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【脚本】真ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)~神々の黄昏と陽だまりの詩~  作者: たくみふじ


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第三話 神隠しの噂と砕かれた日常㈡

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

〇シーン7 高橋家・カイとソラの部屋(夜)

カイとソラの部屋。

電気もつけずに完全に暗闇に沈んでいる。

一階のリビングからは警察の事情聴取に疲弊しきった両親の怒鳴り合う声が漏れ聞こえてくる。

普段は仲の良い両親が極限のストレスと死神の干渉によって心を壊されかけている。

孤立無援。家の中も外もすべてが敵に回った状況。

ソラがベッドの上で膝を抱えて泣きじゃくっている。


ソラ

「カイ……もう、やだよ……。私たちが一体何をしたっていうの……? なんでこんな目に遭わなきゃいけないの……」


彼女の心は限界に達していた。

カイは窓辺に立ち外の深い闇をじっと見つめている。

その瞳には千年の地獄を耐え抜いた時と同じ静かでしかし決して消えることのない闘志の炎が宿っている。


カイ

「泣くな、ソラ」


カイの声は低く不思議なほど落ち着いていた。


カイ

「これは試練だ。奴らが仕掛けた、僕たちの心を折るための最悪のゲームだ」


カイは振り返りベッドに座るソラの冷たい手を取る。


カイ

「ここで僕たちが諦めたら、本当に終わりだ。高山くんを見つけて、僕たちの無実を証明するしかない」


ソラ

「でも、警察も大人たちも見つけられないのに、子供の私たちにどうやって見つけるの……」


カイ

「警察には見えないものが、僕たちには見える」


カイは自分の胸を強く叩く。


カイ

「感じるんだ。あの『嫌な気配』を。奴らが子供を隠すなら、普通の人間が近づかない、霊的な澱みが溜まりやすい場所を選ぶはずだ。学校での噂を思い出して」


二人の脳裏に同じ場所の光景が浮かぶ。

町の外れ、川沿いにある数年前に閉鎖された古い廃工場。常に湿った嫌な風が吹き子供たちの間で幽霊が出ると噂されている場所だ。


ソラ

「……廃工場」


カイ

「行こう、ソラ。今夜だ。奴らの思い通りにはさせない」


ソラ

「うん……カイが言うなら、行く」


ソラが涙を拭い立ち上がる。

二人は両親が寝静まるのを待って窓からこっそりと抜け出す準備を始める。

懐中電灯、軍手、そしてお守り代わりのビー玉をポケットに詰める。

その時、部屋の隅の暗がりから二つの光る目がこちらを見ているのに気づく。

クロだ。

彼はいつものクッションから立ち上がると無言で二人の足元に来てちょこんと座る。


カイ

「クロ……? お前は残ってていいんだよ」


クロはまるで俺も連れて行けと言うかのように短く力強く吠える。


クロ

「ワン!」


その瞳にはただの愛玩動物にはあり得ない戦士の覚悟が宿っている。


シジマのモノローグ

「……やれやれ。こんな幼い子供たちを死地に放り出すわけにはいかんだろう。本当ならこんな危険な真似は止めるべきだ。だがこのまま座して死を待つよりは運命に抗う方が彼らの魂にとっては健全だ。それに相手がヤミたちだというならなおさら俺が付いていかねばなるまい。見せてやるさ。落ちこぼれの意地ってやつをな。俺の懐には閻魔大王から授かった三分間限定の変身能力が眠っているのだから」


〇シーン8 廃工場の外(夜・嵐)

