第三話 エルフに捕まる
前回よりちょっと長めにしました。
神様のところに呼ばれたときと同じように周りが眩しくなっていく。
そういや俺ちゃんと神様って様付までしてて、初対面で普通にため口で話しちゃったな。まさかこのせいでバチあたらないよな?神様も結構フレンドリーだったし大丈夫か。
そんなこと考えている間に光が徐々に引いていき、周りの様子が分かるようになってきた。
今いるとこはどうやら森の中みたいだ。木が密集しているせいでちょっと暗い。さっきまで眩しかったせいもあって余計暗く見える。
「すぅ~はぁ~。それにしても空気がものすごくおいしいな!」
友達に借りて異世界トリップ系の本をいくらか読んだことあるけどやっぱりこの異世界もまだあんまり文明が発達してないのか?そういえばこういうこと神様なんも言ってくれなかったな。
そのとき一斉に鳥が飛んでいく音がした。
気になって振り返ってみたら、
「おいおい、早速かよ。」
そこには高さ6mくらいの熊みたいなのがいた。ただ熊と大きく違うのは真ん中の爪が2mほど鋭く伸びていることだ。しかもみたところ金属っぽい。
そいつはその爪で真横にひっかいてきた。速度もそれなりにある。でもそれを俺は後ろに跳ぶことで難なく避ける。
避けられたのにイラついたのか煩く咆哮するとさっきよりも速い速度で連続で攻撃し始めた。っていうかキレるの早!
攻撃速度が速くなったといってもぜいぜい時速100~120kmだろう。半年前の体力測定で時速180kmだした俺があたるはずない。
「でもずっと避けるのも疲れるし、そろそろ終わりにするか。」
というわけですこし大きく後退したあと思いっきりジャンプして熊もどきの顎めがけてアッパーをした。
一撃でノックアウトできたのはいいが予想以上に硬かったので手の甲の骨が複雑骨折(開放骨折)してしまった。
《天羽が殴ったのは熊もどきの顎の骨の部分だ。熊もどきが死んだのはこれにより脳自体が揺さぶられ、脳震盪を起こしたためである。》
本来ならその名の通り感染症などを防いだりしなくてはならなく、治療が複雑になるのだが俺の場合は骨をそのままもとに戻すだけでよかった。とはいえ戻すのには時間がかかるので指を切られたときよりも痛みを感じる時間は長く、地獄だった。
もとの位置に戻すとあっと言う間に治った。
「この骨折だけはもうならねーぞ、絶対に。」
心にそう誓った。
この後俺は熊もどきの死体をもって、というか持ち上げてすぐにその場から離れた。
理由は俺の血の匂いに反応するなにかがいるだろうと思ったからだ。
熊もどきの死体を運んでいるのは食料にできたらするためだ。それにこいつはほとんど出血してなかった。
しばらく移動すると湧き水が出てたまってるところがあった。
ちょうど喉が渇いていたし、見たところ飲めそうなので飲んでみる。
「うめー!!こんなにおいしい水は飲んだことないわ。おかわり!」
といって10杯くらい飲んでしまった。
「さてと、今からなにしよう。」
空を見てみると、木のせいで太陽はみえないが明るさ加減から日が暮れそうなのに気が付く。
暗くなってからだと火を点けるのが難しくなるため急いで薪を探しにいった。
走りまわって薪を集めていたら30分でようやく十分な量が集まった。
火の起こし方は一応知っていたので何とか点けられた。
そして、ちょっと楽しみにしていた熊もどきを料理することになった。
天羽 隼人のお料理の時間で~す♪っていうのはさすがに柄じゃないか。 でも行った簡単な手順について説明しよう。まあ料理全くの素人で人に語るほどでもないけど。
まず包丁がないので適当に石を持ってきます。そしてその石を割ったり削ったりして石包丁を作ります。
次に熊の内蔵を取り出します。ん、魚ぐらいの内蔵しかみたことないからこの大きさは、◎●$♪×¥&▲。と放送事故が入った後、本来なら血を水で流した後皮を剥がしたりするのかもしれませんが大きすぎるので先に皮を剥くことにします。
《もうこの時点で柄じゃないといいつつやってしまう天羽だった。》
全然きれいに剥けませんでしたがそのあと手頃なサイズに切って湧き水で洗います。
そして適当な大きさの熊もどきの骨を串がわりにして肉を刺して焼いたらあっという間に日が暮れてできあがり。
「まったく、料理って疲れる。」
と言いつつ肉をひとかじり
「これは……うまい!!!」
脂は少なめだが身は引き締まっていて、調味料が無くても問題ないくらい肉そのものに味がある!これならむしろ脂がない方がくどくなく、次々食べていけるのがいい!
しかしさすがに全部は食べれないので干し肉にしようと思ったが、塩がない!燻製も方法知らない!
