第58話:運命の朝!もう…受け入れるしか…ないの?
チュンチュンチュン………
小鳥たちが囀るいつもの爽やかな朝がやってきた。
本来ならば、清々しい目覚めの朝なのだが、アレクサンドラにとってはルクセブルとの婚約継続期間最終日が終了したという、とっても悲しい朝だった。
更に、意にそぐわない相手との婚姻がこの先待っているのだ。
〝起きたくない………。どこかの物語にあったようにずっと眠りについていたいわ…。〟
そんなアレクサンドラの思いとは裏腹に、無常にも周りから固められてしまい、もう、逃れる術はないのだ。
〝私が行かなければ父上、母上、ラモンに、そしてこの邸のみんなに迷惑がかかるわ…。〟
決定的な事実に流石に昨夜は泣き続けて目の周りは晴れていた。
あまり眠れておらずふらふらしている。
そんな中、慌ただしく登城の準備をしていた。
アレクサンドラ付き侍女のリラも困惑していた。アレクサンドラの心の内をよく知る分悔しくて堪らないのだ。
「お嬢様………。さぞお辛いでしょうに…。」
馬車乗り場へ着くと
「フレシアテ嬢、お迎えに参りました。」
既に王室から迎えの馬車が来ていた。
〝─────モウニゲラレナイ─────〟
馭者が悪いわけではない。アレクサンドラはギュッと唇を噛んで
「……………ありがとうございます。」
そう答えて迎えの者に挨拶をして、重い足取りで馬車に乗り込む。
揺られる馬車の中でアレクサンドラはルクセブルとの事を思い出していた。
〝この先の森の中でルク様と再会したのよね…〟
そして静かに涙する。
付き添いのリラはそっとアレクサンドラの手を握った。
ガタゴト、ガタゴト……
馬車は長く揺られながら王都を通り抜けて王城へと入る。
その様子を車窓から見ていたアレクサンドラは改めて逃げ場がない事、覚悟を決めるしかなかった。
馬車は城に着き、アレクサンドラはゆっくりと降りる。
そこで待っていた案内人に付いていき、国王がいる控えの間に到着した。
そして国王の前まで誘導され、アレクサンドラは国王に挨拶をする。
「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます。フレシアテ家長女アレクサンドラが参りました。」
陛下に対してカーテシーを行う。
「うむ。よく来た。昨夜はよく眠れたかの?」
「陛下…。お気遣いありがとうございます。しかし、眠れなかったです。今も、まだ…。決意出来ません。何もかも放り出して逃げ出したい気持ちでいっぱいなのです。」
アレクサンドラは涙ながらに正直に自分の気持ちを訴えた。が、国王は
「………。それは困ったの。そなたもビリー殿に求愛された時点で、いつかはこうなると予測出来たのではないか?」
と、ビリーと同じ事をアレクサンドラに告げた。
〝陛下はルク様と懇意にしていたのではないの?〟
アレクサンドラは内心ではそう思いつつ、ダメ元で陛下に訴えた。
「それは…。しかし、ルクセブル様からはまだ何も連絡がありません。つまり、無事でいらっしゃる可能性もあるのです!」
国王を前にしても必死でやり取りをするアレクサンドラ。その様子は一国の主を前にしても全く怯む事がなかった。
国王はアレクサンドラの気質を高く評価した。が、自身の利益のためにもビリーと婚姻させる方が国も安定するために非情になることにした。
また、控えの間の奥でこのやり取りを見ていたビリーも、益々アレクサンドラを欲するのだった。
〝いいね、アレクサンドラ嬢。それでこそ僕が見込んだだけの事はある。〟
そんなやり取りをしている頃、城の上空では魔物が現れ、そしてその魔物が今にも城へと降りようとしていた。
