じゃあ意外とこういうのには弱いかも?


「いや~僕は人間の兵士しか見たことなかったんですがエルフの兵士様方はもっとたくましく、強そうで、それでいて皆美男美女と人間の兵士敵うとこなしですね。特に貴方なんて飛び抜けて美男でいて―――――――。」


「黙れと言ったのが聞こえなかったか?」


 冷淡な声だ。しかもものすごく殺気を込めて睨んできた。普通の人なら下手すれば気絶するかもしれないくらいのものだったが俺は、別に侮辱はしてないのに、逆に褒めてやったのに。とか、へぇ~これが殺気っていうやつか~と感心していたりした。


 実際俺を黙らせると思って睨んだみたいで、俺が全然平気なのを見ると驚いていた。


 俺がその驚いた顔のことでまたちょっかい出してやろうと思った時ラッパの音みたいなのが聞こえ、さっきのエルフの兄ちゃんが走っていった。


 今度こそなにもすることなくなった。暇だーって言っていたら外の方が騒がしくなっていることに気付いた。


「俺は実は普通の人より耳も良かったりして。」


 耳を澄ます。すると外の音がクリアに聞こえてきた。


「敵は三体いずれも北の方向から近づいている。ここからの距離約3kmの地点をゆっくりだがまっすぐこっちに向かって現在も移動中だ。つまり今回の任務は万が一に備えて奴らが村から1kmの範囲に入り次第討伐可能な状態にすることだ。そこで作戦を説明する。まずピエールの部隊は東側に―――――――。」


「俺達今日で死ぬんだきっと。グランドシザーグが三体もだなんて倒せっこないよ!」


「そんなこというな!第一まだ来るとは限らないんだ。希望はまだある!」


「そんなわけないよ!奴らは3km先の匂いくらい分かるに決まってる!つまり奴らは俺達エルフを食べに来たんだ!奴らだって知っているさ。エルフの肉を食べると寿命が延びることぐらい。奴らはそれを狙ってるんだ!」


「大丈夫だ!絶対生きて帰るぞ。グランドシザーグがどうした!奴らは三体で俺達は100人だぞ。3対100で負ける訳ないじゃないか!」


「本当にそう思っているのか?ならお前は―――――――。」


「魔道士様、どうか力を貸してはくれませんか!私達の力では到底奴らには勝てません。だからどうか!!」


「案ずるな。お主らは負けはせんよ。己を信じて戦えばいい。」


「ですが……。もしかしてこれはあの少ね―――――――。」


 ん?

 最後に聞いていたやつはいきなり音が聞こえなくなった。聞こえる距離から遠ざかったからかな?


 とりあえず今の状況は、マズイみたいだ。そのグランドシザーグとやらはエルフの兵士じゃ勝てないらしい。でも魔道士様?とやらは勝てると思っているみたいだが。

 でも俺は負ける方に賭けてエルフの部隊にこっそりついていくことにした。理由はもし手伝ってやってそいつらを倒せばもしかしたらエルフと仲良くなれるかもって思ったからだ。どんな楽観主義だよ、って突っ込みされそうな理由なのは重々承知だが牢獄でじっとするのは性に合わないしな。

 



 30分ほどするとエルフの兵士達が動き始めた。


 じゃあ俺もそろそろ動くかな。


 見張りは2人。でも最初みたいに俺をずっと見張っている訳じゃなく巡回している。


 ラッキー!


