第34話:父対師匠、憧れの決勝戦開始!
洞窟の奥の泉のある場所はかなり奥まっていて、ランプ1つだと暗くてほとんど見えない。が、流石先代のボス魔物が選んだ場所だ。洞窟の岩面には光を放つ鉱石でもあるのだろうか?ライトに反応してほんのり明るくその場を反射させる。
「綺麗だな、洞窟の奥にこんな場所が…。」
ルクセブルはポツリと呟いた。奥に泉があるから水の確保は大丈夫だとは聞いていたがその場がこんなに綺麗だとは思っていなかったのだ。
「ああ。スアン殿が教えてくれたさ。ボス魔物は水が大切なことも把握しているから必ず洞窟の中に泉があるはずだと教えてくれた。」
「スアン殿が…。かなり魔物に詳しいと見ましたが。」
「だろうな、ナダルテ王国は定期的に魔物の出没で、被害を受けてきたから嫌でも詳しくなったんだろう…。」
「なるほど。騎士の仕事は戦いばかりではないのですね。相手の習性を知ったりする事も大切、そうですね?」
「そうだ。その通りだよ、ルクセブル。ワシは良い教え子を持ったものだ。」
ルクセブルははにかみながら頷いた。
「それで、さっきの父上との対戦での事なんですが…。」
「おいおい、いきなり本題か?」
「はい…。」
テルはタバコに火をつけてひと呼吸吸ってからルクセブルに向かって言った。
「分からない事は何でも聞くがいい。だが、あの件に関してはワシでは答えを出してやれん。己の中で出すしかないのだ。」
そう言って煙草の煙を口から〝フーッ〟と吐いた。
「焦らんでええ。お前なら必ず克服するさ。ワシがアドバイスしたところで、最終的にはお前自身の問題だからな。だが、お前はもう気付かなきゃならん事に気付いてるんだ。大丈夫だ。」
テルはそう言ってポンポンとルクセブルの肩を軽く叩いた。
「気付く事が始まり…ですか?」
「そうだ。気付けば、次にどうしたらいいか考えるだろ?ずっとずっと、常に考えるからある時ふとその答えに繋がるんだ。」
「…………。」
ルクセブルの眼差しは真剣そのものだ。
剣の技術については小さな頃からテルに教わった。それに関しての善し悪しもだ。何せあのニコルと共に習ってきたのだ。悪さをした事も巻き込まれて共に叱られた事もあるだろう。
そんな師であるテルだが、物事の考え方まで教わるとは思っていなかったのだ。
しかも、あのド派手な身なりなのだから、こういう話は意外過ぎて誰もがマジマジと見るだろう。
「ルクセブルよ、そんなにマジマジと見ないでくれ。やりにくくて敵わん。」
そう
テルは照れ屋なのだ。
「ハハッ、ハハハ……ッ!」
ルクセブルは思わず笑ってしまった。
そんなルクセブルを見てテルは〝ふっ〟と笑った。
「師匠、ありがとうございます!お陰で吹っ切れました!自分で考えて答えを導きます!」
そこにはにこやかな青年がいた。
「おお。明日、お前の親父をコテンパンにしてやるからそう伝えてくれ!」
「父上は最強ですよ?」
「お前、ワシを誰だと思ってるんだ?」
「ハハハ!楽しみにしてます!」
「おー!」
テルは手をフリフリしていた。
その後ろ姿を見てルクセブルは勇ましく破天荒なテルに強い憧れを抱いた。自身の父とはまた違う感情だ。
前聖剣の主である父がテルに負けるはずがないのだ。それをわかっていて挑む、そんな強いふたりの対決は誰もが憧れるステージである。
「よし!ここで僕の心が揺らがないように瞑想してみるか。〝無〟になる事も大切だよな。何か見えてくればいいのだが…。」
ルクセブルはそう呟いた。
「いかん、いかん!ダメだ。焦るなと言われたばかりだ。うん、やっぱり瞑想が必要だな。」
そうしてルクセブルはその場で瞑想する事にした。
目を閉じてひたすら〝無〟になろうとする。
──────────が、
「〝無〟になるのって難しい~~~っ!つい考える事がなくなると浮かんでしまう。ああ…アレン!僕の心が枯渇しそうだ!」
そう。アレクサンドラと離れて4ヶ月目で、間もなく5ヶ月目に突入しようとしていた。