とりあえず塩がなくてもなんとかなるのかもしれないと思って干すことにした。
火に夜の間は点いているように薪を多めに入れておく。
「よし、そろそろ寝るか。」
治癒力が高いとはいえ体は疲れる。
それに普段それほど動くことのない日本での生活になれていたため俺はかなり疲れており、すぐに深い眠りについていた。
そのため寝ている間に干していた肉が野生の動物達によって食べられていたことに気が付かなかった。
次の日の朝。
「あれ?干していた肉は?」
気づいた時にはすでに手遅れで、跡形も残っていなかった。
「く、くそ!朝食べようと思ってたのに!」
仕方がないのでその日の朝は水だけで済ました。
《水を飲んだあとしばらく天羽は熊もどきの骨や爪を使って武器を作れないか考えていた。しかし硬すぎて加工が難しいと判断しあきらめていた。》
とりあえず町に行くことにしよう。しかしどっちに行けばいいかわからない。
木の上で見渡せば見つけられるかもしれない。
そう思って登ってみたが見渡す限り森、森、森。
困ったな。でもとりあえず森は抜けないといけないよな。
だったら、ということでそばにあった木の枝をとってまっすぐ落とした。
倒れた方向はこっちか。神はこっちに行けと言っているようだ。しかし俺はその逆を行く。
ということで木が倒れた方向の逆に向けてまっすぐ全力疾走した。
「やっほーい!地球でこんなに思いっきり走ったことなんてないぜ。」
そしてそのまま一時間走り続けた。いろいろな奇妙な動物がいたが全部無視した。
治癒力高いおかげで全然筋肉が痛くならない。しかも走るとその分足の筋力がつくみたいで速さが最初の2倍くらいになっていた。
「だいぶ走ったけどまだ終わりが見えない。どんだけデカいんだこの森?」
そこで、近くにあった湖で一休みすることにする。
この湖の水もきれいだし喉も乾いていたので飲んでみた。
ゴクッゴクッゴク、うまい。ここの水もうまい。やっぱり自然が壊されてないからかな?
休憩している時にふと、湖の反対側に遺跡らしきものがあるのに気が付いた。
しかし遠すぎてよく見えない。
「気になるな~。湖を迂回して走っていってもいいけどめんどくさいな。よし!やったことないけど水の上を走っていこう!伝説だと天草四郎だって水上歩行できたんだ、俺にだってできる!」
湖の反対側まで約1km。体力はもつだろう。それにただ濡れたくないだけで失敗したら泳げばいい話だ。
助走を多少つけて、走った。
全然心配無用だった。
そこは遺跡なんかじゃなくまだ使われていそうな教会だった。大きさは普通の家二軒くらいだ。もちろん普通というのは日本基準での話だ。
好奇心旺盛な俺は早速中に入ってみた。
中には大理石で作られた女神の像があった。神っていうのはもしかしたら違うかもしれないがなんとなく俺の会った神様に似ているのでそう思った。
きれいだったのですこし見惚れていると後ろのドアが不意に開かれた。
「誰だおまえは!」
えっ?
「人間がここで何をしている!」
驚いた理由は主に二つある。
一つは怒鳴っている人の言葉が日本語じゃないのに理解できるからだ。
もう一つはその怒鳴ってきたのが人間とは違ったからだ。
友達に借りた本の表紙に描かれていたやつと顔の特徴が似ている。ということはたぶんこいつは不老長寿のエルフだ。
とか考えているうちに怒鳴ってきたやつは、人間が教会で変なことしているぞとか叫んで他の仲間を連れてきていた。皆弓を持っている。
そしてまた質問をしてきた。
「答えろ!お前はこの神聖なエルフの地の神殿で何をしていた!」
やっぱりエルフか。
言葉が通じるかどうか分からないけどさすがになにか答えないと弓で撃たれそうだ。
「すみません!森に入ったら迷ってしまったんです。すぐここから出て行きますからどうか許してください。」
しゃべると自然にエルフたちと同じ言葉がしゃべれた。
ありきたりな返事だったけどこれで許してもらえるだろうと思っていたらエルフたちはなんだか驚いた顔をして騒然とし始めた。
そしてまたさっきのエルフが質問してきた。
「お前はどこでエルフの言葉を知ったのだ?」
ちょっと待てマジか。人間は普通、エルフの言葉わからないのか?いや、よく考えたら普通そうか。
その前になんでそれならエルフ語で質問してきた?
なにか言わせといて、訳の分からない言葉で騒いでいるのを危険だと思って殺しましたとか殺すための口実をつくるためか?でもなんのために?
「えーと、あのー、僕のいた町にもエルフの方がいてその方から教えてもらいました。」
とっさに考えて言ったけどまたこれにも落とし穴があるんじゃないだろうな。
「人族の住むところにエルフの者がいたと?確かに変わり者のエルフはいるからな。」
よし!うまくいったか!
「しかしだ、こんな森の奥に普通迷いこまないぞ。食料はどうしていた?」
まだ怪しむか。
「動物を狩っていました。」
「武器は?」
「今日壊れてしまって……。」
「そうか。おいピエール。こんな子供が森に迷い込んでしかも食料はこの森の動物や魔物を狩って食べていたなんてことがありえるか?」
ピエールと言われたエルフが答える。
「はっ、私の見解だと不可能です。第一ここから一番近い人族の住む村でもまっすぐ歩いて5日はかかるので迷い込んだには不自然です。それに森の外側はそこまで強い動物も魔物もいませんがこのあたりまで来ると一般のエルフ兵最低3人は必要な強さのものがほとんどです。仮に迷い込んだとしても食料を子供一人で狩りをして調達なんて不可能です。逆に食われる可能性の方が高いです。」
余計なこと言うなやピエールさんよ。
「ということだ。お前が危険なやつじゃないと分かるまで牢屋に入っていてもらおうか。」
怒鳴っていたエルフがニヤッと笑って言う。
面倒な事になってきたな。
読んでくださった方ありがとうございます!