第35話:トーナメント勝者決定!!
カーン!キーン!カーン!カーン!キーン!
剣を打ち合う音が洞窟内に広がっていた。
もうどれくらい2人で打ち合っているのだろう。見ているこっちがくたびれてきたほどだ。しかし、当の本人たちは全く息も上がっていなければ汗ひとつかいてもいない。
カーン!キーン!
ザザッ!
「団長、手を抜いてやしませんか?」
「そっちこそ、もっと本気で来てもいいんだぞ?」
〝ひぇ~~~~~~、お互いに煽ってる〟
団員たちは2人の様子を見てビビっていた。
そしていつになったら決着がつくのかと固唾を飲んでいた。
「えぃや────っ!」
「ハァ────ッ!」
カキ────ン!!!!
近付いたと思った瞬間に離れて間合いを取る!
そして連続打ち合いを始めた!
カーン!キーン!カーン!キーン!キーン!
サッ……!!
ダダダ…!ブンッ!!…………ッタッ!!
テルの打つ勢いは衰える事がなく素早く的確にグラナスの隙を付いていく!
しかしグラナスもそれを黙って許すはずがなく、瞬時に的確に防いでいくのだった。
〝気を許せない戦いだ。隙を見せたら一瞬で決着が付くだろう。が、それよりも先に体力が落ちるか…。〟
ルクセブルも真剣に2人の対決を見ていた。
カーン!キーン!………ザッ!
そしてナダルテ王国王室騎士団の騎士団長スアンも2人の対決を見て目を輝かせていた。
〝こんなに素晴らしい対決は滅多に見れない!今この瞬間に立ち会えた事に感謝だな。この2人がいる限りアルクレゼ騎士団は負ける事はないだろう。絶対に敵には回したくないな。〟
やはり冷静な男だった。
カーン、キーン、キーン、カーン……
ガッッ!!!!
ザザッ……ザッ…!!!!!!ダッ………!!
カーン、キーン…………
グラナスとテル
どれだけ時間が経ったのだろうか…。
外は雪が降っていて元々暗かったが、既に明るさは欠片も感じない程暗くなっていた。
よく見るとテルは汗ばんで少し息が上がってきていた。反対にグラナスは相変わらずの余裕だった。
「………。」
皆がそろそろだと思ったその時、
本当に一瞬の出来事で誰もが分からなかった。
カ────────ン!!
という音と共に剣が空を舞い、テルがド────ンと尻もちをついた。
────勝負は決まった。
「勝者、グラナス団長!」
ニコルがそう声を上げた。
「わ────!!」と歓声が沸き起こった!!
〝やはり、最後は体力だったか。テル殿は剣の加護もないのによくあそこまでやったものだ。恐ろしい人だ。〟
スアンはそう思った。
「はッ!今回は5時間か…、もっといけると思ったがな。」
そう、テルは勝つつもりで挑んだのではなく、自分がどれだけ持ちこたえるかを測ったのだった。もちろん、グラナスもそれを知っていて敢えて付き合ったのだ。
「テルよ、剣の加護がなければ私はお前に勝つ事が出来なかっただろう。今後も我が軍をよろしく頼む。」
「はい、団長!ワシの命尽きるまで貴方様と騎士団に尽くしましょう。」
2人の絆が更に深まったのだった。
そう、グラナスとテルもルクセブルとニコルのように幼なじみだったのだ。
「早く邸宅に戻って一緒に酒を飲み交わしたいのぅ。」
そう言って2人はその場を離れた。泉のある洞窟の奥の方へ行ったのだろう。きっと2人で懐かしい話でもするのかもしれない。
〝2人が戻ったら瞑想に行こう。〟
ルクセブルはそう思ってそれまでの間、武器作りに挑んだ。ルクセブルの作る武器は槍だった。
「ルク~~~、武器作るのか?ちぇっ、じゃあ、俺も作ってくるか。」
ニコルはルクセブルの様子を見に来たが、自分の担当の弓矢を作りに行った。
それぞれの武器を作るために材料を用意した場所を決めてあるからだ。集めた材料は貴重だし、出来上がった物も貴重だから必要以上に持ち出したり動かしたりしないように、所定の場所での作業になる。