あとふた月は冬なのだ。魔物たちが再び活動的になる春以降に本格的に捜索再開となるのだから少なく見積もってもまだ3ヶ月は帰れない。
「つ~~~~~~っ!」
ルクセブルはキツく唇を噛み締めた!気合いを入れるためだ。
「絶対に克服して春になったら最短でケリをつけてアレンの元に帰るんだ!ここでウジウジしてられない!」
そうして再び瞑想に入った。
失敗してはやり直しを繰り返す。
ただ…ひたすら〝無〟になれるまで。
集中するために長くは続かず、とりあえずその日は1時間を目安に粘ってみた。
そして翌日、朝から同じ泉の場所へ出向き、瞑想を1時間行うことにした。
そして昼前になるとそれぞれが1箇所に集まってきた。
そう。トーナメントの決勝戦が間もなくはじまるからだ。
「こんな素晴らしい決勝戦を初めて見れるんだ。とても光栄な話だな。」
皆、口々にそう言って少しでもいい場所で見ようとしていた。
「あー、皆、そんなに前にいると怪我すっぞ?」
テルが試合に出るため、息子でありリーダのニコルがこの場を仕切る事になった。
「ほら、もっと後ろへ寄って!絶ってぇこの辺まで危ねぇって!」
アルクレゼ騎士団のトップふたりの試合だ。壮絶なものになるだろう。それを考慮しての場所を設置しているのだ。
「ああ、ニコル、ご苦労!その辺までで大丈夫だろう。皆も出来るだけ近くで見たいだろうからな。」
「団長!」
「よいよい、皆しかと見みるがよい!な?テルよ。」
「ええ、団長!久しぶりで昨夜は寝れませんでしたよ。ワシが勝者となりましょう。」
「ハハハッ!流石はテルだ!やり甲斐がある!さあ、ニコル!」
グラナスがそう言うとニコルはコクンと頷いて大きく息を吸った。
「それでは、只今よりグラナス団長とテル副団長の決勝トーナメントを行います!両者準備はよろしいですか?」
ニコルは2人の顔をそれぞれ見た。
2人とも頷いた。
「それでは、始めっ!」
両者互いに相手を見つめ合い、ジリジリと間合いを取ろうとしている。
〝父上から間合いをなんて取れるもんじゃない。しかし、テルならどうだらうか?父上にもし聖剣がなかったら確実にテルの方に軍杯が上がるだろう。試合中は聖剣は身に付けずにニコルが預かっている。多少距離があってもアルクレゼの血で繋がっているんだ、加護は消えない。この試合、勝敗は最初から決まっているようなものだが、テルがどこまで父上に切り込めるかが見ものだな。〟
ルクセブルは冷静に2人の様子を見ていた。
長く見つめ合い、間合いを取ろうとする2人。
固唾を飲んで見続ける団員たち。
そして、ナダルテ王国の王室騎士団たち。
「じゃあ、遠慮なく行かせてもらいますぜ?団長!」
そう言った瞬間、テルが切り込んだ!
────────────────!!!!
──────速いっ!!!!!!───
あっという間にあの距離を埋めてグラナスの懐に飛び込んだテル!だが、瞬時にグラナスは避けていた!
まるでテル対ニコルの対戦を倍速で見ているかのようだ!!
「団長、ワシの真似ですかぃ?」
「ハハハッ!さあな?」
テルがスルリと向きを変え、ガッ!!とグラナスに剣を向ける。
が、今度は剣を受け止めた!
そして上空に向かって半円を描き
カ────────ン!!
と、剣を払い除けた。
シュルシュルッ………!!
剣が舞いながら飛んで行くが、その先にテルは回って自身の剣をキャッチした。
「おお~~~~~~っ!」
全員から感嘆の声が漏れる。
テルはニヤリと笑い、まだ余裕を見せていた。もちろん、グラナスも余裕だ。
〝この2人、バケモノだ!〟と皆が思ったであろう。
「さあて、まだまだこれからですよ、団長?」
「ああ、どんどん来い!テルよ!」
まるで今までの動作が準備運動かのように2人は生き生きとしてきた。
ご覧下さりありがとうございます。
師匠は良き相談相手でもあります。長年ルクセブルを見てきたからか、彼の心境を察する事にも長けてます。
このお話は完結済みですので今後もご覧下さると嬉しいです。