城壁警備隊は慌てふためき、その場で腰を抜かす者がほとんどだった。しかし魔物は攻撃してこない。警備隊たちが不思議に思っていると何やら魔物から何かが降りる様子が目に入った。
よく見るとそれはルクセブルだった。
警備隊は
「アルクレゼ殿?!」
と声をあげた。
「すまない、驚かせてしまったね。悪いけど時間がないんだ。通してもらうよ。」
そう言ってルクセブルは国王たちがいるであろう控えの間へと急いだ。
ジャポスカから話を聞いたルクセブルはジャポスカの提案でジャポスカの母であるボスに、ここまで乗せてもらったのだった。ボスも魔石投入に至るまでのルクセブルの行動について深く関心を持っていたので、ジャポスカの頼みに快く協力したのだった。
流石に魔物の飛行は早く、半日もかからずに到着する事が出来たのだ。
「ジャポスカ!ボス!ありがとう!この恩は一生忘れないよ!」
〝ガンハレ、ルクセブル!〟
コクンと頷いてからルクセブルは再び走り出した。
アレクサンドラがいるであろう控えの間へと…。
〝間に合ってくれ!〟
◆ ◆ ◆
そしてルクセブルの父、グラナスたちは帰国途中にテトラ町へと立ち寄った。
そこで入った居酒屋で奇妙な話を聞いたのだった。
「なあ、俺、変な依頼を受けててさ。」
「お?どんなもんだ?」
「この国からアルクレゼ侯爵領へ行く手紙と、逆に来る手紙を止めて東隣のコルタデ王国のある村へ行って渡せと言われたんだ。」
「なんだ?その変な依頼は。」
「だろ?そいつ、プラトラ国のやつじゃないかと思ってな。あの国は独特の訛りが出るじゃないか。それにチラッと見えた腕が浅黒かったしな。」
「じゃあ、なんでわざわざコルタデ王国へ行かされるんだよ?」
「そりゃ、誤魔化したいためだろ?きっと。」
「ふーん、お前、気をつけないと変な依頼受けると命に関わるぞ?」
「だよな、俺、もうこのままトンズラするからよ。またな。」
そうしてその男は姿を消した。
その話を聞いたグラナスは何故プラトラが絡むのかわからなかった。
プラトラ人は見た目も浅黒い肌で一目でわかるのだ。
手紙を奪う依頼をしたのはプラトラ人で間違いなさそうだ。
グラナスは部下の1人にその請負人に似せて指定されていたその場所で待機させて、依頼者を捉えることにした。
そのために偽の手紙を書いて発送した。
思惑通り数日後、その男が現れた。
罠だと知らずにやってきた男を捕まえることに成功した。
そしてその男から話を聞き出した。
中々口を割らなかったが男から出てきた言葉にグラナスたちは呆気にとられた。
それはプラトラの王太子の個人的な命令だったというのだ。
グラナスにとっては益々訳がわからなかった。王太子は何故我が家門に…?!
◆ ◆ ◆
静まり返った控えの間…。
国王が口を開いた。
「そなたのその一途なところは良いが、諦めも肝心というではないか。現に侯爵家から婚約継続期間を設けられたのだろう?そしてそれまでに何も〝本人〟から音沙汰がないのだ。それが全てではないのか?」
「陛下………。」
「さあ、これはそなたのためでもあるのだ。」
「……………。」
陛下に訴えてもダメだった。そして陛下に〝自分のためでもある〟とまで言われてしまった為にこれ以上は無理なのだと、諦めざるを得なかったのだ。
アレクサンドラが返事を返してこないことをいい事に国王はビリーを呼んだ。
「さあ、ビリー殿。こちらへ参られよ。」
国王の掛け声にビリーがゆっくりとアレクサンドラの前に姿を現した。
ご覧下さりありがとうございます。
とうとう国王の目の前で隣国王太子ビリーのプロポーズを受ける時が近付いてきました。
ルクセブルも城に着いたようですが、無事アレクサンドラの元に間に合うのでしょうか?!
次回をお楽しみに!




