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永遠に咲くシラユリをあなたに…(初ラノベ)  作者: 慧依琉:えいる


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第55話:番人としての使命!一方、消えた書簡の調査を通して深まる絆




森の中をひたすら走り抜けるルクセブル。




「はあはあはあ…!」




〝このままだとひと月はかかってしまう、少しでも早く辿り着こうと思えば馬を調達しなければならないが…。この村にはそういう所がなさそうだ。どこか街を探すか、王城まで戻るか…。〟






ルクセブルが今いる所はそのまま北上すればポルモアの自領に最短で行ける。しかしナダルテ王国王城まで戻ると東に行く分遠くなり時間がかかるのだ。出来たら北上するまでに馬を調達したい所だが地理もわからないまま、闇雲に歩いてもそれはそれで逆にロスになる。


ルクセブルはどうしたものかと思いながら、とにかくひたすら走った。








そんな様子を遥か上空から見ていた者がいた。








〝これで良かったのか?ラナベルよ…〟




それは初代百合の薗の番人であるルル・リリーマリアであった。






「ええ、ルル様。今は哀しくてたまりませんが、いつかはそれも良き思い出となりましょう…。私は後悔しておりません。彼の幸せを願うだけです。」




ラナベルはそう言ってにっこりと笑って見せた。










〝──────────ふっ


我には解せん─────────




が、




人間どもは愉快じゃの…


好いたなら何故その想いを伝えぬのか


何故身を引くのか やはり


我には解らぬ…〟






ルルはそう呟いた。




彼女は既にこの世を去っているので歴代百合の薗を守る番人の道標役として百合の薗に宿っているのだった。






彼女もかつては人間であり、ラナベルのように番人として目覚めた時に同じように愛する人との別れを選ぶか、騙して添うか苦悩したであろう。その結果、彼女は冷徹に番人としての役目を全うし、次世代を産み育てその後も脈々と世代を繋いできたのだった。




婚姻して女子を産み育て、その子が15歳になった瞬間に世代交代となる。そうすると今まで咲いていた花は蕾に戻る。切り花はその瞬間に枯れてしまうのだ。




永遠に枯れないで咲き続けるユリの花とは、


番人が愛を知り、孤独のまま生き続けている証なのだ。依頼主の願いをその花に込めて…。




今までの番人は婚姻してきたので最終的には枯れたり蕾に戻ったりしたが、それでも普通の花よりも長く咲き続けることから、その花を煎じて飲めば癒しの効果によりほとんどの病が治るとさえ口伝され続けている。そのため大金が動く事もあり、蕾のまま花を咲かせられなかったラナベルは相当一族から後ろ指をさされてきたのだろう。






そういう所もずっと見守ってきたルルはラナベルの最終決断に疑問を呈した。




〝ラナベルは次世代に引き継がないのか?このまま自分が永遠に番人として生きていくのか?孤独に…。〟




ルルはラナベルの事を慮った。






〝ふっ、それも運命かの…〟






自分には出来なかった選択をした子孫だ。


どことなくルルの横顔は嬉しそうだった─────














◆ ◆ ◆








その頃ナダルテ王国の王城ではパーティーが開かれていた。明日にはアルクレゼ騎士団が自領へ戻る為に出発するからだ。




スアンはグラナスやテルの元にやって来て名残惜しそうに話をした。




「このまま二国間がいつまでも平和である事を切に願います。私個人としてもあなた方とは剣を構えたくありません故。この度は本当にありがとうございました。」




「ああ。私たちもそう願うよ。一時でも私たちと共にあったんだ、私もそなたらと剣を構えたくないからな。こちらこそ世話になったよ。」




グラナスがそう答えた。






「スアン殿、今度は我々の領地へ来てあヤツを扱いてやってくれ。君にならあやつのガサツさを直せるやもしれんからな。」




テルはニコルの方を指さして言った。






「ハハハ、ご冗談を…。こればかりは私では重荷でございます。彼の性分は無理ですよ。」




「そうだぞ?ニコルのガサツさはそなた以上に大変だぞ?父であるそなたの役目なのに…。」




グラナスがテルに言う。




「はぁ?団長まで…っ!」




周りにいた団員たちはドッと笑った。










その笑い声に反応したのはニコルだ。






近付いてきて




「ん?ん?皆どうしたんだ?何か面白いことがあったのか?」




そう言うものだから更に笑いが込み上げた!






「な、なんだよ?俺変な事言ったか~~~?!」




スアンはそんな様子を見て少し寂しさを感じた。


〝本当に素晴らしい騎士団だ。〟






そして国王陛下も近くに来て皆が緊張したが、


「よい、そのままでよい。存分に楽しんでもらえたなら私も嬉しいぞ。」




そう言ってグラナスに目配せをした。




そしてその場を退出した。




その後、少ししてからグラナスも風にあたるといって席を外した。








そしてナダルテ国王の元に向かった。






〝きっと手紙の件だ。何かわかったのだろうか…。〟




グラナスは連絡が取れない妻の様子が気になっていた。






「ナダルテ国王!」




「アルクレゼ侯爵殿。もっと近こう…。」




ぺこりとお辞儀をしてグラナスは国王の元に寄った。








国王は小さな丸いテーブルに地図を広げて1箇所を指さした。




「ここ、テトラ町までは追跡が出来たのだ。この先はそちらの領地へと抜けるための山脈がある。だから私はここで、手紙が消えたのではないかと読んでいるのだ。」




「なるほど。我が領内へと入れば見知らぬ者が彷徨っていれば自衛団が捕まえますしね。」




「ああ。配達記録を見ても双方この町の書簡受渡所までは来ている事になっているのだ。間違いないだろう。今、この町へ視察を出している。引き続き調査をしてそなたが自領へ戻った時にもきちんと続報を届ける事を約束しよう。」




「はっ、ありがとうございます!」




ナダルテ国王はグラナスを見て




「すまないね、我々のために来てもらったというのに我が領地内でこのような事態になってしまって。」




国王は軽く頭を下げた。




「へ、陛下、頭を上げて下さい!あなた様のせいではございません。あなた様が謝られることなど…!!」




国王は首を横に振り、自領で夫と子息を待つ夫人の気持ちを推し量った。




「アルクレゼ侯爵よ、私にも家族がおるのだ。そなたや、自領で待つそなたの夫人らの気持ちを思えば私が頭を下げる事など何でもない事なのだよ。双方無事だから良かったものの、安否がわからないというのはとてつもなく不安定なのだよ。すまなかった。」




「陛下…。」




グラナスはナダルテ国王の思いやりに溢れた人柄に、この協力は無駄では無かったと思ったのだった。




「陛下、私はあなた様の治めるこの国とずっと友好国であり続けたいと思っております。帰国したら必ずやあなた様のお人柄を我が国王にもお話しましょう。」




こうして二国間の平和は固く約束されたのだった。




ご覧下さりありがとうございます。

今回アレクサンドラの状況は出てきませんでしたね。どういった状況か心配です。


さて、もう55話なんですね。早く早くと、公開を早めて来ましたが、間もなく終わるかと思うと少し残念な気もします。

が、新章スタートしておりますのでお楽しみに!


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