第50話:約束を守りに…動かされたボスの心!
デマルタたちは攻撃して来ない人間たちに対して、鋭い爪をむき出し、威嚇の咆哮を上げながらも、デマルタたちは聖剣のバリアの前で動きを止めた。これまで出会った人間たちは、必ずと言っていいほど反撃してきたのにこの異様な静けさに、彼らは本能的な警戒心を抱いて戸惑っていた。
そしてとうとう諦めて自分たちの巣穴へと戻って行った。
「やったぞ!デマルタを回避したぞ!」
団員たちは歓声を上げた
「まだ油断は禁物です。またきっとやってくるでしょう。」
ルクセブルは皆に言った。
「だが、団長とルクセブル様の聖剣の力があれば躱せるじゃないですか!?」
「躱すだけだよ、何も解決には繋がらない。だが、ジャポスカはきっとやり遂げてくれると僕は信じてるよ。だから向こうが僕らを信じてくれるまでひたすら耐えることだ!」
団員たちは黙ってうなずいた。反論するにも皆を納得させるだけの意見すらないのだ。
「とにかく、次来た時も同じようにいくかどうかはわからない。気を抜かないように!そしてヤツらがくるまではしっかり身体を休めておいてくれ。」
こうして次があるものとして捜索隊は皆、休めるようにした。
その頃巣穴に戻って行ったデマルタたちはジャポスカにこの時のことを報告していた。
〝ナルホド、ニンゲンタチハハンゲキシテコナカッタンダナ。ワカッタ。イチドデハシンジラレナイカラ、モウイチドイッテクレ。ソウダ!カズヲフヤシテクレ。〟
〝ハイ、ジャポスカサマ。〟
そうしてデマルタたちは再びルクセブルたちの所に向かった。今度は部下のブラクトの大群を引き連れて…。
〝サアテ、ニンゲンドモヨ、コレデモハンゲキシナイデ イラレルカナ?コチラノカズニ キョウフヲイダイテ ハンゲキスルノモ ジカンノモンダイダロウ。ソウナッタラ ミンナデイッセイニ クラッテヤロウデハナイカ。〟
ジャポスカはそう呟いた。そしてふぃっとその場から姿を消した。
───────そう
ジャポスカが向かった先はラナベルのいるシラユリの園だ。
ジャポスカの母である魔物のボスはジャポスカを産んでから身体が思うように動かせないでいたのだった。
ラナベルの咲かせたシラユリには魔物たちにとっては癒しの効果があるようだ。そのため、ジャポスカは毎日母のためにシラユリを貰いに行く。
〝ナガネンマッタノダ。コノユリガサクノヲ…。ナカナカ サカナイカラ ワタシニモ サガシダセナカッタ。イマハ ママンガイルカラ ココモマモラレテルケド モシママンガシンジャウト ホカノヤツラニ ボスシカクガイコウスルカラ、ココヲコワサレルカモシレナイ。ソンナノハイヤダ。〟
そう、ボスが死ぬと他の魔物がボスになるため、ボスの子供であるジャポスカは新ボスに排除される可能性もあるのだ。
魔物にとって額に魔石を埋めるということは永久にその状態を保てるという利点がある。だからルクセブルからの申し出にはボスにとっても悪くない話なのだ。ただ、人間と強制的に協力し合う事が義務付けられてしまうという、少し自由を奪われる事が欠点だ。
ジャポスカは人間たちに賭けてみたいと思っていた。
「にゃー」
どうやらラナベルを発見したようだ。ラナベルも鳴き声に気付き
「あら、猫ちゃん。また来たのね。毎日ご苦労さま。はい、今日の分ね。あなたの大切な存在が良くなるように祈ってるわね。」
そう言って微笑みながらシラユリを渡す。
〝ココロヤサシイラナベル。ワタシモアナタガシアワセニナレルヨウニネガッテルヨ。〟
「────えっ?」
ラナベルは微かに聞こえた声に驚き思わず声をあげた。
「にゃー」
ジャポスカは照れてしまって猫の鳴き声を出してから、ふぃっと向きを変えて去って行った。
その姿を見えなくなるまでラナベルは見送った。
そう、ラナベルとジャポスカの出会いはラナベルがユリの花を咲かせたあの日だった。
ずっと母の傷を癒すためのユリを探していたジャポスカは目の前一面に広がるユリをワシャワシャと散らかし荒らしていたのだった。
長年待っていた花が目の前に広がっていて興奮を抑えきれなかったのだろう。
ラナベルはそんな猫を見て「だめよ、猫ちゃん。お花は優しく扱わなきゃ!」そう言ってジャポスカを抱き上げて優しく撫でたのだ。
母親以外に撫でられた事がなかったジャポスカ。魔物仲間にでさえ、母親が病がちなので酷い言葉を浴びせる奴もいたのだ。現ボスの子としてソイツは排除したが、他の奴らだってどう思ってるかわかったもんじゃないと常に思って生きてきたから、ラナベルのその行動には驚かされたのだった。
