第41話:傾くラナベルへの気持ちに比例して毎夜見る夢
記憶を無くして身体に大怪我を負ったルクセブルを献身的に看病してきたラナベル。
そんなラナベルに安らぎを覚え、少しずつルクセブルの中で大きな存在へとなっていった。
毎日が平穏でとても幸せな気持ちに満たされていた。
ただ一つ、自分が何者なのかわからないまま…。
静かな月夜…
ルクセブルはうなされていた…。
ん…んんーっ!
〝ハッ〟と目が覚めた。
〝夢か………。〟
〝今、凄くうなされていたよな、僕は一体、どんな夢を見ていたんだ?〟
何か夢を見た感覚はあるのに内容を覚えていないのだった。
次の日も、また次の日も…繰り返し同じ状況になる。
〝歯がゆいな、同じ夢を見てるはずなのに、内容を覚えていないなんて…!〟
窓の外を眺めると上弦の月が目に入った…。
〝喉が渇いたな、水をもらってこよう。〟
ルクセブルは台所に行き、水飲んだ。
ゴクゴクゴク………
〝プハーッ〟
水を飲んだ事で少し落ち着いた。
夜中にも関わらずルクセブルの頭は冴えていた。
〝いつまでもここでラナベルの世話になっていてはいけないな。僕も働いて恩を返さないと…。ラナベルはユリを育てて生計を立ててるのかな。あれはユリの畑だよな…。〟
ルクセブルは今のままではダメだと感じていた。そしてこれからどうすべきかを考える事にした。このままラナベルに惹かれていったとしても今の自分では彼女を養う事は出来ないからだ。
そして眠りについた。今度はうなされることなく朝までぐっすり眠れたようだ。
気がつくと辺りは明るくなっていた。
「おはよう、ケイン。体調はどう?」
「ああ、ありがとうラナベル。君のお陰で今日も元気だ。」
「ふふっ、ケインったら。朝ごはん持ってきたわよ。」
「すまないね、君の住処を奪ってしまって…。その、親戚の人にはなんて話てるの?」
「もう、そんな事気にしなくていいのに。壊れた箇所があって修理するまでお世話になるって事で話がついてるの、だから安心して!さ、食べて。」
「ああ。いつも美味しい食事をありがとう。」
「ふふっ、どういたしまして。」
ラナベルはとても幸せだった。
このまま自分の家でルクセブルと共に暮らしたいが、やはり未婚なのでそうもいかず、親戚の家で寝泊まりしているのだ。
〝もしかしたら、本当にこの日々が日常になるのかもしれない。もうすぐ3ヶ月になろうとしてるのに全然記憶が戻りそうにないし、このまま記憶が戻らないかもしれないわ。〟
ニッコリ笑うラナベルを見てルクセブルの心は温かくなった。
〝僕は彼女にどんどん惹かれていくような気がする。だけど、自分が何者かわからないし、今の僕では彼女を幸せに出来ない。〟
そう思うと、ラナベルと同じだけの微笑みを返す事が出来なかった。
そんなルクセブルの様子を敏感に感じてラナベルは不安になった。
〝ケイン、何だか元気がないわ。何か悩みでもあるのかしら…。やっぱり自分の過去がわからないのは怖いのかしら…。〟
そうして焦らずにゆっくり彼に尽くそうと心に決めた。
そしてその日の夜もいつものようにルクセブルは夢を見てうなされていた。
「…………様………さま」
〝─────────ッハッ!!!!!!〟
勢いよく飛び起きるルクセブル。
見え……た。
うっすらと泣いてる少女の姿が見えたのだった。
〝だが、今のはいったい………。〟
ハッキリと顔が見えた訳では無かったが、先日からうなされていた原因がその少女であると何故か確信したのだった。
そして、その少女が失われた自身の過去に何らかの強い影響をもたらした存在であるということも同時に確信したのだった。
〝ああ…ラナベル。僕は…僕は!このまま君を愛する事は出来ない。こんなにも君に惹かれつつあるというのに…!〟
◆ ◆ ◆
ルクセブルが毎夜見る夢で翻弄されている頃、捜索隊は魔物たちに出くわしていた。
「───────っか!何だ!?ピカッタよりもすばしっこい!だ───っ!鬱陶しい!!」
「ニコル、うるさいぞっ!集中して射れ!」
「わかってるよ!親父っ!」
ルクセブルを失って戦力が落ちてる捜索隊。
春になって魔物たちも活動的になって、とうとう中級魔物のブラクトに遭遇したようだ。
ブラクトはピカッタのように空を飛ぶ。ピカッタに比べたら素早いのだ。しかし、低周波を出さないのでその分は楽だった。
弓矢部隊がメインとなってブラクトを撃ち落としてトドメを刺すしかないのだった。
ルクセブルの安否を心配しつつも、自分たちも目の前の魔物相手に必死であった。
◆ ◆ ◆
一方、ポルモア王国では大舞踏会が終わって各貴族家たちがそれぞれ主催の舞踏会を開く。
傷心のアレクサンドラを心配して各貴族家から招待状か沢山届けられた。
〝とてもそんな気分には、なれないわ。〟
今日も泣いていた。
そしてふと、〝別経由でルク様の何か情報が入るかもしれない〟と思いつき、参加することにした。
会場に到着したアレクサンドラは誰かと踊る気にならず、茶菓子コーナーに向かった。
「やあ、また会いましたね。」
突如声をかけられた。
「………!!あなたは!」
「今日はこの前よりも少しは顔色が良いようですね。」
男性はそう言ってニッコリと微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。急いでおりますので失礼します。」
男性に向かって軽く挨拶をしてその場を後にしようとした。
「おや、またお逃げになられるのですか?」
「え?」
「私を避けてらっしゃる。違いますか?」
男性はまっすぐアレクサンドラを見て言った。
〝この人誰?どうして私につきまとうの?〟そう思いながらも
「気のせいですわ。お恥ずかしい姿を見せてしまいましたから。」
ふっ、と男性は笑った。
「まあ、いいでしょう。今度あなたとじっくりとお話をしてみたいです。」
「申し訳ありません。婚約者のいる身ですので…。失礼します。」
「ふむ…。」
その男性は自身の目の前から去っていくアレクサンドラをジッと見つめていた。
このパーティーの主催者であるナハムに近付いて
「ナハム、あの男性はどちらのお方ですか?」
と尋ねた。
ナハムがアレクサンドラの指す方向に視線を向けたが、そこには誰もいなかった。
「アレン、誰もいないわよ?どんな男性だったの?」
「ヘーゼルブラウンの髪と瞳で身長はそんなに高くなくてどちらかと言うとスリムだと思うわ。」
「…………?ねえ、ミルマ、この国にそんな人いた?」
「………。うーん、そうね、私も記憶にないわ。もしかして不審者なのかしら?ナハム、警備が緩いのでは?」
「まあ大変!執事長!」
〝ナハムもミルマも知らないなんて…。いったい誰だったのかしら?まさか幽霊?嫌だわ。〟
アレクサンドラは身震いした。
もう出くわさないでほしいわ!
ご覧下さりありがとうございます。
誰でも記憶がない状態で献身的に看病してくれてらグラッと気持ちが揺らいでしまうことありますよね。そんなルクセブルはその気持ちが強くなるにつれて同じ夢を見るようになりました。
そしてアレクサンドラに付きまとう男は?!
次回もお楽しみに!
初めてのライトノベルですが、完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




