第52話:ラナベルとの再開!判明した事実、途切れた手紙
ルクセブルは自身が大怪我を負った時に親身になり献身的に世話をやいてくれたラナベルの元に駆けつけた。
間もなくこの地を離れるからお礼を伝えるためと彼女がちゃんと安全に過ごせているのかどうかを確認するためだ…。
そして駆けつけたその場所は自身の記憶にあった場所とは遥かに違う景色になっていた。
「………?な、なんだ?これは一体………。」
ルクセブルは目を見開いていた。
それもそのはず。森を抜けた途端、自身が出てきた時とは違って、辺り一面が百合の花で埋め尽くされていて陽の光が届かないほどの幻想的な空間になっていたのだった。
「確かに森を抜けたらラナベルの家の近くに出て、小さな百合の畑があったはずだが…。ここはまだ森の中か?僕は道に迷ったのか?!」
ルクセブルは焦っていた。
もし迷ってしまったのなら大変だ。土地勘のないルクセブルは、たちまちこの大きな森から出られないのかもしれないからだ。
少し呆然と立ち尽くしていると女性の歌声が微かに聞こえてきた。
「………………?歌声?」
その方向へと向かってみることにした。
そして声にどんどん近付いて行くとその声の主はラナベルではないか?と思うと、期待にトクン!と胸が高鳴って早足になった。
〝美しく澄んだ声がよく響いているな…。〟
「今日も綺麗に咲いているあなたたち~私の心をうつして~私の声に合わせて~ユラユラ揺らめいて優しく香りを纏うの~」
〝ラナベルだ!ラナベルの声だ!この向こうに彼女がいるんだ!〟
ルクセブルは懐かしい声に安堵した。
ラナベルの元を去ってからそんなに経っていないのだが、魔物たちとのやり取りやここで迷ってしまったかのような不安から、とても懐かしく癒しを感じたのだった。
あまりにも興奮していたため、ガサツにゆり達をかき分けてしまった!
ガサガサッ!───────
「キャッ!」
その物音にラナベルは驚いた!
そしてそこに現れた人物を見て更に驚いた!
「ケ……ケイ…ン?」
大切でもう二度と会えないと思っていた彼が戻ってきたのだ。
「ケインっ!!!!!!」
ラナベルはケイン(ルクセブル)の元に駆け寄って飛びついた!
ルクセブルも思わず抱きとめた。
「ラナベルっ!」
今も変わらず一途な彼女に思わず手が出て抱きしめてしまった。
「帰ってきてくれたの?」
ラナベルが顔を上げてルクセブルを見る。
ラナベルに見つめられたルクセブルは、あの頃の、ラナベルに心が傾きつつあった頃の気持ちが蘇ってきた。が、それは一時の気持ちの勘違いであり、記憶があったままだと心は動かされていなかったのかもしれない…。
何も知らずにひたすら自身の帰国を待っているアレクサンドラを思うとラナベルの気持ちには応える事が出来ないのだ。
「………………………。」
ルクセブルは答えずに静かに目を閉じて首を横に振った。
。
「ケイン!行ってしまうの?」
これ以上ラナベルに期待させてはいけない。その為には今の自身の立場を告げるしかない
「すまない、ラナベル。君には助けてもらってその上身体が回復するまで献身的に支えてもらったというのに、僕はその恩を返せない。僕は自分の領地に帰らなければならないんだ。それに僕には愛する婚約者がいるんだ。彼女をこれ以上待たせられない。」
「ケイン…。」
ラナベルはケイン(ルクセブル)が高位貴族であれば婚約者もいるのだろうと覚悟をしていたが、ルクセブルの口から直接〝その存在〟を言われるとは思っていなかった。
「私では…」
俯きながら声を絞り出すようにルクセブルに言って顔をパッと、あげた。
「私ではダメなの?ここに残って?私たち、上手くやれると思うわ。」
ラナベルはルクセブルにしがみつき、涙目で訴えた。
しかしルクセブルはまた静かに首を横に振るだけだった。
「すまない。僕は君の気持ちに応えられない。」
ルクセブルが頑なに首を横に振るだけなので、ラナベルはもう、どうにもならないのかと悲痛な思いをした。
「…………………。」
ルクセブルはラナベルの少しの沈黙がとても長く感じた。
これが最後のチャンス…。
ラナベルの頭の中にその言葉がよぎった………。
意を決してラナベルは言葉にした。
「そう….。立ち話もなんだから家に入ってお茶でも飲んで?」
「………。」
ルクセブルはこれ以上はラナベルにとってもよくないかと思い、返事をしなかった。
だが、ラナベルは必死にルクセブルをお茶に誘う。
「ね、これが最後になるのよね?だからお願い。」
必死な様子のラナベルに頑なに断り続ける事が出来ず、ルクセブルはラナベルの言うように〝ここを訪れるのも最後になるから…〟と、情が移り、お茶を飲んで行くことにした。
「…………………。」
ラナベルの家に向かう時、2人は黙ったままだった。
〝何か会話しないと気まずいな…。〟
ルクセブルは焦った。そこでスアン騎士団長が話していたユリの花について思い出したのだった。
「ラナベル、この近くに永遠に枯れない百合の花があると聞いたんだが、知ってるかい?」