それ以来、そっと訪れてはラナベルを見守りつつ、花をもらって帰っていたのだった。
自分の巣穴に戻ったジャポスカは母にユリを渡してからデマルタの襲撃に対して人間は防御だけで凌いだ事を話した。そして、一度では信じられないのでもう一度襲撃するように指示したことも話した。
〝ソウ。ジャポスカ、アナタハカシコイコ。コレデモ ニンゲンガハンゲキシナケレバ、アナタガウケタテイアンヲ ウケマショウ。イマノワタシニトッテハ ソノホウガメリットガアルワ。〟
〝ママン!〟
そんな中、デマルタたちはルクセブルたちの元に辿り着き、再び襲撃を開始した。
「聖剣よ!ここら一帯にバリアを!」
ルクセブルと父グラナスの二人が聖剣を使って皆を守るためのバリアに徹した。
その先にはデマルタの大群に加えブラクトまで大群でやってきたのだ。到底叶う相手ではない。バリアを破られたら一巻の終わりだ。団員たちは皆恐怖で脂汗が出ていた。
後ろで控えている団員たちがそうなのだから先頭でバリアを張っている2人は相当張り詰めているだろう。誰もがそう思っていた。
「え?笑ってる?」
団員たちはびっくりした。
「団長もルクセブル様も、2人とも笑ってる?」
そう、2人は皆が恐怖に駆られるのを案じて敢えて笑っているのだった。怖くない訳では無い。が、2人には聖剣がついているのだ。〝きっと、なんとかなる!〟それがこの親子の合言葉になっていた。
「ハッ!ルクセブルよ!お前もやるようになったな。」
「フッ!父上のお陰ですよ!前に対決した時に気付かせて下さったから、僕はあの時から自身の心を訓練してきました、少しは効果あったようですね!」
「ハハハッ!頼もしいのぉ!」
「しかし…父上、コレはかなり体力が消費されますね。ジャポスカはいつまで僕らを試すのでしょうね。」
「人間でも同じたろう。相手の信頼を得ようとしたら時間がかかるのは。ヤツらは時間よりもこういう形を取ったというだけさ。今回乗り越えればきっと何か見えて来るだろう。」
そうしているうちにデマルタたちの後ろから何やら大きな影がやってきた。
そしてデマルタたちが通りを開けていく。
「…………ジャポスカ?」
現れたのはジャポスカとその母、ボスだった。
娘の必死な訴えと、目の前の人間たちの静かな防御を見るうちに、ボスは長年の憎しみが揺らぎ始めているのを感じていた。これまで人間は、常に自分たちを脅かす存在だった。だが、この若者は違うのかもしれない…。そうして提案をのむことをジャポスカに話したのだった。
〝ルクセブルヨ、ヤクソク、マモリニキタゾ。ママンツレテキタ。〟
「ああ、ありがとう!ジャポスカ!」
〝ソコハセンダイノスミカ、ハイルノハイヤダガシカタアルマイ。〟
「すまない、ボス。僕らの事を信頼してくれてありがとう。」
〝ワレハ、サキホドヨリソナタラノコウドウヲミテイタ。ソナタノイウコトヲシンジテミタイトオモッタノダ。〟
「ありがとう!ボス!」
ボスに向かって深くお辞儀をして、団員たちに声をかけた。
「皆!ボスにこの中に入ってもらうから、もっと奥に詰めてくれ!今から魔石投入をここで行う!」
ザワザワとする中でルクセブルは指揮を取った。
「スアン殿。魔石投入を行いましょう。」
「ルクセブル殿。こちらの石をボスの額に近付けて〝我ここに誓約する〟と唱えて下さい。そうしたら自然と額に吸い込まれます。痛みや苦痛は双方に生じません。魔石投入を行う事でボスには永遠の命と威力、権力が保たれます。」
「わかりました。」
「ボス、ジャポスカ。これからこの魔石をボスの額に投入します。僕が誓約の言葉を述べると額に魔石が入ります。その時に痛みは生じません。そして、ボスには永遠の命、威力、権力が保たれるようになります。良いですか?」
〝アア、ニンゲンノユウシャドノヨ。ワカッタ。ソナタニマカセル。〟
ルクセブルはコクンとうなずいた。
ボスはルクセブルが額に近付きやすいように頭を下げた。
ルクセブルは勇気を持ってボスに近付き、魔石を額近くにあてて
「我、ここに誓約する」と述べた。
その瞬間、辺り一面が眩い光に包まれた!
その瞬間、驚きはしたものの、その光はその場にいる者全てに優しく降り注ぎ、安堵の表情へと変わっていった…。
ご覧下さりありがとうございます。
今回はルクセブルと父が団員たちを安心させる為にもいい態度で挑みましたね。
ジャポスカは勿論のこと、ボスの心まで動かす事が出来ました。
次回もお楽しみに!
初めてのライトノベルですが完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




