第49話:対戦か!防御で耐えるか!?迫られる判断!!
ヒュォォォ…………ッ
ごうごうと音を立て、海面から吹き上げる上昇気流が、断崖の洞窟を激しく揺さぶっていた。
ここは海の絶壁にある崖の中の魔物のボスの巣穴。
ヒューッ、バサバサバサ…!
巣穴に降り立つ小さな黒い影。巣穴の奥にいるひと際大きな物体がピクリと動いた。
〝ママン、タダイマ!イツモノハナ、モチカエッタヨ。サア、ツカッテ。〟
声の主であるジャポスカに安心したその黒い物体は母であるボスだ。
〝ジャポスカ、オカエリ。ダレニモアワナカッタカイ?〟と優しく問いかけた。
魔物のボスであってもジャポスカの前では優しい母親なのだ。
〝ウン、ダイジョウブ、ワタシブジネ。〟
怪我をしている母を安心させるためにジャポスカは明るく言った。
〝サア、コッチヘオイデ。〟
〝ウン、ダイスキ!ママン!〟
ぴょーんと母に向かって飛びついた。
ジャポスカは人間に捕まった恐怖を母に抱きしめられて癒された。
きっとその話をすると母は心配するだろう。ジャポスカは怖かったが、その時の事を思い出していた。熱く語るルクセブル。そして危険を犯してまで自分を逃がした人間。
──────そう
ジャポスカはユリの花を通して大好きなラナベルの思い人がルクセブルであることにも勘づいていたのだ。ラナベルが思いを寄せる程の人物なのだから、そんなに悪い人ではないはずだ。それに〝お互いに傷付け合わない方法を提案〟する彼の瞳は真剣で言葉や仕草から、それに1番は自分を殺す事だって出来たらはずなのに交渉を持ちかけて周りが反対しても逃がした事だった。それらの出来事から〝アノオトコハ シンジラレルカモ…〟と思ったのだ。
〝ネェ、ママン。〟
ジャポスカの声に母は顔を寄せた。
〝モシ、ニンゲンガ、ワタシタチヲ コウゲキシナカッタラ 、 ワタシタチハニンゲンヲ コウゲキシナイノ?〟
〝ドウシタノ?キュウニ〟
〝ワタシ、ホントハキョウ、ニンゲンニツカマッタノ…。〟
〝ナンデスッテ?!〟クワッ!!!!!!
周りに凄い殺気が放たれた瞬間、岩穴がグラグラと崩れ落ちそうになった。
ボスは瞬時に過去に先代が人間との戦いによって殺された事を思い出した。そう、先代、その前のボスも、ずっと歴代ボスは人間の手によって殺されてきたのだ。
別に先代を慕っていたわけではない。ただ人間に対しての不信が強いのだ。
強い殺気を顕にした母に対して慌てるジャポスカ。
〝マッテ!ダケドネ、ダケドワタシヲ ニガシテクレタヒトガ、コンナハナシヲシテキタノ。〟
〝ジャポスカ!ニンゲンヲ シンジテハダメヨ!!〟
〝ウン、ダカラ タメシテヤロウトオモウ。〟
〝ソンナヤツノハナシナンテ、キカナクテイイ!イマスグイッテ ニンゲンドモヲコロシテヤル!〟
〝マッテ!マッテヨ、ママン!ソノヒトハ、ソノオハナヲクレルヒトノ タイセツナヒトナノ。ダカラキット ソノヒトハ シンジテモイイトオモウ!〟
〝アノオハナノ?〟
〝ソウダヨ、アノオハナノヒトノ タイセツナヒトナノ。〟
母ボスはジャポスカの顔をジッと見て
〝ワカッタワ、ジャポスカ。トリアエズ ハナシヲキキマショウ。〟
〝アリガトウ、ママン!ダイスキ!!〟
そうしてジャポスカはボスである母にルクセブルからの話をした。
〝ナンデスッテ?ワタシノ ヒタイニマセキヲイレル?ソウシタラ ワタシハドウナルノ?〟
〝ママンハ ナニモカワラナイ。イマノケガモナオッテ ナガイキスルラシイ。ソレニブカタチガママンニ、ゼッタイフクジュウデ、ママンガメイレイスルト ニンゲントノアラソイガ オキナクナルラシイ。〟
〝ソウ….。ダッタラ、アナタノ オモウヨウニシテアゲルワ。ワタシモ ムエキナアラソイハ シタクナイワネ。ミンナノ イノチガタイセツヨ。〟