分厚い鉛色の雲が月明かりを完全に遮断し横殴りの雨がアスファルトを激しく叩きつけている。

時折紫電が闇を引き裂き腹の底に響くような雷鳴が轟く。

禍々しい霊気が大気を乱し自然界の理さえも歪めているかのような不吉な嵐。

その暴風雨の中をカイ、ソラ、クロの三つの小さな影が進んでいる。

町の外れ、増水した川のほとりに黒々とそびえ立つ巨大な廃工場。

錆びついた鉄骨と割れた窓ガラスが亡霊のように並ぶ立ち入り禁止区域。

工場の周囲を囲む錆びたフェンスの前に立ちカイが呟く。


カイ

「……やっぱり、ここだ」


雨合羽のフードから覗くカイの瞳は千年の地獄を見据えてきた男の冷徹さを宿している。

工場の内部から放たれる粘りつくような死神たちの気配を明確に感じ取っている。


ソラ

「……うん、私にもわかる。ひどく嫌な感じがする」


ソラが身震いをする。

彼女は自分の両手をじっと見つめる。

三年前のあの日、車ごと崖から落ちそうになった瞬間に体の中から湧き上がってきた熱くて不思議な感覚を思い出す。

ソラは目を閉じ意識を集中させる。

雨音を遠ざけ自分の内側にある熱を探る。


ソラ

「……北西の角。一番大きな建物の、二階あたり……そこに、献太くんの微かな気配がする気がする」


カイ

「ソラの勘は鋭いからな。行ってみよう」


カイがフェンスの裂け目を押し広げ敷地内へと足を踏み入れる。

泥濘む地面に足を取られそうになりながら慎重に進む。

クロも泥にまみれることを厭わず低い姿勢で周囲を警戒しながらついてくる。

正面の巨大な搬入口は錆びついたシャッターが降りている。

通用口と思われる鉄の扉には大人が数人がかりでなければ壊せそうにない極太のチェーンと南京錠がかけられている。

カイが扉を力いっぱい押し引いてみるがびくともしない。


カイ

「……ダメだ。鍵がしっかりかかってる」


カイが悔しげに扉を叩く。

ソラはその南京錠をじっと見つめ右手をかざして念じる。

魂の奥底から無理やり力を汲み上げるような疲労感。

ガタッ……ガタガタッ! と南京錠が誰の手も触れていないのに激しく震える。

だが錠前は震えるだけで外れることはない。


ソラ

「はぁ、はぁ……ダメ……重すぎる……」


ソラが膝をつき力が霧散していく。


カイ

「ソラ、今の……」


ソラ

「ごめん、カイ。……やっぱり、私じゃ開けられない」


万策尽きたかとソラが絶望的に顔を伏せたその時。


ひかりの声

「二人とも、待ってたよ!」


背後から雨音を切り裂くような声が響きカイとソラが驚いて振り返る。

そこには黄色いレインコートを着たひかりが息を切らして立っていた。


カイ

「ひかり!? どうしてここに!?」


ひかり

「お父さんとお母さんが寝た後に隠れてこっそり抜け出してきたの。一人でずっと考えてたんだ。もし私が犯人なら、どこに献太くんを隠すかって」


ひかりが工場の威容を見上げる。

その瞳は強い意志で輝いている。


ひかり

「遠くに連れ去ったら足がつくし、誰かの家ならすぐに見つかっちゃう。だから、みんなが知ってるけど怖くて誰も近づかない場所……この廃工場が一番怪しいと思ったの!」


論理的思考の煌めき。


カイ

「ありがとう、ひかり。……でも、入り口がないんだ。僕たちの力じゃ、この扉はどうしても開かない」


ひかり

「入り口がないなら、別の場所を探すしかないよ。……あ!」


ひかりが懐中電灯の光を上の方へと向ける。

地上から五メートルほどの高さにある換気用の小さな窓のガラスが一部欠けている。


ソラ

「……ダメだ。高すぎて届かないよ」


重い沈黙が流れる中、それまで黙って三人のやり取りを見ていたクロがおもむろに前に進み出る。

クロは三人を見上げ深く長くため息をつく。


シジマのモノローグ

「……やれやれ。仕方あるまい。ここが使いどころか。正体を明かすのはリスクが高いがソラに自信を取り戻させるためには誰かが背中を押してやる必要がある。閻魔大王から授かった三分間だけの奇跡の力を今解放する」


