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【完結】シラユリシリーズ①永遠に永遠に咲くシラユリをあなたに…(初ラノベ)  作者: 慧依琉:えいる


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第56話:ラナベルの純愛…迫るアレクサンドラの危機を救うのは?!




サワサワサワ………




風がそろそろ夏を知らせるように温かくなってきた。


しかしこのラナベルが守る百合の薗はいつも変わらず一定の気温だ。この空間だけが違う別世界となっていたのだった。




「ケインがここを去ってから何日が過ぎたのかしら…。」




夜空を眺めてラナベルは呟いた。綺麗な月明かりが零れ落ちてくるようだ。




月光に照らされた百合たちに囲まれて


ワタシは溶けていくかのように


深く深く 凛とした香りに沈んでいく…


この中でなら忘れる事が出来るのだろうか


今も目を閉じれば浮かんでくるアナタを…








ずっと忘れる事が出来ないまま、ただひたすら彼の幸せを願って毎日を過ごしていた。


決して朽ちることのない身体、老いる事をしない身体。私が死なない限り彼に渡したユリたちは永遠に咲き続ける。私は彼以外を絶対に愛することはないわ。




ラナベルの純愛が報われることはなかった








時々、ラナベルの様子を見にジャポスカは相変わらず訪れていた。ラナベルに見つからないように…。そっと、そっと…見守るつもりのようだ。








◆ ◆ ◆








そしてポルモア王国では今日もアレクサンドラはビリーに呼び出されていた。




毎日同じ時間にビリーの元でお茶を嗜むのが日課となっていた。






〝ホントはこんな事してる場合じゃないのに…。もう明日で春の最後の日が終わる…。ルク様…。〟




アレクサンドラは今まで元気にしていたが、流石に明日で婚約継続期間終了となるのだから浮かないのは当たり前なのだ。






そんなアレクサンドラとは反対にビリーは嬉しさを隠せないようだった。




「すまないね、あなたが落ち込む気持ちもわかってはいるのだが、僕にとっては喜ばしいことなのでね。」




アレクサンドラはビリーをキッと睨んだ。






「大丈夫さ、彼なら聖剣に守られるだろうからきっと無事なはずだよ。だけど連絡がないって事は何か別の事情があったのかもしれないね。」




「別の事情?」




「ふむ。流石にそれはわからないが…。それしか考えられないだろう。」




アレクサンドラは再び俯いた。




「明日で婚約継続期間が終わりなんだよね。明後日、王城へ来てくれ。あなたの所の陛下にも立ち会ってもらう事になっている。その時は僕のプロポーズを受けてもらうよ?」




バッ!と顔をあげた。




「そ、そんな……。まだ心の準備が…。」




「悪いけど、僕は充分与えたと思っているよ。」




「………………。」




「衣装は僕からフレシアテ家へ贈らせてもらうから、そちらを着てくるように。いいね。」




「………わか…り、まし…た。」




弱々しくアレクサンドラは返事をした。








ビリーは鼻歌を歌い出した。余程嬉しいのだろう。それもそのハズ、約半年待ったのだ。それがあと1日過ごせば念願が叶うのだから。




アレクサンドラさえ手に入ればポルモア王国に留まる必要はなくなる。




部下に命じて帰国の準備をするように命令した。




そして自国でのアレクサンドラの住まう場所を用意する事と、衣装も準備するように指示した。




落ち込むアレクサンドラの前でどんどん話が進んでいく。




「アレクサンドラ嬢、今日はもういいよ。明日はゆっくり家で父上や母上と過ごされるが良い。明後日、僕がプロポーズしたらそのまま僕の国へ立つのだからね。」




「そんなっ、急に!」




「急じゃないよ、僕は半年程待ったんだ。あなたの方も心の準備としては充分だよ。さあ、今日はもう帰りなさい。」




「…………。失礼します。」




カーテシーをしてアレクサンドラは部屋を出た。




「お嬢様、馬車までお送り致します。」




「ありがとうございます。」




トボトボと歩いて行く。






「お嬢様、お気持ちはお察ししますが、こちらの主君のお気持ちも、どうかお察し下さいませ。」




「…………。そうですわね。」




例え下級貴族として産まれたにしても貴族家である以上は政略結婚は当たり前なのだ。たまたまルクセブルと両思いになったという幸運なだけなのだ。


普通の貴族家はこれが当たり前…。




頭では分かっていてもやはり心が追いつかない。


せめてルクセブルの安否がわかればマシなのだろうか…。






フレシアテ家に到着したアレクサンドラは父と母にビリーに言われた事を話した。


二人とも驚いていた。いつかはそうなるであろうと想像していたが、婚約継続期間終了翌日に連れ去られるのだから。




せめて数ヶ月してから…。父母もアレクサンドラと同じ気持ちだった。




しかし相手は王族。しかも他国、近隣国のだ。


国家間の問題にまで絡むのでだうしようもないのだ。




せめてルクセブルが戻ってきたら…!そう悔やんで仕方なかった。








◆ ◆ ◆












ルクセブルはまだナダルテ山脈麓に近いシラユリの園からさほど離れていなかった。




〝馬…!馬がないと流石に歩いてだと進まない…〟




苦戦しているようだった!










◆ ◆ ◆










そんな時、ポルモア王国のアルクレゼ侯爵邸に一匹の黒猫がひょこっと現れた。




庭を散歩していた公爵夫人のラモニアは黒猫を見つけて


「おいで…。」


と言ってみた。




猫は恐る恐る近付いてきて、夫人にスリスリした。




「まあ、可愛いわね。」




夫人から笑みが零れた。


そして夫人は猫を見ながら、何だかルクセブルに似て見えたのだろう、猫に語り始めたのだった。




「猫ちゃん、私の息子が行方不明なの。だから明日を過ぎると息子の大切な人が他の人のものになってしまうのよ。あの子が無事戻った時にきっと悲しむわ…。」




夫人にスリスリしていた猫は突然ビクッとなって夫人の元から離れた。




「あら。」




突然の事で夫人はびっくりしていた。




猫は夫人の顔を見た後、サッと去ってしまった。




「まあ、どうしたのかしら…。またくるかしら?」




ラモニアは猫を心配した。








猫…その黒猫の正体は




〝ヤバイヨ…、ルクセブル。アンタニアイニ オヤシキニイッテキタノニ、タイヘンナコト ヲキイテシマッタヨ!アンタイマ、。ドコニイルノサ?〟




──────────そう、


ジャポスカだった──────────






ジャポスカは魔物のボスの子。


普通の黒猫にしか見えないが自身が炎を吐いて背中から翼を出すことも出来る。本来の姿はこの翼のある方だ。


だが、ジャポスカはまだ魔物としての魔力が足りなかったりするため、時々猫の姿で人間の周りをうろつくのだった。




魔物だと移動は人間の何倍もの速さだ。ルクセブルにちょっと会いたいなと思ったら数時間後には会えるのだ。


この時もそんな気軽に会いに行っていた時の出来事だった──────




ご覧下さりありがとうございます。

ラナベルはルクセブルを自分のものにして共に歩む事よりも孤独であっても想い続ける事をえらんだのだった。

そしてアレクサンドラの危機を知ったのはジャポスカだった。果たしてジャポスカはルクセブルに会うことが出来るのか?

次回をお楽しみに!


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