〝ヤッタア!サスガママン!ソンジャ、アイツラヲ オドカシテヤルワ!〟
喜ぶ娘を見て母は
ゴメンネ、ジャポスカ。ワタシハソコマデニンゲンヲシンジラレナイノ。サイシュウテキニ ダメダトハンダンシタトキハ、ミンナヲマモルタメニ、ワタシハヤルワヨ。
そう心に誓っていた。
そしてジャポスカはひょいっと洞窟から出ていった。
◆ ◆ ◆
こちらはポルモア王国──────
王室のとある貸切庭園にて
「ここはとても素晴らしい庭園だね、目の前には聡明で美しいあなたがいる、最高だね!」
そう言うのはプラトラ王国の王太子ビリーだった。
もちろん、彼の目の前にいる女性はアレクサンドラだ。
「王太子殿下、私では満足して頂き兼ねますわ。ぜひ他のご令嬢をお誘い下さいませ。」
「ハハハ!今日も相変わらずだなぁ、アレクサンドラ嬢。あなたはもう少し自分を評価してあげるべきだ!」
「いいえ、結構ですわ。これが私ですもの。」
「ああ、そういう、ところも僕にはとっても魅力的過ぎるのだけどね!」
今日もずっとアレクサンドラを口説き続けていた。いくらアレクサンドラがつれない返事をしてもお構い無し。一国の次期国王でもあるのだ、余程自信があるのだろう。
そしてアレクサンドラも国交を考えると無下に出来ずに困っていた。
〝ルク様の消息が未だにわからないのに、こんな …、他の男性と共に時間を過ごすだなんて…!!〟
とても悔しい思いを抱いていた。
◆ ◆ ◆
アルクレゼ騎士団とナダルテ王国王室騎士団はルクセブルとグラナスから対魔物についての話をした。
何故、ルクセブルが魔物の子供と話を出来たのかはわからずだが、魔物たちと無用な戦いを避けるチャンスかもしれないのだ。皆、真剣だった。
「ジャポスカが言っていた。僕らを試すために威嚇すると!だから絶対に手を出すな!向こうが攻撃してくるまで我慢だ!」
ルクセブルが声を張り上げて言った。
しかし魔物を目の前にして恐怖に陥らない人などいないのだ。当然反対の意見も出てくる。
「だが、ヤツらを前にして何もせずにいられない!」
その場に緊張が走った。
一団員が団長の息子であり、爵位のある家族相手に反論を述べたのだから…。
しかしルクセブルはそれに対して怒るわけでもなく静かに答えた。
「では、僕が聖剣で保護バリアを張りましょう。」
それでも場は静まったままだ。まだ正式に騎士になって1年にも満たないルクセブル1人では不安なのだろう。
しかし、その不安はすぐさま解決された。
「うむ、では私も保護バリアを張るのを手伝おう。」
それは団長であるグラナスからの提案だった。
「団長親子の聖剣での保護バリアか、なら安心だな。」
団員の1人が言った。
「確かにこの場所がバレていますからね、すぐにでもやってくるに違いない!」
スアンが発言した時、変な音が遠くから段々近付いて聞こえてきた。
ブォーンブォーン、ブォーン、ブォーン………
「な、なんだ?この音は?」
団員たちが騒ぎ出した。
「ヤバい!デマルタたちの大群だ!」
誰かのその声と共にルクセブルとグラナスがサッと皆の前に飛び出した!
無数の黒い影が、空を覆い尽くすようにこちらに向かってくる!それは、鋭い爪と牙を持つデマルタの大群だった!
ルクセブルとグラナスが
「聖剣よ!付近一帯にバリアを!」
と掛け声をした!
パアアアア…………
どんどん強い光が広がって行った。
ご覧下さりありがとうございます。
人間の申し出に揺れるジャポスカと信じきれないボス母。しかしルクセブルたちは決断する。
次回もお楽しみに!
※タイマーセット漏れで投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。