クロは低く唸り声を上げ全身に力を込める。


クロ

「グルルルル……!」


次の瞬間クロの体が漆黒の闇よりも濃い黒い光に包まれる。


ひかり

「えっ、クロ!?」


光の中で豆柴の小さなシルエットが見る見るうちに引き伸ばされ変形していく。

四本の足は鋭い鉤爪へと変わり黒い毛並みは硬質な羽毛へと変化する。

愛らしい鼻先は肉を引き裂くための鋭利な嘴へ。

バサッ! と光が弾け飛ぶと同時に巨大な翼が広げられる。

そこにいたのは翼を広げれば二メートルはあろうかという威風堂々たる巨大な黒鷲だった。

三人は目の前の信じられない光景に声も出せずに立ち尽くす。

黒鷲は金色の鋭い瞳で一瞥すると鋭く鳴き力強く羽ばたいて夜空へと舞い上がる。

豪雨を切り裂き一直線に二階の割れた窓へと飛翔する。

黒鷲は鋼鉄のような爪で内側から施錠されていたロックを弾き飛ばし古びたカーテンを嘴で引きちぎって中へと侵入する。

数秒後窓から一本のロープが投げ落とされる。


シジマの声

「さあ、今のうちに! 私の変身が解ける前に、登ってくるのだ!」


シジマの心の声が直接三人の頭に響く。


ひかり

「しゃ、喋った……!?」


カイ

「説明は後だ! 行こう、ひかり!」


驚きを飲み込みカイ、ソラ、ひかりの順で必死にロープをよじ登る。

雨で滑りやすくなっていたが上から黒鷲が力強く引き上げてくれたおかげで全員二階の窓から工場内部へと侵入することに成功する。

床に転がり込んだ三人が息を整える間もなく黒鷲の体が再び光に包まれ元の豆柴に戻る。


カイ

「……クロ、お前……」


クロ

「わん」


クロがすまし顔で尻尾を振る。

ひかりが信じられない様子でクロの体をぺたぺたと触る。


ひかり

「夢じゃ……ないよね? 翼、ないよね?」


〇シーン9 廃工場内部

外の嵐の音が嘘のように遠く不気味な静寂に包まれた工場内部。

湿ったカビの匂いと機械油の酸化した匂いそして濃密な霊気の淀みが漂う。

懐中電灯の光が埃の舞う空間を切り取る。

錆びついた巨大なプレス機やベルトコンベアが眠る怪物の骨格のように闇の中に浮かび上がっている。


ソラ

「こっちだ……。この奥から、献太くんの気配がする」


ソラが小声で言い先頭に立つ。

一行は錆びた鉄の階段を上り渡り廊下を進んでいく。

一歩進むごとに空気の密度が増していくような圧迫感がある。


ソラ

「カイ、ストップ!」


突然ソラが鋭い声で制止する。


カイ

「え?」


カイが足を止める。

一歩先は一見なんの変哲もない鉄板の床だ。


ソラ

「……そこ、踏んじゃダメ」


ソラがその床をじっと凝視し意識の糸を伸ばす。

脳裏に錆びついて脆くなった鉄骨の悲鳴のような軋みが響いてくる。


ソラ

「その床、腐ってる。念動力で触れたら、ボロボロだってわかった……。踏んだら、抜けるわ」


カイが足元の床板を懐中電灯で照らし落ちていたボルトを軽く投げ落とす。

ガシャッ! とボルトが当たった衝撃だけで床板が崩れ落ち暗い奈落へと吸い込まれていく。

下は十メートル以上の吹き抜けだ。


カイ

「……すごいな、ソラ」


ソラは自分の手のひらを見つめる。

ただ動かすだけではなく物に触れずにその状態を知ることもできるのだと理解し恐怖よりも未知の感覚への高揚感が勝り始める。


〇シーン10 同・最奥部の鉄の扉前〜広大な部屋

いくつもの物理的な罠をソラの感知能力とクロの嗅覚でやり過ごし彼らはついに工場の最奥部北西の区画にある一際大きな部屋の前にたどり着く。

重厚な鉄の扉の隙間からは献太の微かな生命反応と絶対零度の冷たい霊気が漏れ出している。

カイの魂が警鐘を鳴らす。


カイ

「……ひかりは、ここで待っていてくれないか。ここから先は、本当に危険だ。何が起こるか分からない」


ひかりが首を横に振る。


ひかり

「嫌。ここまで来て、一人だけ安全な場所にいるなんてできない。私も行く。足手まといにはならないようにするから」


カイ

「……わかった。でも、僕の後ろから離れないで」


カイが深呼吸をし鉄の扉に手をかける。

ギギギギギ……と錆びついた蝶番が悲鳴のような音を立てて開く。

部屋の中は広大な空間で天井は高く窓はすべて鉄板で塞がれている。

その中央、床に描かれた複雑な魔方陣の上に気を失った高山献太が横たわっている。

胸がかすかに上下しており生きている。


ひかり

「献太くん!」


ひかりが駆け寄ろうとするのをカイが腕を掴んで止める。


カイ

「待て!」


死神の声

「よく来たな、小僧ども」


部屋の闇の奥から墓石を爪で引っ掻くような不快な声が響く。

闇が凝縮し漆黒のボロボロの衣を纏い身の丈ほどもある巨大な鎌を手にした異形の死神が現れる。

顔は見えずフードの奥で二つの赤い光が不気味に明滅している。


死神

「まさか、ここまでたどり着くとはな。人間にしては上出来だ。だが、遊びはここまでだ。貴様らがここに来ることは想定内。その小僧は、貴様らをおびき寄せるためのただの餌に過ぎん」


死神が鎌を一閃させると風圧だけで床のコンクリートに亀裂が入る。


死神

「さあ、狩りの時間だ。お前たちの魂、ここでまとめて刈り取らせてもらう!」


圧倒的な殺気が物理的な圧力となって三人に襲いかかる。

ひかりは恐怖で足がすくみ小さな悲鳴を上げる。

カイはひかりを背に庇いソラは両手を前に突き出して構える。

クロも低い唸り声を上げ牙を剥き出しにして死神を睨みつける。


ソラ

「させるもんですか! 私たちは、何も悪いことなんてしてない! 献太くんを返して!」


死神

「悪か……。我らにとっての悪とは、秩序を乱す存在のことだ。貴様らの存在そのものが、罪なのだよ」


死神が問答無用で地面を蹴り黒い疾風となって迫る。

巨大な鎌の切っ先がカイの喉元へと迫り絶体絶命の危機が訪れる。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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