第51話:魔石投入!魔物たちとの協定/その頃アレクサンドラは…
魔石投入時に放たれたその光は、魔石が完全にボスの額に同化するまで眩い輝きを放ち続けた。
そしてボスの身体を光全体で包み込んだのちに、その光は徐々に薄れていき、ボスの中へと消失していった。
どれだけの時間が経ったのだろう…。
とても長く感じたが、瞬きをした一瞬だったのかもしれない。
ある者は瞬きを忘れ、ある者はゴクリと生唾を飲み込んだ。
そして沈黙が続く空間に耐えきれない者は他の者の様子をチラリと見てから視線を戻してルクセブルとボスに注目した。
全員がその様子を見守る中、ルクセブルが口を開いた。
「ボス、どうですか?変わりないですか?」
「…………………。うむ、変わりない。」
ザワザワ……!
「ボスが人間の言葉を発した?」
団員たちがザワつく。
「魔石投入により、言語が自動変換されるのです。魔石には微弱な魔法波長が含まれており、それが生体の中枢神経に作用することで、思考と発声を相手に理解できる言語に変換するのです。」
スアンが説明した。
「ルクセブル殿、ご協力ありがとうございます。これより私が説明致します。」
「ああ、よろしく頼むよ。スアン殿。」
スアンがボスに近付いた。
そしてボスの前でお辞儀をして
「魔物のボスよ、私はこのナダルテ王国王室騎士団団長のスアンと申します。この度は我々の提案にご協力頂きありがとうございます。国王に変わりお礼申し上げます。」
「よい、今の我にとっても都合が良かったのでな。我は長くはなかったので我が息絶えたあとのジャポスカの事が気になっていたのだ。不死は時に孤独ではあるが、我はジャポスカが何よりも大切だったのだ。」
「魔石投入により、あなたには我々人間を守る義務が生じます。我々はあなた方を攻撃しません。代わりにあなた方も我々を攻撃しないよう統制願いたい。」
「あいわかった。そなたらの提案のお陰で我の身体も不死になったのだ。あのままでは我は死にジャポスカの将来もなかったであろう。我も魔石投入により得た物が大きいのだ。必ず約束しよう。」
「感謝致します。」
〝ルクセブル、ゲンキデネ。マタイツカアッタラハナシガシタイ。〟
「ああ、ジャポスカ。ありがとう!君のおかげだよ。僕は君のこと忘れない。またどこかで会ったら君の話を聞こう!」
〝ウン、ヤクソクダヨ!ジャアネ!〟
そう言ってジャポスカはルクセブルたちの洞窟から軽やかに飛び立った。きっと母が元気になったので安心したのだろう。
そして母であるボスも不安材料が無くなったせいか、力強く飛び立った。
その後を追うようにデマルタたちも飛び立って行った。
洞窟内では大歓声が沸き起こっていた。
「任務、無事完了ですね!」
「ああ、よくやった!」
ルクセブルは父グラナスに褒められた。
「さて、それではナダルテ王国の王城へと帰還しましょう!」
スアンがグラナスに申し出た。
「そうだな。早く戻るとするか。」
皆が戻る為の準備をしていた。
そんな時、ルクセブルはグラナスに声をかけた。
「父上、お話があります。」
「なんだい?改まって。」
「ナダルテ王国王城への帰還ですが、僕だけ後から行ってもよろしいでしょうか。」
「どうしたんだ?お前が今回魔物との間を取り持ったのだから行かずにはいられないだろう?」
「はい、分かっております。しかし僕はどうしても行きたい所があるんです。」
「……………?」
「僕が大怪我を負った時に大変お世話になった方にお礼を言いに行きたいのです。」
「そうか、わかった。行ってきなさい。後のことは私が何とかしよう。そのまま帰国してもよいぞ?」
「ありがとうございます。」
ルクセブルはそう言うとすぐに洞窟を出て行った。
向かった先は
───────そう
ラナベルの元へだ。
〝ジャポスカがラナベルに会ったと言っていた。彼女は無事なのか。〟
ルクセブルの気持ちはとても焦っていた。
ジャポスカは約束を守ったし悪い奴ではないからきっと大丈夫だろう、だが、きちんと顔を見て話をして来なければならい、そう思ったからだ。
◆ ◆ ◆
さて、久しぶりにポルモア王国では未だにルクセブルが元気で部隊に戻ったという知らせが届いていなかった。
ラモニア夫人は
「グラナス、どうしてルクセブルの事を何も知らせてこないの?あなたたちの様子が全く届かないのはどうしてなの?」
そう、3ヶ月たっても手紙1つ届かないのだ。つまり最後の知らせがルクセブル遭難でこのまま見つからなければ破談にしようという内容だった。
息子の安否がわからないまま、不安な日々を過ごしていた。
聖剣がついているからきっと大丈夫なはず。なのに消息不明とは…。
そんな中、婚約者のアレクサンドラには彼女を欲する近隣国の王太子まで現れてしまい、あとひと月もしたら自動的に婚約破棄になる。そうしたら自然とアレクサンドラは近隣国の王太子との婚約を結ぶ事になるだろう。
ルクセブルが戻った時には相当ショックを受けるだろうし、自分たちもアレクサンドラを気に入ってる分、ショックは大きいのだ。
しかし権力には逆らえない。
「ルクセブルよ、無事でいて。そして早く帰っておいで。あなたが無事だという確証があれば全部解決出来るのよ。どうか…!」
ラモニアは必死で祈っていた。
そしてアレクサンドラも毎日
「ルク様!お願い!早く帰ってきて!」
そう願いながら国王命令でもあるために近隣国の王太子、ビリーのおもてなし相手として毎日憂鬱なデートをさせられていた。
ビリーもアレクサンドラの気持ちが未だにルクセブルにあると知りながら、どうしても機転の利くアレクサンドラを次期王妃として欲していたのだった。
〝彼女が僕を好きでなくても構わない。僕が好きだからね。いつかはきっと好きにさせてみせるさ。〟
そう自信ありげに呟く。
各貴族家が開く舞踏会にはアレクサンドラをエスコートして、その為にも衣装を揃いにしたりして外堀から埋めていった。
2人が会場に現れた瞬間、その姿を見た者は誰もがアレクサンドラの婚約は破棄となり王太子の婚約者として扱われているのだと思うだろう。
アレクサンドラもその事には気付いていたが、身分が違い過ぎてどうにも出来なかったのだ。しかも国王からの命令でもあるのだ。
もし断ればたちまちフレシアテ家は断絶となる可能性がある。更に国家間での問題にも発展し兼ねないのだ。家門のためにも国のためにもアレクサンドラは我慢するしか無かったのだ。
〝悔しいですわ…、私はまだルク様の婚約者なのに…!!〟
アレクサンドラたちがルクセブルの状況を知らないでいるのと同じで、ルクセブルもポルモア王国でこのような事になっているとは誰もが知らなかったのだった。
ご覧下さりありがとうございます。
とうとう任務完了したルクセブルたち。これでやっと帰国の目処がつく…。
そんな頃アレクサンドラは相変わらず隣国王太子に振り回されていた。
次回もお楽しみに!
初めてのライトノベルですが完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




