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第 8話:宣戦布告?!初めてのお茶会

このお話はフィクションです。


両家の顔合わせも無事に済み、3ヶ月後の婚約式までは招待状を作成したり準備に慌ただし日々でした。




そんな中、王太子の婚約者であるレルロア・シタレン公爵令嬢からお茶会の招待状がアレクサンドラに届いたのだ。




「な…、何故急に…!?」




驚くアレクサンドラ。それもそのはずで春先の大舞踏会でデビュタントを済ませたばかりの田舎の伯爵家で高位貴族との接点は全くないのだ。




「アレクサンドラ、これは流石にお断り出来ないわよ?」




「そのようですわね。お母様…。」






親子揃って頭をかかえていた。


貴族家の友人もいないアレクサンドラを1人で交流もない高位貴族のお茶会に出さなければならないからだ。




「あなた、マナーはちゃんと出来るのだから覚悟を決めて行ってきなさい。」




「え…。嫌ですわ…。」




「ダメですよ。これから先、アルクレゼ家の一員となるのですからこれくらいはこなさなければ。」




「…!」




母マリアンヌに〝アルクレゼ家〟の名を出されてしまっては駄々をこねるわかにもいかない。




「わかりましたわ。」




はぁぁ〜と


ため息をついてしぶしぶ了承するアレクサンドラ。






「それでは出席のお返事をちゃんと書くのですよ。」




「はぁ~い。」




「お返事!」




「はい、お母様。」




嫌々ながらの返答に母から叱責を受けるアレクサンドラだった。母マリアンヌはマナーには厳しいのだ。










自身の部屋でお茶会出席の返事を書くアレクサンドラ。


ふと、ペンを書く手を止めて…




〝そう言えば、主催主のレルロア様は以前ルク様の事が好きだったという噂がありましたわね。


ですのに王太子様からご求婚があって婚約なされたとか…。ふぅーむ。これは…!まさか私の婚約をお聞きになって…?〟




少し考え込むアレクサンドラ。




〝ふふふ。まさかね!もう王太子様と婚約されてるのに今更なにかあるわけないですわね。〟




そして再びペンを取って手紙を書き始めた。






〝親愛なるレルロア様。

この春の良き日に素敵なお茶会にご招待頂きまして身に余る光栄でございます。レルロア様がお手入れなさっている王国でも美しいと一、二を争う有名な庭園にお邪魔出来る日が来るとは夢にも思っておらず、幸せでその日が待ち遠しく思います。是非とも出席致します。

-アレクサンドラ・フレシアテ-〟



〝これで大丈夫かしら…。高位貴族に対してドキドキするわ….。

でもこれから先、こういう事がいくつも発生するのね。これからはお母様に頼りっぱなしではいけないわね。〟


アレクサンドラは強く自身に誓ったのでした。





◆ ◆ ◆



2週間後のお茶会当日


主催主レルロアのシタレン公爵家は王国の東に位置する大貴族だ。この領地では果物が豊富で隣の国との国境手前にある山ではルビーが取れる豊かな領地だ。


開催の時間が近付くと共に数台の馬車が次々とシタレン公爵家へと到着する。

この国の春は雨が少なく、この日も素晴らしい天気に恵まれた。


アレクサンドラの馬車も公爵家に到着した。



「クレシアテ家のアレクサンドラです。本日はお招き頂きありがとうございます。」


出迎えてくれた執事にカーテシーを披露する。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。ご案内致します。こちらへどうぞ。」


コクンと頷き、執事に着いて行く。



段々と賑やかな雰囲気が伝わってきた。

〝あぁ…、緊張するわ。〟

アレクサンドラはドキドキしながら歩む。


豪華な装飾が施された庭園に足を踏み入れた瞬間、アレクサンドラは自分が場違いな場所にいるような気がした。きらびやかなドレスを纏った貴婦人たちが楽しげに談笑する様子は、遠い世界の出来事のように感じられた。