 俺は見張りが見てない間に牢獄の鉄格子を曲げて通れるだけのスペースをつくって走って外へ出た。


 お、いたいた。


 エルフの兵士達は皆徒歩で移動している。この速さじゃグランドシザーグと接触するのにまだしばらくかかりそうだ。

 それでも辛抱強く見つからないよう注意しながらついていくとしばらくしたら奴らが現れた。


「ん?グランドシザーグってこの前俺が倒した熊もどきの事だったのか!」


 俺がそんなこと言っている間にエルフの部隊は戦闘準備ができたみたいだ。


「接近戦はなるべく控えろ!作戦通り遠距離から矢と魔法で一斉に攻撃をする!ではカウントする!5、4、3、2、1、0!!!攻撃開始!!」


 その掛け声とともに矢や魔法がグランドシザーグに向かって放たれる。

 しかし奴らはその巨体に似合わず華麗にほとんどの攻撃を避け、命中する攻撃はすべてあの長い爪で切り落としていた。


 ほとんど攻撃にあたることなくグランドシザーグらは近くに近づいてきた。


「くっ、だめか。総員、一先ず退却だ!」


 エルフは一斉に走って退却し始める。だが走ったところで逃げられる訳がなく何人かのエルフ兵が追いつかれる。そしてグランドシザーグが攻撃しようと腕を振り上げる。


 仕方がない、そろそろ行ってやるか。


 走って振り落してきたグランドシザーグの爪の部分を手で挟んで止める。


「おい熊もどき!前は仲間を殺してしまって悪かったな。でも安心しな。すぐにお前も仲間のもとに送ってやるからさ!」


 爪の部分を手で挟んだまま左右に地面にたたきつける。

 それで首の骨が折れたみたいですぐそいつは死んだ。


「あと二体だな。」


 周りを見渡すと残り二体はまだエルフ兵を追っていた。


「おっと。エルフを追うのはいいけど俺に背を向けるのはやめとくべきだぜ。」


 次の一匹は後ろから首めがけて回し蹴りをいれたらすぐに死んだ。というか頭が消えた。

 足もただじゃ済まなかったが普通に骨折しただけだったのですぐに治った。


 あと一匹。


 最後の一匹とは正々堂々と正面からやりあえた。とはいえ決着はあっさりついた。

 ジャンプして額にデコピンならぬデコパンチ(つまり普通のパンチ)したら手加減したのにもかかわらず倒せれた。たぶんまた脳震盪あたりなんだろう。


「もう終わったか。」


 何か物足りなく思っていたら戦闘中遠くでみていたエルフの兵士がやってきた。


「助けていただきありがとうございます。しかし、あの、素手でグランドシザーグを倒せる方など聞いたことがないのですが貴方は何者なんですか?」


 質問に答えようとしたとき誰かが叫んできた。


「おい!なぜお前がここにいる!お前は牢獄に入れられていたであろう!どうやって抜け出してきたんだ!」


 誰かと思えばピエールさんではないか。それにしてもまたまた面倒なこと言ってくれますね。


「説明すれば長くなるんです。帰ってみればわかりますのでそのことについては後にしていただけると嬉しいのですが。」


「そうやって逃げる気だろ!そうはさせんぞ!どういう方法か知らんがグランドシザーグを倒したからって調子に乗るでない!いますぐ―――――。」


「隊長。ちょっとこっちへ。」


 背の小さい女性のエルフ兵がピエールを連れて少し離れたところでこそこそ何か話しをはじめる。まあ全部俺には聞こえているんだがな。


「隊長、あの少年に今喧嘩を売るような事は止めてください。あの少年はどんな手段を用いたか分からないとはいえグランドシザーグを三体相手にできるほどの強者です。いま下手に怒らせたら今度こそ私達は全員死ぬでしょう。」


「確かにその通りだがこのまま放っておく訳にもいかないだろ。奴はもうすでに無段に教会に侵入した罪と脱獄の罪がある犯罪者だ。なにかいい方法はあるか?」


「あの少年は一応私達の命を助けています。だからお礼をしたいという名目で連れて行けると思います。」


 レティシアさん。あなたの方が隊長に向いているでしょ。


「名案だ。それでいこう。」


 話がついたみたいだな。


「私は今回の作戦の副隊長のレティシアです。先ほどの隊長の無礼な態度には許していただきたい。」


「そして先ほどグランドシザーグを倒していただいたこと心から感謝申しあげます。おかげで死者がでなくて済みました。そこで私達はそのお礼をしたいのですがまた私達の村に来てはいただけないでしょうか。」


