第 4話:初めてのプレゼント選びに悩むルクセブル
このお話はフィクションです。
ここは賑やかな城下町
いつもの身なりでは目立ってしまう為にマントを深く被るルクセブル。
1人で彼女に贈るためのプレゼントを探しに来たのだ。
〝やはり女性に贈るものと言えば宝石が1番なのか…?〟
ルクセブルは並ぶ店を見て周りながら考えている。
〝こういう店には中々入り辛いな…。他の男たちもこうやって手に入れてるのだろうか…?!〟
誰かに相談することも出来たがちょっと恥ずかしかったのだ。
からかわれるかもしれない。
1番に相談相手として思いついたのはニコルだか、奴が1番からかいそうだったので1人で出てきたのだ。
しかし…
ショーウィンドウから眺めているフードを深く被った男…。どう見ても怪しすぎる。
必死に店を見て回るルクセブル。ショーウィンドウの前で立ち止まっては離れ、立ち止まっては離れを繰り返していた。
どうしても中に入り辛いのだ。
そんな時、
ポン!
と、肩を叩かれた。
ビクッとするルクセブル。
「よお!ルクじゃねーか?」
〝…!!
その声は…!!〟
恐る恐る振り向くとそこには想像通りの人物が、今、1番会いたくない人物が立っていた
〝…!!
な…なんで…。〟
「なんでかってか?」
心を読まれたのかと驚くルクセブル。
「あはははは!!」
その男は大笑いした。
「俺がお前を見抜けないわけないだろ!」
(実はこっそり付いてきていた。)
そう、
その男はニコルだった。
1番からかいそうな奴がそこにいたのだ。
この瞬間、ルクセブルは何もかも諦めた。
場所を中央公園の噴水に移動した。
ここはひときわ賑やかで話をしてもかき消されるくらいだ。
それなのにそれらの声すらかき消す程に大きな声でニコルは驚き声を上げた!
「なんだあー?婚約ー?!」
今までで1番大きく目を見開いた奴がそこにいた。
「で、プレゼント選びか?」
ニコルはルクセブルを除きこんだ。
ニコルには既にルルソー子爵家のフラン嬢と婚約中だ。
〝このガサツな男にそんなロマンチックなことが出来たのだろうか…?〟
ルクセブルは彼の顔を見ながら思った。
「ニコルは彼女に何をプレゼントしたんだ?」
からかわれても仕方ないと腹を括り尋ねた。
「はあっ?プレゼントだと?」
ニコルはルクセブルの顔を見た。
そして少し沈黙してから
「んなもん、自分で考えろ!それが礼儀ってもんだ。」
ジーっとニコルを見つめるルクセブル。
「な…なんだよ。俺もちゃんと贈ったぞ?」
「やっぱり宝石だよね。」
「お、おう…!」
歯切れの悪い返答だ。
聞いた相手が悪かった…と、後悔するルクセブルだった。
それからまた1人になって街中を彷徨う。
〝プレゼント選びがこんなに難しいとは…。
帰ったら母上に笑われそうだ…。〟
肩を落として帰るルクセブルであった。
夕食の時間、母ラモニアはルクセブルに問う。
「ルク、あのあと街へ行ったのよね。どうでしたか?お目当てのものはみつかりましたか?」
フォークとナイフを置いてルクセブルは答える。
「母上、プレゼント選びとは剣術よりも難しいです。何を差し上げれば喜んでもらえるのか…。」
そう言ってしゅんとするルクセブル。
彼に反して母ラモニアはクスクスと笑う。
ルクセブルの視線が母に向く。
「どうされたのです、母上。」
その時、コホンと父グラナスが軽く咳払いをした。
キョトンとするルクセブル。
「ふふふ。そういうところもそっくりですのよ。そうですよね、あなた。」
コホンコホン!と気まずそうに咳払いをするグラナス。
ハッと気付いてルクセブルは笑う。
「あはは…。それで父上はどうなさったのですか?」
グラナスはルクセブルに向かって
「もう忘れた。私はもう席をはずすぞ。」
そう言ってそそくさと食堂から出て書斎へ向かった。
「あらまあ。そんなに恥ずかしがらずとも….。クスクス。」
ラモニアはまだ笑っていた。
「母上、父上は…」
「そうね、父上はね、私の好きな花を1輪用意して手渡してから膝まづいて騎士の誓いをなさったのよ。」
「騎士の誓い…ですか?!」
「そうよ。まだ騎士にすらなっていないのにですよ。」
目の前でそう言いながら笑ってる母上はとても幸せそうだった。
こんな仲の良い両親に育てられたルクセブルも自身の家庭は穏やかで幸せな家庭にしたいと思っていたのだ。
「母上!ありがとうございます。僕はもう少し色々悩んでみます。父上のようにいつまでも幸せな記憶のままいられるような素敵なプレゼントを考えてみます!」
ルクセブルからはもう悩む姿は消え去っていた。
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