第53話:愛しい彼を手に入れる為に…ラナベルの決断!
「誰かが意図的に手紙を途絶えさせた?」
グラナスは思わず呟いた。
「その可能性は充分にあるの。だが、そんなに機密事項でもなかろうに。そなたの家門に恨みを持つ者でもおるのか?」
「いえ、我らは国王を中心に皆、厚い信頼で結ばれておりますゆえ。それにそれ以外の家門とも争うような事は何もなくて…、全くと言っていいほど心当たりがないのです。」
「ふむ、もう少し調査をさせるとするかの。侯爵、そういうことだ。用心したまえ。」
ポン!と、国王はグラナスの肩を叩いた。
「はっ、ムルソワ国王、ありがとうございます。」
そして国王は退出した。
部屋に残されたグラナスは
〝一体、誰が何のために?ルクセブルの生存で得をする人物などいないが…。それに我ら聖剣の持ち主をどうにかしようと思う程、馬鹿な奴はいないと思うが…。〟
と策略を練った相手が誰であるかと考えていた。
◆ ◆ ◆
その頃、ポルモア王国では
国王はその事実を知っていた。
しかし、国王はその内容をアルクレゼ侯爵夫人にもアレクサンドラにも、自身の妻や息子にさえ話さなかったのだ。
〝ムルソワ国王には申し訳ないが、このまま事実を知らなければ春の終わりまでルクセブルは戻って来まい。そうすればアレクサンドラ嬢がビリー・カン・プラトラ殿と婚約してしまうだろう。その方がプラトラとの外交として強固になるからな、ルクセブルにはまた他の令嬢との縁談を探してこよう。何ならどこかの王女はどうだろうか………。〟
と、縁談での外交を企んでいたからだ。
事実上、アレクサンドラはポルモア王国では徐々にビリー・カン・プラトラの婚約者も同然な扱いになっていたのだから。
アレクサンドラもルクセブルの消息がわからない以上は国王命令を受け入れるしかなく、不本意ではあるが、国と家門のために、今日もビリーに会って相手をしていた。
「王太子殿下、まだ諦めがつきませんか?」
「ん?何をだい?」
「おとぼけにならないで下さい。私には婚約者がおりますのよ。」
「ああ。しかし未だに何の連絡もないのだろう?あなたこそ、そろそろ諦めたらどうだい?」
アレクサンドラは泣き出しそうになる揺れる気持ちをグッと堪えて
「いいえ、諦めませんわ。」
そう答えていた。
「うん、その一途さに益々惚れ直したよ。僕は言っただろう?あなたの聡明さが気に入ったし、そういう態度を取るのもあなただけだ。僕を〝王族〟という色眼鏡で見ないのはあなただけなんだよ。」
そう言ったビリーの顔は真剣そのものだった。
「あなたこそ、彼の身に何かあったらどうするつもりなんだ?」
「あるわけありません!聖剣が彼を守ります!だから必ず戻ってくると信じてますわ!」
アレクサンドラが1番触れられたくない部分だった。
ビリーには何を言っても通じない。王族とはそんなものなのかと、少しアレクサンドラに疲れが見えてきた。だが、決して最後の期日まで諦めないと心に誓ったのでした。
◆ ◆ ◆
そしてそんなことになっているとは思ってもいないルクセブルは筋を通す為にもラナベルに最後のつもりで会いに来た。
そしてラナベルにお礼とお別れをするために会い、最後にお茶を飲んで行ってと誘われて彼女の家へと二人で向かっていた。
百合の花が辺り一面に咲き乱れているが、それ以外はこの場所を去ったあの頃のままだった。
〝この道も通ったな。〟
ルクセブルは懐かしみながらラナベルと共に歩んだ。記憶を無くしていたあの頃はラナベルだけが頼りだったし、それ故にラナベルに少し惹かれつつもあったのだが、記憶を取り戻したルクセブルはアレクサンドラが待つ故郷に早く戻りたい気持ちの方が強く、ラナベルへのその気持ちは感謝からくるものを錯覚していたとしてて、恩人として接するつもりだった。
そしてラナベルの家に着いた。
変わらない家に安堵したルクセブル。
「今からお茶を用意するわね。さあ、座って。」
ラナベルはにこやかにルクセブルに言った。
〝ラナベルは強い女性だな。ここに留まって欲しいと言っていたのに、気持ちを切り替えられるなんて…。〟
ルクセブルはそんな穏やかな気持ちで座って待っていた。
そしてラナベルはというと…
〝初代百合の薗の番人であるルル様が言っていたのは確かこの花よね…。〟
そう思いながら「始まりの百合の花」をじっと見つめていた。
〝この花を煎じて飲ませたら今までの記憶を忘れて私と共にいてくれるのよね…。〟
そう、実はこの花を煎じて飲ませるためにお茶に誘ったのだった。
そしてゆっくりとその花を煎じていく………
。
彼を自分のものにするために…。
何も知らないルクセブルはそのまま信じて彼女を待つ。
「ラナベル、ちゃんと僕の名前を君に伝えておくよ。」
「──────────!!」
煎じるラナベルの手が止まった。
「え…。」
「僕はポルモア王国のアルクレゼ侯爵家のルクセブルと言うんだ。もう二度と会わないかもしれないけど、君にはちゃんと知っておいて欲しいと思ったんだ。」
〝そんなの…、知らなかった方が良かった…。〟
「そうなのね。」
震える手で煎じることを再開した。
「君には本当に感謝している。」
ルクセブルがそう言った時にラナベルはお茶セットを用意してやってきた。
「さあ、私特性のお茶よ!しっかり味わって飲んでちょうだいね!」
ラナベルはニッコリと笑ってルクセブルの前にお茶を出した。
「私、ちょっと百合の薗に忘れ物したから取ってくるわね、ゆっくりしててちょうだいね!」
そう言ってラナベルは部屋を出た。
ルクセブルがラナベルの顔を見た時にラナベルはちょっと涙ぐんでいた。
〝ああ、そうか。無理をしていたんだな。彼女流のサヨナラなのか。もうここへは戻って来ないんだな。ごめん、ラナベル。そしてありがとう。〟
そしてラナベルが淹れたお茶に口をつけた。
「うん、今日も美味しいな。彼女のお茶は貴族家のお茶にも引けを取らないな。」
一口、二口……と、ルクセブルはお茶を飲み進めた。
ほとんど飲み終えるかどうかくらいの頃にルクセブルの視界がぼやけた。
「?……ん…な、……んだ……………。視界が……。」
…………ドタッ!!
そしてそのままルクセブルは机に突っ伏した。
その頃、百合の薗に向かったラナベルは泣いていた。
〝月光に導かれてあの雪の日、私はアナタと出会ったの。
ひと目であなたに惹かれてしまったけど、そんなあなたには心に決めた女性がいるというのね。
そして私はこの百合の園を守らなければならなくて、私の想いは叶うことがない…
わかっているのに…あなたから目が離せないでいる。
あなたを手離したくない………!!〟
ご覧下さりありがとうございます。
アレクサンドラもルクセブルも、それぞれ危機が迫ります。
初めてのライトノベルですが完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。
お楽しみに!