ルクセブルと離れて作業をするのが寂しいのか、ニコルの背中はそう物語っていた。
そのニコルの様子を見て〝ふっ〟とルクセブルは笑みが零れた。
〝この緊張感漂う最中に安らげるなんてな。〟
そして槍を作りながらルクセブルはポルモア王国に残してきた婚約者のアレクサンドラを思い出していた。
〝アレンと離れて4ヶ月か…。早いな。あの後アレンはどうしてるんだろう?社交界では上手く立ち回れているのだろうか?彼女の力量なら心配はいらないが、彼女は「立場」を考えて引いてしまう所があるから心配だな。〟
そう、アレクサンドラは「大勢」が苦手だ。
貴族とあまり関わらずに自由に過ごしてきた田舎育ちだからだ。そのせいか、本人は至って朗らかな性格だ。本来なら社交界などには馴染めないだろう。
しかし、そこは彼女の家がしっかりと彼女にマナーを身につけさせることで適応力は身につけているから本人がその気になれば何も問題はないだろう。
それに、彼女には強い味方がついている。
レルロアと王太子だ。自分が出立する前に2人にアレクサンドラの事を頼んできたのだ。
更にステファニ公爵夫人もついている。
何も心配はいらないだろう。
ルクセブルは〝ふっ〟と笑って安心した。
だが、会いたくて堪らないのは変わらなかった。
〝ああ、早くアレンを抱きしめたい。そして口付けしたい。離れていた分沢山話をしてずっと一緒にいたい!〟
槍を作っている手に力がこもった。
流石に折れるまではいかないが、せっかくここまで作ったのに壊したら作り直しだ。
〝ハッ〟と我に返って、心を無にして淡々と作業に取り掛かった。
〝そうか…!無心とは集中する事でも得られるのだな。こういう作業もある意味訓練か。〟
ルクセブルは自身が作った槍先をじっと見ながら思った。そしてまた作業をひたすら続けた。
〝ザクッ、ザクッ、ガリガリガリ…ザクッ……〟
ひたすら削って作っていく。
そうこうしているうちに奥に行っていた父グラナスたちが戻ってきた。
「ルクよ、今日も泉に行くんだろ?すまんな、待たせた。」
「いえ、テル。ありがとうございます!」
「ん?なんだ?ルクセブル、何かあるのか?」
「父上、少々1人になる時間を作っております。」
「ん、ああ…、そうだな。早く会いたいだろうな。」
「えっ?!」
「は?」
親子2人で顔を見あっていた。噛み合わない会話に少し沈黙が続く。
「あ、ああ、そんなところです。ハハ…。」
1人でこっそり心の訓練をしているなんて恥ずかしくて言えなかったのだ。グラナスの反応からは以前ルクセブルがアレクサンドラと会えないことを嘆いていたのを知っている分、1人になりたいのだと勝手に勘違いしていたのだった。
「それでは、行ってきます。」
そう言ってルクセブルは団長兼父であるグラナスと副団長兼師匠であるテルに挨拶をしてその場を後にした。
洞窟の奥にある泉の地は夜にはあまり人がこない。瞑想をするにはもってこいの場所だ。
〝剣の腕をあげるのも1つだ。だが、最終的には判断力が必要となる。咄嗟の判断が出来るように日頃から色んな事に神経を研ぎ澄ましておかなきゃならないな。その為にも瞑想はいい方法だと思う。眠るのも早く寝れてる気がするよ。〟
ふ─────っ
息を整えて瞑想に入る
雑念が湧いてきては取り払い、目指すのは〝無〟だ。
やり始めてまだ間も無いが、確かに続ければ良さげな手応えを感じていた。
ご覧下さりありがとうございます。
今回、団長と副団長の対決を描いてみました。こういう対決シーンや戦闘シーンは表現が難しいですね。
このお話は完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