 意地悪するつもりはないがこういうのって一度はとりあえず断るものだよな。


「いえいえ、お礼だなんてとんでもない。私は犯罪者ですよ?そのようなお礼は必要御座いません。」


「しかし私達を救ってくれたというのもまた事実です。なので、お礼をさせてくれませんか?」


「そうですか。それならありがたくそのお礼をいただくことにしましょう。」


 そうしてエルフ兵と一緒に村まで戻った。




 村に帰るとまず村長と話をした。そして俺は村長からお礼の言葉をいただいて結局罪の方も帳消しにしてもらった。

 そして今、村が救われたことを祝ったパーティーに来ている。村に帰った時にはもうすでに準備ができていたので正直驚いた。


「見たこともない食べ物がいっぱいだ!エルフってこういうもの食べているのか。じゃあとりあえず一通り食べてみるか。」


 エルフの料理は奇妙なものもあったりしたがどれもおいしかった。

 食べまわっていたときよく声をかけられた。まあ、最初兵士を助けるだけのつもりだったけど結果この町も救ったことになっちゃって町の救世主になったことが主な原因かな。もしくはエルフの村に人間がいるのは珍しいことだからかな。


 パーティーが終わり、俺は食べすぎてしまったので俺専用に用意された部屋で休んでいた。


「完全に食べ過ぎた……。腹が痛い。破裂しそうだぜ……。」


 そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。


「はい!どうぞ!入ってください!」


 動くと腹が痛いし、鍵をかけてなかったので誰だか知らないけど入ってもらう。

 そして黒いローブを着た女性が入ってきた。歳はたぶん俺と同じかちょっと上かぐらいだろう。


「あなたが天羽 隼人だよね?」


「はい、そうですが。」


 呼び捨てとはけしからんな。俺はこの村の救世主だぞ?

 おっと酒のせいか調子に乗ったことを言いそうだった。


《実際には酒は飲んでいない》


「私の名前はマリレーヌ・シュラールです。でも昔は江本 真紀って呼ばれていました。こんな名前に聞き覚えは?」


「え?もしかして、日本人?」


 よく見ると耳が普通の耳だ。エルフじゃない。


「そう。元ね。よかった、やっぱりあなたも転生者ね。神には会った?」


 転生者?ということはこの真紀って言うやつは記憶だけ残ってこっちに来たって感じか。

 それより神に会ったことあるのは俺だけじゃないのか。自慢できると思っていたのに。


「会いましたけど……俺は転生じゃないですよ。転移ですよ。」


「えっ?転移?これまで2人ほど転生者には会ったけど転移者なんて聞いたこともないわ。じゃあ、あなたなにかチート的な能力はもらった?いや、もらっているわね。だって一人でグランドシザーグ三体も倒しているんだもん。」


 話すべきか?俺の能力はチートなんぞじゃないんだぜってドヤ顔で。


「いや、チート能力はもらっていませんよ。なんというか俺、地球にいたときから異常だったんで。」


 ドヤ顔はさすがにしなかった、若干なっていた?かもしれないが正直に言ってみた。俺に後先考えて行動するっていうのは似合わない。


「地球にいた時から!?どういうこと?」


「これは神様すら知らなかったからな。俺にもさっぱり。」


「じゃ、じゃあどんな能力?」


 これを正直に言うということは自分の弱点も相手に見せるってことになりかねない。どうするか。

 真紀は10点中9.8点のかわいさだ。0.2は単に10点を出したくなかったから引いたみたいなもので限りなく10点だ。美しいバラには棘がある、用心していくべきだ。


「とにかく力が異常なほどある。」


「それだけ?」


「えっ?」


「本当にそれしか能力が無いかってこと。まだ隠しているんじゃないの?」


 なぜだ?なぜ気づかれた?顔に出ていたのか?


