第43話:記憶が戻る瞬間!そしてあの男の正体が判明!!
■今回はまた魔物との対決シーンが冒頭にあります。人によっては少し残虐?なシーンが入ります。
私自身苦手であり、表現も下手なので出来るだけソフトにしてありますが気をつけてお進み下さい。
「ドリゃぁ─────────っ!!」
大きな気合いの入った掛け声と共に弓が飛んだ。
そしてまるでその声が号令かのように次々と矢が飛ぶ。
遭遇したデマルタは一匹だけだった。
「キエェェェエエェェェ…………ッ!」
そう奇声を挙げながら次々と炎を吐く。
弓部隊の矢は休む事無くデマルタ目掛けて飛んでいる。
スイっ、スイっと上手く回転しながら飛び回る。
そのうちひとつの矢がデマルタの脚に刺さり、デマルタはバランスを崩す。
そこにどんどん追い打ちをかけて矢を放つ!
ドンッ!ドドンッ!!
と
デマルタに命中していく。
「ヨシッ!」
皆が歓喜を挙げた途端、倒れたデマルタが炎を吐いた。
「うわっ!」
吐いた炎はすぐに周りに広がった。
そう、デマルタを取り囲んで……。
デマルタは身体中を矢で射られているから身動き取れない。つまり、そのまま自身が吐いた炎に包まれてしまったのだ。
身構えていた団員たちは最後の呆気なさに愕然とした。
もっと戦いが長引くと思っていたからだ。
だが、油断は禁物だ。
デマルタも一匹だけとは限らないからだ。
もし番なら近くにいるはずだ。
団員たちにはより一層緊張が走った。
◆ ◆ ◆
その頃ポルモア王国では
またもやアレクサンドラはアノ男性と
バッタリ!!
出くわしていた。
「ハハハ…、また会いましたね。何だか運命を感じて嬉しいです。」
「ご機嫌よう。本当によく会いますわね。びっくりですわ。」
「社交界はお好きなんですか?」
「〝きっと調べてるでしょうに…〟いいえ。あまり好きではありません。理由があって来ているだけです。」
「おや、その理由をお聞かせ願えますか?」
アレクサンドラは相手をじーっと見て
「どうしてですの?お名前も存じ上げない方にどうしてそんな事情をお話しなければなりませんの?」
男性は驚いているようだ。
〝こんなにハッキリ物事を言う女性が少ないからだわ〟
アレクサンドラは思った。
「ふふっ、」
男性は静かに笑う。
「な、何故お笑いに?!」
アレクサンドラはカッとなった。
「ああ、失礼、アレクサンドラ令嬢。いや、私はどうやらあなたに自分の名前を名乗り忘れていたようだね。」
〝え…、名乗る気がないのではなくて忘れていたの?〟
アレクサンドラはちょっと驚いた。男性の態度からはどことなく下手に見られてからかわれているような感じがして、わざと名乗らなかったのだと思っていたからだ。
男性はアレクサンドラの前にサッと跪き、
「私はビリー・カン・プラトラと申します。とてもあなたに興味を持った。どうか私の国へ私と共に来てもらえないだろうか?」
会場が一気にざわめいた。
それもそのはずだ。プラトラと名乗るその男性は近隣国のプラトラ王国の者、しかも王族だ。
「え…?」
アレクサンドラだけがおいてきぼりだった。
「アレクサンドラ令嬢、私はプラトラ王国第一王子、つまり王太子のビリーです。正体を隠していた訳ではありません。花嫁探しにこちらの国にお邪魔しておりました。王子として接するのではなく普通に接してくれる女性を探していたのです。まるであなたのような。」
その場にいた全員が困惑している。
「あ、あの王子様、私前にも言いましたよね?私には婚約者がいると。」
「ええ。私も言いましたね。その方は行方不明で春の終わりまでに戻られなければ破棄になるそうですね。」
アレクサンドラは驚いた。どうしてそこまで知りえているのかと!
