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再会

個人的お気に入りキャラ登場。

一番好きなのは主人公ですが。

口頭での案内を終え、世間話をしながら二人は進む。


「それにしても、ずいぶんギリギリに来たよね」

「まぁ色々とありまして。準備とか用意とか手回しとか細々したものが積み重なりまして」

「………お疲れさま」


若干遠い目になった斎の様子に、穏は追求することを諦めてくれたらしい。

割と本気で労わる声音だった。

自分はそんなに疲れた顔をしていただろうかと斎が疑問に思う場面があり。


「生徒会って普通に選挙で選ばれるんですか」

「うん、総選挙が行われるよ。一年に一度」

「立候補したんですか?」

「ううん、抱きたい・抱かれたいランキングで決まるかな」

「………今何やら幻聴が聞こえた気が」

「僕は抱きたいランキング三位だったから、副会長になったんだ」

「………」

「慣例には逆らえないよね」

「……お疲れさまです」


斎が乾いた笑みを浮かべる穏をねぎらう場面があった。

五階建てという驚異の大きさの購買に色々な意味で疲れ果て、通り過ぎたところで。


「楽しそうじゃねぇか、副会長さんよ」


一人の少年が姿を現した。


「……っ!」


穏の全身が明らかに緊張状態になる。

明るい金髪を無造作に伸ばした、がっしりした体躯の少年。

穏よりもさらに背が高く、野性味にあふれた顔立ち。

鋭さを持った瞳は、緑がかった茶色で。

(………ん?)

斎の中で、何かが引っかかった。

少年の後ろからさらに数人が姿を見せ、穏が斎の前に立つ。


「何をしに来たんだい?」


穏にしては珍しく、どこか挑戦的な物言いに、少年はにやりと笑う。


「いや?副会長さんが楽しそうに女子と話してる、って聞いてよ。

どんなやつなのか顔を見に来ただけだぜ?」


(絶対それだけじゃないだろう)

斎は内心でつっこみつつ、改めて少年を見る。

知り合いに金髪の不良少年などいないはずだが、何かが引っかかっていた。

すると、少年の隣に立っている黒髪に赤メッシュの少年が口を開く。


「わざわざ遠まわしに言うこともないだろ、まもる


言っちゃえばいいじゃん、後悔するぞって。

赤メッシュの少年が何やら続けたが、斎の耳には入ってこなかった。

まもる、と彼は金髪の少年を呼んだ。

そして彼女の知る人物にも一人、まもると呼ばれる少年がいた。

斎は穏の肩から金髪少年の顔をじっくりと見る。

やはり、面影があった。

だが、確信は持てない。

目の前では穏も口を開いて何やら応酬したらしく、空気がどんどん険悪なものになっている。

が、斎はお構いなく口をはさんだ。


「そこの金髪の少年に質問だ」

「斎さんっ!?」


穏が驚いたような声を上げるが、そんなことも気にならない。

今は、目の前の少年の正体を確定するほうが先だった。

斎は金髪不良少年を見据えて問う。


「平安京遷都は?」

「………あ?七百九十四年だろ?」


唐突すぎる質問に場の空気が固まった。

誰もが反応できずにいる中、金髪の少年は眉を顰めながらも質問に答えてくれる。


「聖徳太子が摂政になったのは」

「五百九十三年だろが」

「禁色の中でも最も位が高い色は?」

「紫」

「蝦夷地経営のために陸奥国に置かれた軍政府」

「鎮守府……って何なんだよ、お前!!」


妙な質問の意図が分からずに、少年は苛立った声を上げた。

斎はすでに、確信を持っていた。

金髪の少年の苛立ちに引きずられて殺気立つ少年たちを見て、斎は少し感心したように言った。


「鎮守府って、お前の名前が入っているから覚えたんだったよな」

「………は?」

「でなかったら小学校の頃に覚えないだろ、―――しず」


斎は穏の横に立ち、軽く首を傾げた。

幼い頃から変わらないと言われる癖。


「………え?」


金髪の少年は目を大きく瞬かせ、斎を上から下までとっくりと眺める。

周りは一触即発の雰囲気でありながら、二人の様子を窺っている。

少年は再び視線を上げて、斎の顔を見て―――


「………ま………まさか………」


ふるふると小刻みに震えながら斎を指さした。


「………い、いつ?」


その表情には僅かばかりの恐怖が混じっていた。

斎はひら、と手を振る。


「久方ぶり。金髪もなかなか似合うな」

「……っ、嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


金髪の不良―――石蕗鎮つわぶき まもる

二人はおよそ三年ぶりに再会した。


半ば悲鳴のような声を上げた鎮を、彼の周囲に立つ少年たちは驚いたように見る。

まるで、初めてそのような声を聞いた、とでも言いたげだ。

穏もまた、驚きを露に斎を見た。


「斎さん、知り合い?」

「腐れ縁にして幼馴染みです。というかしず、色々と私に言うことがあると思うんだが?」


端的に答えて鎮を見ると、彼の顔から血の気が引いた。

真っ青になっていく鎮を見、周りの少年たちが慌て出す。

しかし鎮は全く気づいていない。

顔全体が真っ青に染まったところで。


「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


勢い良く土下座した。

いっそスライディング土下座になりそうな勢いの土下座だった。

周囲の人間が驚きのあまり絶句している中、斎は目を細めて言う。


「不良になるのは誰も止めないけれど、脅そうとしていたよな明らかに」


止めないのか、と周囲の人間たちは機能停止した脳内でつっこむ。

というか、不良なのだから脅しぐらい日常茶飯事だろう、とも。


「すいません人様に迷惑かけるようなマネしてごめんなさい今後は二度とやりませんからぁぁぁぁぁぁぁ!!」


人様に迷惑をかけるのが不良ではないのだろうか。

皆がそう思った。


「私相手だからあれで済んだけど、他の人間にやっていたら……分かっているよな?」

「やらない!!というかやってない!!ほんのちょっとした出来心だったんだよ!!

ほら、新学期だし、新校舎になったからさ!!!」

「そうか、ちょっとした出来心で人様を脅そうとしていたと」

「墓穴掘ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


鎮が地面に伏して再び悲鳴のような声を上げたところで、幾らか立ち直った穏がポツリと呟いた。


「………石蕗鎮と言えば、黄金の獅子王って二つ名で呼ばれる、結構有名な不良なんだよね………」

「実態は微妙に残念な奴ですよ。大事なところで失敗するような奴です。

というか、黄金の獅子王って……厨二びょ」

「名乗ってないから!!勝手に呼んでる奴がいるだけだから!!」


鎮の必死な様子に、斎はああ、と肯定の声を上げる。


「それぐらい分かっているが?」

「だと思ったよ!!」


ダンっ、と地面を叩く鎮、既に口調すらも変化していた。

斎は未だに目を白黒させている周囲を見やり、土下座をしたままである鎮の前に立つ。

赤メッシュの少年だけは我に返り、斎と鎮を交互に見た。

斎は我関せずと鎮に声をかける。


「しず」

「………おう」


恐る恐る顔を上げた鎮を見て、再び小さく首を傾げる。


「これから三年、よろしく」

「………おう!」


一瞬目を見開いた鎮は、にっと笑った。

その笑顔は、昔と何一つ変わっていないもので。

外見は変わっていても、中身はやはり変わっていないなと斎は思った。


「取り敢えず今度説教な」

「それだけはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


頭の中身も変わっていないのでは、と思ったのはここだけの話である。


イジられキャラっていいよね←

ということで、幼馴染みくん登場です。

誤字・脱字があれば、報告お願いします。


5月13日 最後の行を付けたし

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