「やっぱり隠しているのね。」


 くそっ!動揺してしまったのが間違いだ。


「まあいいわ。言いたくないなら言わなくていい。一応一つは教えてくれたし、私のチート能力も教えておくわ。私の能力は魔力がほぼ無限にあること。ほぼってことだから無限じゃないけど最上級の魔法を連続で何百も繰り出しても魔力切れになることはないわ。」


 魔法か。俺も使えるようになれないかな。

 あれ、ちょっと待て。


「お前がもしかしてエルフの村長に魔道士様って言われてた奴か!」


「そうよ。そんなに大声で言うようなほどのことじゃないわ。それよりやっぱり聞いていたのね。誰かに聞かれている気がしたから風の魔法で音の遮断をしたんだけど、それもあなたの能力の一つってことね。」


 自分でばらしてしまった。


「はぁ~俺ってバカ。知ってたつもりだけど。それじゃそろそろ俺に会いに来た理由を教えてもらおうか。」


「理由はあなたの力を貸してほしいから来たの。」


「具体的には?」


「ちょっと長い説明になるよ。まず私は17年前この世界に生まれてきたの。そしてたまたま私が生まれたその村にはもう一人、翔太っていう私より一年前に生まれた転生者がいたの。私と彼は私が3歳の時にお互いが転生者であることを知って、それ以来唯一の理解者として助け合って生きてきたわ。私が15歳になった時、私は彼と旅に出たわ。彼もチート能力を持っていて偶然にもあなたと同じ怪力の能力だった。あ、でもあなたの場合は怪力だけではなさそうね。」


「そうだな。俺はもっとグレートでデンジャラスでチートな能力だぜ。」


「まあとにかく旅に出ていろいろなところにいったわ。」


 華麗にスル―ですか。


「そしてまた一人、安奈っていう転生者にあったの。でもその子まだ7歳で本人が希望してもその子の親がなかなか旅を許してくれなかったりと、いろいろあったんだけど結局旅に一緒に来ることになったの。今までで会ったことのある転生者は翔太と安奈だけね。それからの旅も順調に進んでいったわ。でも、ちょうど私の16歳の誕生日の日、悪夢としか言いようのないことが起こったの。」


 恐怖のせいか逆に怒りのせいか体が震えている。


「大丈夫か?」


「ええ、大丈夫よ。その時はいきなりだったわ。誰もいない平地の所を移動していたとき急に空が暗くなっていき、何か分からない黒い大きい塊が目の前に落ちてきたの。そしてその塊から足が生え、手が生え、羽が生え、頭ができたら、私達を襲ってきた。私達は強かったわ。この世界じゃたぶん最強だったはず。なのに奴はそれを優に越す強さだった。最初に安奈、次に翔太が死んだわ。そして最後私だけが残った。私も死を覚悟して最後の攻撃をしようとしたの。でもそのとき下半身が消え、死んだはずの翔太が私に言ったの、逃げろって。私だけ生き残るのは嫌だったけど最後に、お願いだ、なんて言われたら断れないよね。だから私は攻撃を中断して転移魔法で生まれ育った村に帰ったの。」


「それは、つらいなんて一単語じゃ表現できないな。」


翔太とは恋愛感情もあっただろうし……。


「ええ。それで、もう分かったかもしれないけど、私はそいつを倒したい。それであなたの力を借りたいの。あなたにとって利益はほとんどないわ。それどころかリスクがかなり大きいわ。だから、拒否してもいい。どうするかはあなたに任せる。」


「フフ、それ相当断りにくい頼みごとだな。まあ別にいいよ。手伝ってやるよ。どうせ暇だしな。」


「頼んどいてあれだけど本当にいいの?死ぬかもしれないよ?」


「この俺が死ぬ?想像できねーな。」


「ごめん。でも、本当にありがとう。」


「おいおい、そんな申し訳なさそうな顔するなよ。俺が望んでやることなんだから俺が死んだら俺のせいだ。真紀、さんは自分の事を心配しておけばいい。」


「真紀でいいよ。でも一応言っておくけどこっちの世界ではマリレーヌってことになっているからね。」


「そうか。マリレーヌって言いにくいな。じゃあ俺の事は隼人って呼んでくれ。」


「分かったわ。これからよろしく、隼人。」


「ああ、こちらこそよろしく、マリレーム。」


「マリレーヌよ。言えれないなら真紀でいいって……。」




 その日は疲れているので寝ることにした。

 次の日、俺達は早速旅の準備に取り掛かることにした。


変な所に気づいたのでちょっと訂正しました。内容が大きく変わるものではありません。

読んでくださった方ありがとうございます!

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