「私は欲しいものは何でも手に入れる質なんです。その時まで待ちましょう。どうかそれまでは私とお過ごし下さい。そして私を見て伴侶にと判断して下さればいい。」
「そんなの…っ!」
言いかけてアレクサンドラは〝はっ〟と気付く。今日はレルロア主催の舞踏会。大勢来ている。こんな注目の的になって自分もそうだが、相手は近隣国の王太子。面子を潰す訳にもいかない。
「私は、必ずルク様は戻ってくると信じております。しかし、貴方様は近隣国の王太子様。この国にいらっしゃるあいだはおもてなしのお手伝いを致します。それで宜しいでしょうか?」
「ああ、かまわない。君が傍にいてくれるなら。明日この国の街並みを案内して欲しい。まだゆっくり観光出来ていないのでね。」
「わかりました。」
「では、明日フレシアテ家へ馬車を送るよ。」
そう言って男性、ビリーは会場をあとにした。
大急ぎでレルロアが近付いてくる。
「ごめんなさい、アレクサンドラ。あの方が何者か知らなくて…。」
「大丈夫です。レルロア様。あの方の方が1枚も上手だったのです。仕方ありませんわ。私にはルク様がいるのにどうして構ってくるのかしら…。」
「アレクサンドラ、あなたもっと自分に自信をお持ちなさい。あなたの器量なら王妃も務まるわよ。」
「レルロア様!?」
「例えばの話よ。私もまだルクセブルの安否を諦めたわけじゃないのよ?」
「ありがとうございます。まだ期日があるからルク様が無事だとわかれば良いだけですわ。」
「そうね、ダナジーの所にも、何も届いていないわ。逆にまだ諦めちゃダメってことよ!」
アレクサンドラはレルロアの顔を見てコクンとうなずいた。
「しばらくは、あの方のお相手で忙しくなりそうだわ…。」
あの不審な男性が近隣国の王太子だとは誰が想像出来ただろうか…。大変な相手に気に入られたアレクサンドラ。
婚約破棄まであと3ヶ月ちょっと…。
絶対に、生きて無事に戻ると信じて………。
◆ ◆ ◆
そんなルクセブルはまたもや夢を見ていた。
同じ夢だ。だが、違うのは段々少女の顔が鮮明になりつつあるということだ。
「はぁー、今日もあの夢だ。」
水を飲みに行った時、何か光る物が目に入った。
〝ん?何だ?光るような物なんて無かっただろうに…。〟
今夜は満月だ。かなり明るいので何かにきっと反射したのだろう…。
その方向に向かって行くと裏の倉庫だった。
丁度台所の窓と倉庫の窓が一直線に見えたのだった。
少女の夢を見始めて確信を得てから約ひと月。
「きっと月のあかりが倉庫の中の何かに当たったのだろう。」
普段は入らないのだが、この時は何故か〝入らなければならない気がした〟のだ
光が当たって光を放つような物は………と、
探していたら
「え?剣?」
ルクセブルは考えた。
ここに男気はない。かといってラナベルが使ってる様子もない。しかも装飾がこの倉庫や家、村に似つかわしくないくらいに豪華だった。
その剣の傍らには剣に合わせたかのような豪華な衣装だ。こちらも似つかわしくない。
それによく見ると裁縫の後がある。ほんのり血の跡が残っていた。
ルクセブルはふと、思った。これらの跡は僕が怪我していた場所と合う。まさか…!!
その場で衣装を着てみた。ピッタリだ!
そして傍にあった剣を手に取った瞬間、ビリビリッ!!と電気が走ったかのような衝撃があった!
──────────っ!!!!!!
そして同時に頭の中に次々と浮かんでくる!
「な、なんだ?!これは!!」
そして急に頭痛に襲われる!
「う…!ウウッ………!!」頭を抱え込みその場にうずくまってしまった!
しばらく痛みに襲われていたが、やがてスーッとその痛みが消えた途端、全てを理解した。
「アレン!そうだ!あの夢の中の少女はアレンだったんだ!こうなったら一刻も早く皆に合流しなければ!!」
ルクセブルは思い立った。
「………………。」
一瞬だけ立ち止まって、そしてそこに走り書きでメモを残してそのままその場を離れてナダル山脈に向かった。
確かに記憶をなくしていた時はラナベルの事が好きだった。それを愛だとも思ってラナベルと共に新しい人生も悪くないと思っていたくらいだ。
しかし記憶を思い出した今は故郷に残してきたアレクサンドラが大切で、ラナベルへの思いは感謝の気持ちからの錯覚であったと確信してしまったのだ。
きっとラナベルに会えば引き止められるだろう。
恩もあるし、無下に断れないだろう。だが、一刻も早くアレクサンドラに会いたい一心で迷いはすぐに打ち消された。
そう…
聖剣が主の身体を守り、忘れ去られた記憶をも呼び起こしたのだ。実際に触れなければ起こらない奇跡。だが、それすらも聖剣はやり遂げたのだ。月の光と自身の装飾を持ってルクセブルに夢を見させ、気付かせたのだ。
〝やっと思い出したか、我が主よ。〟
聖剣はそう静かに物語った。
ご覧下さりありがとうございます。
やっとルクセブルの記憶が戻りました!
このお話は60話と外伝2話になります。
ここからどんどんお話が展開していきます!
次回もお楽しみに!
初めてのライトノベルですが完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