突然発したルクセブルの言葉にラナベルは〝私のことじゃない事を聞くのね…。〟と少しガッカリしたが、平然を装ってルクセブルに答えた。
「そうなの?その話、何処で聞いたのかしら?」
ラナベルは知らないふりをした。なぜなら、もし本当の事を話したらすぐにここを去ってしまうからもしれないと考えたからだ。
「ああ、ナダルテ王国の王室騎士団のとある人に聞いたんだ。魔物の子がいつも持っていて…って、さっきの花、よく似てるね。」
ルクセブルはほぼ確信を持ってラナベルに聞いてみたのだった。
「百合の花なんてあんな感じよ?さあ、もうすぐ着くわね。懐かしいんじゃない?」
軽く躱された。
〝本当に知らないのかな?知っていたとしてももう僕には教えたくないのかもしれないな。記憶がなかったとはいえ、それだけの事を僕は彼女にしてしまったのだな。〟
そう思いながらラナベルの問に答えた。
「ああ、そうだね。約半年過ごしたんだ。それなりに思い入れはあるからね。」
ラナベルはそう答えたケイン(ルクセブル)の顔をジッと見た。
まるで何かを思いつめているかのような表情で………。
◆ ◆ ◆
その頃、アルクレゼ騎士団はスアン率いるナダルテ王国王室騎士団と共に王都へと進んでいた。
先触れで王都には今回の任務が無事終了した事は伝わっていた。
騎士団たちが王都に入った途端、住民たちが出迎えて花を撒き散らしたりしてお祝いムード一色だ。
そして王城の門が開かれると、ズラリと貴族家たちとここでも住民が並んでいた。
「アルクレゼ騎士団万歳!王室騎士団万歳!」
「ポルモア王国万歳!ナダルテ王国万歳!」
人々は口々にそう言って褒め称えた。
紙吹雪、花吹雪…
王城内もお祝いムード満載だった。
それだけの事を成してきたのだ。
グラナスは一番の功労者であるルクセブルがここにいないのが少し残念であった。が、名誉よりも恩を返す事を優先した自身の息子がとても誇らしかった。
団員たちはそのままナダルテ王国国王の前に赴き、王の前で跪いて無事帰還した事を報告した。
「ナダルテ国王ムルソワ様、此度の任務、無事完了し、私グラナス・アルクセレゼ他全員無事帰還しました。」
捜索隊隊長でもあるグラナスが国王に挨拶した。
「アルクレゼ侯爵、よくぞやってくれましたぞ。深く礼を言う。ポルモア国王にも私が深く感謝している旨を伝えてくれぬか。」
「はい、承知致しました。ムルソワ国王。」
ムルソワ国王は目線をグラナスから逸らし、少し周りを見て
「ふむ、ところで魔物のボスたちとの間を取り持ったというそなたの息子はどこだ?褒美を取らせようぞ。」
そう言って団員たちの顔を見た。
本来であれば父の後ろに控えているはずだが、その位置にいるのはグラナスと年齢的にも変わらないテルだった。そしてテルの後ろに控えていたのはテルの息子のニコルだ。2人の髪色からニコルがグラナスの息子ではないというのが察せられた。
「国王陛下、申し訳ございません。息子、ルクセブルは途中で大怪我を負い、その時に介抱してくれた者へ挨拶に向かった次第でございます。無礼をお許しください。褒美は辞退致します。」
「ほほぉ~~~!」
国王は激怒すること無く逆にルクセブルに興味を持った。
「賞賛よりも恩を取るとは!大したものだ!よい、息子を責めるでないぞ?褒めてやれ!私が見繕って贈るとしよう。」
「ありがとうございます!」
グラナスは国王に深くお辞儀をした。本来であれば激怒されてもおかしくはないのだ。一国の王よりも別の対象を選んだのだから。
パンパン!と、手を叩く音がした。それによって皆が注目する。
「さて、皆の者、今夜はゆるりと過ごされよ。そして明日祝賀パーティーを開かせてもらうぞ。是非参加してくれ。」
そう言ってから国王はその場をお開きにした上でグラナスだけに留まるように伝えた。
皆が退出して静まり返った広間で国王から話を切り出した。
「アルクレゼ侯爵、ちとおかしな事があってな。」
「………はい、何でしょう。」
「そちからの手紙だが、どうやらポルモア王国まで届いていなかったようだ。」
「と、申しますと?」
グラナスは国王が言っている事が不思議だったので少し怪訝そうな顔をしたが、国王は続けて話す。
「私からのポルモア王国との直伝により判明したのだが、〝アルクレゼ夫人がそちからの手紙がまったく来ないから息子の安否がわからないと言っている〟と連絡がきたのだよ。」
「……え?!」
「私はスアンからそちが自領宛に何度も手紙を書いて送った事を聞いておったしな、夫人側からも手紙がきていない旨も聞いていたのでポルモアに問い合わせたのだ。その結果が途中で手紙が途切れて互いに届いてなかったようだな。誰ぞの仕業かの…。」
そう言って国王は黙った。
「誰が何のために………。」
グラナスは相手の意図が分からず不安を覚えた。
ご覧下さりありがとうございます。
お互いに連絡がなかったのは誰かの仕業だったのかもしれません。
次回お楽しみに!
初めてのライトノベルですが完結済みですが今後もご覧下さると嬉しいです。