執事が主催主のレルロアの所まで案内する。



「お嬢様、こちらはフレシアテ令嬢です。」


ハッとしてすぐさまレルロア嬢に向かってカーテシーをして挨拶をする。


「フレシアテ家のアレクサンドラです。本日はお招き頂きありがとうございます。」


「………。」レルロアは沈黙していた。


〝ルクセブル様が、こんなにも平凡そうな女性を…?〟と思っていたからだ。



少しの間があいたあと






「そう、あなたが…。」



と、レルロアが呟く。

今まで賑やかだった場が一瞬でシーンと静まった。

〝え…!?な、なに?〟

内心驚くアレクサンドラ。



次の瞬間、ニコっと微笑んで


「レルロアです。ようこそ。どうぞ楽しんでらしてね。では…。」


そう言ってレルロアはアレクサンドラをその場に残し、他の令嬢の元へと向かった。


遠くで「レルロアさま~~~、お招き嬉しいですわ!」というとても親しくしているかのような声が聞こえてきた。




「え?」


ひとりポカンとするアレクサンドラ。


お茶会は立食形式になっており、初めてお茶会に参加するアレクサンドラには友人や知人すらいないのだ。

周りを見渡すとそれぞれ何人かでグループが出来ていた。


〝あら、どうしましょう…。〟

独りだからと言って帰るわけにもいかず思案にくれていた。

〝せっかくだからお茶とお菓子を頂きましょう…。〟


茶菓子が用意されてるテーブルに行き、お菓子を取り皿に取り、お茶を煎れてカップを手にした所で後ろから声を掛けられた。


「あなたね。ルクセブル様と婚約なさるのは!」


驚いて振り返ると3人の女性がいた。

真ん中には先程挨拶をしたレルロアだ。


「あ…あの…?」


アレクサンドラが恐る恐る返事をしようとすると


「レルロア様ならルクセブル様とお似合いだけどあなたのような田舎者には似合ってなくてよ?!」


「そうよ!皆の憧れの方を独り占めさらるなんて!!レルロア様のようなお方なら諦めも付きますが…っ!!」


-どう見ても言い掛かりだった…

しかし、相手は高位貴族。下手に答えられない。


「まあまあ、お待ちになって。ナハム嬢、ミルマ嬢。そんなに言っては驚きましてよ?」


「ですがレルロア様!!」


〝ナハム嬢?ミルマ嬢?

ナハム・トロファ侯爵令嬢、ミルマ・ノトロフ侯爵令嬢?

彼女たちから見れば格下の伯爵家。きっと憧れのルク様を取られたから僻まれてるんだわ。

ここは冷静に対処しなくては!〟

咄嗟にそう考えたアレクサンドラは持っていたティーカップを両手で支えてその場で静かに頭を下げた。


「失礼致しました。ナハム様、ミルマ様。」


それでも2人はキッと睨んでこちらを見ている。

2人を手で静止してレルロアが言う。


「それにしてもルクセブル様ってばどうして〝あなた〟なのかしらね?」


静かに言うレルロア。キツく絡まれるよりもよっぽどタチの悪い低い冷めた口調だった。


それに続いて


「本当ですわ。政略結婚なのかしら?」


「そちらから無理に頼み込んだのでして?」


と、ナハムとミルマが感情を露わにしてアレクサンドラに突っかかってきた。

そして、トン!とアレクサンドラを軽く押した。


「キャッ!」


よろめきかけたアレクサンドラは手に持っていたお茶がドレスにかかってしまった。



幸いにもかかったのは自分だけで済んだ。他の人にかけようものなら弁償しなくてはならない。


「くすくす。あらまぁ!ドレスが台無しね!」


「本当にね!くすくす。早くお着替えになってはいかがかしら?」


-遠回しに2人から帰れと言われてる!!


カッと顔が赤くなるアレクサンドラ。

〝ダメダメ。冷静にならなきゃ!〟

持っていたティーカップをテーブルに置き、


「替えを持ってきていないので残念ですが本日はお暇させて頂きます。」


そう言って見事なカーテシーを披露した。

本当は心臓がドキドキと音を立て、手が震えるのを感じながらも、アレクサンドラは必死に冷静さを保とうとしたのだった。


嫌がらせをした2人はそのカーテシーの見事さに驚いた。

周りにいた令嬢たちもそのやり取りを見ていて、アレクサンドラの毅然とした態度に見事な対応と美しいカーテシーに見惚れていた。そして高みの見物をしていたレルロアもその見事さに驚いたのだった。


〝ふっ。度胸はあるようね…。だけど、どうかしら?〟

レルロアは小さく呟いた。



レルロアの中には複雑な気持ちが渦巻いている。

かつて好意を寄せていた幼なじみのルクセブルには相手にもされていなかったのだ。そんな時に同じく幼なじみの王太子であるダナジー・デ・ポルモアに求婚されて断れずに婚約者となったのだ。

3人は同じ学園にも通っており仲良く育った。


自身が1番近くでルクセブルを見てきたのに…。

しかし王太子との婚約をした身ではもうルクセブルへの気持ちは封印しなくてはならない。

そんな時に急に婚約の話が出たのだ。どんな相手か知りたいのは仕方ないだろう。


自身に足りなかった何かが彼女にはあるのだろうか…。それを探るためにアレクサンドラを茶会に呼び出したのだった。


そしてアレクサンドラは〝ルク様のためにも、絶対に今日のようにはならないように強くならなくちゃ!〟と、そう固く心に誓うのでした。

ご覧いただきありがとうございました。

ずっと田舎の領地で育ったアレクサンドラにとっては同じ年頃の女の子との交流がなかった為、苦手ですが、これからはそうもいきません。

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