表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/62

第 7話:ドキドキ!両家の顔合わせ

このお話はフィクションです。


ふたりが森の中の泉で過ごした日から数日が過ぎた頃、アレクサンドラの屋敷に荷物が届いた。






「アレクサンドラ!来てごらん!」




自身の庭にいたアレクサンドラは声のする方へと顔を向けた。




「お父様?」




「早くこちらに来てごらん!」




「は、はい!」






アレクサンドラは何事かと思いながら父の書斎に向かった。




「大声を出されてどうされましたの?」




「これが大声を出さずにいられるか!これらを見てみろ!」






父トーマスの指さす方へ視線を向ける。




「………!!」




驚くアレクサンドラ。




「これは何ですの?」




そこには大量に置かれた贈り物だった。








「アルクレゼ侯爵家からよ。アレクサンドラ。」




静かに母マリアンヌが言った。




「え?ルク様から?」




「ええ。そのようね。」




マリアンヌは余裕の笑みでニッコリと笑った。




ぱあっと花が咲いたように明るく笑うアレクサンドラ。






「さあさあ。あなたのお部屋に運んでもらいましょうね。」




「ええ、お母様!」




アレクサンドラの胸はときめいていた。


あの〝剣の誓い〟もそうだが、ルクセブルからの初めてのプレゼントなのだ。ときめかないわけがない。




反対に父トーマスは戸惑っていた。流石上位貴族だ。惜しげも無くあの膨大な量のプレゼントなのだから。そんな相手とこの先上手くやっていけるのか少し不安があった。


アレクサンドラはどうやらこの婚約に不満はなさそうでその点に関しては安堵していたが、上位貴族との繋がりが出来た反面格差を感じて不安が生じたのだった。










そうして父の気持ちとは関係なく荷物はアレクサンドラの部屋に全て運び込まれた。そこには直筆のメッセージも付いていた。




〝あ…。ルク様の直筆なのね…。〟トクンとアレクサンドラの胸が鳴った。




〝親愛なるアレン


元気で過ごしていますか?初めてプレゼントをあなたに贈ります。選んだのも初めてなのであなたに似合うのか心配です。僕が選んだドレス一式であなたのお好きなドレスをぜひ顔合わせの場で着て来て欲しい。


あなたに会える事がとても楽しみだ。


-ルクセブル・アルクセレゼ-〟




メッセージカードにはそう書かれていた。




〝しっかりと愛称呼びに慣れて下さってますわ。ふふ。まあ!ドレスをルク様が選んで下さったのね!嬉しい!!初めて選んだって…、ルク様…。〟




アレクサンドラは感動し、メッセージカードを胸に抱きしめながらプレゼントの箱を丁寧に解いていく。




「まあ!これは淡い水色のシルクのドレスには、白い百合の刺繍が施されていて可愛い!」「こっちの情熱的な真紅のベルベットのドレスは、胸元に煌めく宝石があしらわれていて素敵ね!」


