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90億人の精神集合体が異世界に召喚されたのでみんなでちょっとお邪魔してみた。  作者: ハマタハマオ
第2章 箱庭のシミュレーション、あるいは異世界の創世記
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第14話:神様のノートと、秘密のシェルター


  「……南は『金』、西は『鉄』。どうしてあいつらは、協力し合えないんだろうね。まるで……ボクたちの教室みたいだ」 


   ◇ノートに描かれた四分割の地獄


 オダギリは机に向かい、一冊のノートを広げていた。画面に流れる膨大なテキストログを整理するための、彼なりの「設計図」だ。

 彼は無意識に、ペンで紙を四つの領域に分けた。


    挿絵(By みてみん)


*  左上【A】北部:ヴィーダーラント王国 (エドたちがいる、寒冷なる故郷)

*  右上【B】西部:アイゼンヴェルク連邦 (鉄と蒸気が支配する軍事国家)

*  左下【C】南部:グロースハンデル大公国 (金こそが唯一の正義である商業国家)

*  右下【D】東部:フィンシュテルニス魔国 (これから向かう、霧深きバグの温床)


 オダギリは『D』の領域に、大きな『×』印を書き込んだ。

 「南は『金』、西は『鉄』……。どうしてあいつらは、協力し合えないんだ」

 それは画面の向こうへの愚痴であり、同時に、自分の教室に向けた溜息でもあった。


  要するに、オダギリ君はこの異世界を、自分たちが生きる「正解のない社会」の縮図として見ていたんだ。四つの国がそれぞれの理屈パラダイムでぶつかり合う様子は、彼にとって、自分を消してやり過ごすしかない「現実の教室」そのものに見えたんだね。 


  ◇ 正しさの代償、境界線上のチャイム


 ふと、スマホが震えた。クラスメイトからの、無遠慮な通知。

 『タチバナ、今日も休み。自分の正しさを一歩も曲げないから敵が多いんだよな、あいつ』


 オダギリはスマホを放り出し、深く椅子に沈んだ。

 タチバナさんは、自分とは違う。彼女は傷ついても、泥を投げつけられても、自分の旗を下ろさない「ファイター」だ。

 (……人と争うから、傷つくのに。適当に笑っていればいいのに)

 そう毒づきながら、オダギリの心のどこかでは、その折れない瞳をたまらなく眩しく感じていた。


 ――ピンポーン。


 静かな部屋に、不意にチャイムが響いた。

 扉を開けると、そこには丁寧に畳まれたオダギリの体操服を抱えた、タチバナさんが立っていた。

 力なく立ち去ろうとする彼女の背中を見つめた時、オダギリの脳内ではいつもの「停止信号」が点滅したが、彼はそれを初めて無視した。


 「待って。……今、大変なことになってるんだ。とにかく、早く!」

 「えっ……オギ?」

 自分でも驚くほどの強引さで、彼女の手を引いた。階下から母親が「あら、トトちゃん、珍しいじゃない」と声をあげたが、今は構っていられない。,


  ◇ 二人の観測者オブザーバー


 部屋に入り、オダギリは真っ先にPCのモニターを指し示した。そこには、シミュレーター『ヒム』が吐き出す、膨大なログの雨が降っていた。


 「ふーん……オギ、昔からこういうの得意だったもんね。これが見せたかったの?」

 「そうだけど、違うんだ。これ……生きてるみたいだろ」


 オダギリは昨夜から書き始めた「記録ノート」を開き、文字だけの羅列の裏側で起きていることを必死に伝えた。

 異世界と繋がったこと、エドヴァルトたちのこと、そして九十億の魂が起こした奇跡。

 タチバナさんの曇っていた表情が、わずかに明るくなった。彼女は母が出してくれた菓子を頬張りながら、吸い込まれるようにログを見つめ始めた。


 「学校……しばらく、行きたくないんだ」

 画面を見つめたまま、彼女がぽつりと零した。オダギリは理由を聞かなかった。

 「オギが学校に行ってる間……これ、見に来てもいいかな。眺めてると、なんだか落ち着くんだ。……みんな『同じ』じゃないから」


 「いいよ。いくらでも見てればいい。じゃあ、明日からの観察は任せた。ノートへの記録も頼むよ」

 「……任された。明日から、よろしくね」


 彼女は、静かに流れるログの世界へと視線を戻した。現実の「雨」を避けて、彼女はオダギリの創った箱庭へと、その魂を預けた。


 [HIM_Core] 解析:二名の観測者(Observer)を承認。

 [HIM_Core] 警告:天国プロトコルに、新たな「ノイズ(不屈の意志)」が混入し始めました。


 PC本体は、電源ケーブルの有無を無視して、トクン、トクンと熱い鼓動を刻み続けていた。


 要するに、オダギリ君だけの「秘密のシェルター」だったこの部屋が、タチバナさんという新しい観測者を迎えたことで、異世界を動かす強力な「指令室」へと進化したんだ。現実世界で傷ついた二人の「意志」が、向こう側の世界をさらに激しくハックしていく燃料になっていくんだね。


    挿絵(By みてみん)


【第14話:状況まとめ】

エドヴァルト 「現実世界では、オダギリ君がタチバナさん(トトちゃん)を『共同観測者』として招き入れたようだね。要するに、ボクたちは今、二人の神様に見守られている状態になったわけだ。タチバナさんの『不屈の意志』というノイズは、ヒムの論理に大きな変革を促すだろう。この四分割された盤面アーキテラをどうハックし、停滞した均衡を打破するか……二人の観測者と共に、ボクたちの新しい戦略を練るとしようか、兄弟」,


毎日18:00にUP予定です、明日もぜひ見てくださいね。

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