「まあ!どうしましょう、どれも可愛くて素敵過ぎて選べないわ!」




アレクサンドラは楽しそうに自身の胸元にドレスを充て鏡の前ではしゃいでいる。


そのアレクサンドラの様子を見て




「アレクサンドラ、それでは決まらなくてよ?」




母マリアンヌは笑いながら言う。




「だって、お母様!どれも素敵すぎるんですもの!迷ってしまいますわ!」




「くすくす。アレクサンドラ、では一緒に選びましょう。」






そうして母子ふたりでドレス一式を選び始めた。




「確かにどれも素敵ね。この生地といい、刺繍といい…。やはり侯爵家お抱えのお店はさすがね!」




母マリアンヌはドレスや小物ひとつひとつをじっくり見ながらそう呟いた。






「アレクサンドラ、ルクセブル小侯爵様とはどこで知り合ったの?あなた、まともに舞踏会にも行ってないわよね?」






アレクサンドラはニッコリと笑って答えた。




「秘密ですわ。堅苦しいのは好きではありませんし、私のデビューは今年の春すぐに開催された大舞踏会でしたばかりでしてよ?それで懲り懲りですわ。」




この国での未婚女性のデビュタントは16歳になった春の大舞踏会で行うことになっている。


その舞踏会を開始の合図とし、毎週3ヶ月の間開かれるのだ。


それ以降は大貴族が主催したり様々な形で長い春を楽しむのである。




「あなたを自由にさせすぎたのかしら…。」




マリアンヌは自由奔放なアレクサンドラを心配した。




「あら、これでも最低限のマナーはちゃんと心得てましてよ?」




「そうね。だったらもっと舞踏会に参加してはどうなの?よくそんな状態で王国一と言っても過言ではない小侯爵様と縁があったなんて…!」




「ふふふ。あの方とは別の場所で初めてお会いしたのですわ。大舞踏会には来られてましたけどすぐにご友人と出られたみたいですし、遠目にしか見れませんでしたわ。」




楽しそうに語るアレクサンドラ。




「別の場所?淑女として恥ずかしくない行動を忘れないでね。」




「…?!お母様!!変な誤解されてませんわよね?」




「あら?そのようなことをしていたの?」




「…!!そんなことはしてません!!」




顔を赤らめて答えるアレクサンドラ。




母はアレクサンドラのコロコロ変わる表情を見て楽しんでいる。


そして自身の娘が恋をしているのだと知って、この婚約が義務感からではないことに安堵したのだ。








◆ ◆ ◆








両家顔合わせの当日-



フレシアテ伯爵一家がアルクレゼ侯爵家に到着した。

執事が対応する。


「ようこそお越し下さいました。本日はお天気にも恵まれてようございました。当主ご家族がお待ちの所までご案内致します。」


そう言って深々とお辞儀をした。



執事の案内で素晴らしい庭園に出た。

その一角にテーブルとご馳走様が用意されていた。

テーブルの前にはアルクレゼ侯爵家の人達が待っていた。執事に連れられてクレシアテ家が登場すると即座に近付いてきた。


「お待ちしておりました。フレシアテ伯爵、伯爵夫人、令嬢、令息。私はアルクレゼ侯爵家当主のグラナスです。こちらは妻のラモニア、我が息子ルクセブル、娘のラナシーです。」

当主が挨拶すると家族が皆一礼をする。女性達はカーテシーだ。


「こちらこそ、お招き頂きましてありがとうございます。私がフレシアテ家当主トーマス、こちらが妻のマリアンヌ、娘のアレクサンドラ、息子のラモンです。」


無事に両家の紹介が終わる。


「さあ、どうぞテーブルに。お好きなだけ召し上がって下さい。これからはふたりを通して私たちは家族になるのですから…。今日の良き日に乾杯!」

アルクレゼ侯爵はそう言って顔合わせの会は始まった。


「どうぞ楽にして下さい。これから先長い付き合いになるんです。」


グラナスが、ニッコリ笑ってフレシアテ家に告げた。

そうしてそれぞれが賑やかに今後についての話を交えながら会話を楽しみながら食事は進んでいった。

デザートも用意され、食事は無事に終了した。


ルクセブルはそっと熱い熱を帯びた瞳でアレクサンドラを見つめていた。

時々アレクサンドラも見つめ返すが、恥ずかしくてすぐに俯いてしまう。


ふたりのそんなよそよそしい素振りに皆気付いていた。



「さあ、ルクセブル、母自慢の庭園をアレクサンドラ嬢に見せて差し上げなさいな。」


ルクセブルの母ラモニアが切り出した。




「おお!そうだな、それが良い!」


同じく父グラナスも同意する。




「あら。素敵ね。行ってらっしゃい、アレクサンドラ。」


アレクサンドラの母マリアンヌが同意する。




「そうだな、行っておいで。」


父トーマスも同意した。


あとは若い者で~というやつなのだが、どうやらこの顔合わせでふたりはあまり話をしなかった事に皆が気付いていたのだ。


ルクセブルが席を立ち、アレクサンドラの方へ行き、


「アレクサンドラ嬢、行きましょうか。」


と手を差し伸べた。




アレクサンドラは顔を赤らめて小さく頷きながら「はい。」と答えた。


庭園へと向かうふたりの姿を見送って残された家族たちは再び談笑が始まった。

それぞれの弟、妹は同じ学園に通っていたため、2人は席を外しもう1つの庭園へと駆けて行った。




◆ ◆ ◆




ふたりきりになったルクセブルとアレクサンドラ。


「まあ!本当に美しいわ。素晴らしい庭園ね。」


そう、アレクサンドラは大勢が苦手なのだ。

2人きりになった途端表情が生き生きとしてきた。


「アレン…!会えて嬉しいよ!」


「ルク様…!」


ルクセブルはアレクサンドラの顔を見て微笑んだ。

アレクサンドラも微笑みを返した。



「そのドレス…、着てくれたんだね。嬉しいよ。とても似合ってる。」


「ありがとうございます。ルク様。沢山プレゼントして頂いて…。どれも本当に素敵でしたので凄く悩みましたわ。」


「ははは。良かったです、贈った甲斐がありました。他のドレス姿も見てみたいです。」


「あなたに会う時は必ず着てきますわ、ルク様。」


「うん、楽しみだ。この庭園で、いつか一緒に散歩できる日が楽しみだ。」


「私も、ルク様の隣にいられることが本当に嬉しいです。」


そうしてふたりは会話がトントンと弾み楽しそうに母自慢の庭園を散歩するのだった。



ルクセブルはあまり花に詳しくなさそうなのに今日のために一生懸命覚えたのだろうか…。

いつだって一生懸命なこの人に惹かれたのだ。


〝知ってる?あなたに初めて出会った時から

私はあなたに心を奪われてしまっていたのよ

あの日あなたが私に誓ってくれた言葉

とても嬉しかったの…〟



アレクサンドラは心の中でそう呟いた。


ご覧いただきありがとうございました。

両片思いだった2人がルクセブルの行動で婚約に至りました。

これからふたりは少しずつ距離を縮めていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